熟成するのは果実と夢と

2006/04/01

近所に住むチェリーくんからメール。

「ダイエーでビール50円で売ってますよ!」

たまたま原付で帰宅途中だったので、慌てて駅前のダイエーに駆けつけました。ダイエーの入口には「一の市」ののぼり。そうか、今日は1日か!それで安いのね!

「ダイエー到着!」とメールで報告し、いちもくさんに酒コーナーへ。ビール50円、1ケースくらいまとめて買っちゃおうかな。でもお一人様6本とか制限があるかもね!むっふー。

が、到着した酒コーナーには、それらしきものは見当たらない。
さんざん探してもないし、店内に貼ってあるチラシにも50円のビールは載ってないし。
タイムサービスとかだったのかなあ。あー残念。家に帰って「売ってなかったよ!」とメールを返しました。

そのメールにしばらく返信がなかったので、なんだかちょっと気になりました。騙されたかな?
ん・・・だま、された・・・?
そうか、今日は1日か!4月の1日か!エイプリルフールか!!

「爆笑」というメールがきました。やられました。
四月ばか〜。


***


50円のビールのかわりに、といってはなんですが、春らしい果実酒を浸けることにしました。果実酒といえば梅酒。去年梅酒を浸けて、その魅力にすっかりはまってしまいました。
そして梅酒のほかにも、店をやるならぜひ自家製果実酒を出してみたいと思っていたのです。旬の果物を使って季節感も出せるし、日替わりメニュー的なワクワク感もある。そしてなによりもうまい!

今の季節ならもちろん、スーパーの店頭に山積みになっているイチゴをチョイス。もちろんホワイトリカーと氷砂糖。ネットで調べたところイチゴの酸味不足を補うためにレモンも入れるそうです。

そして仕込み完了、イチゴ酒!



最初はもちろん完全にイチゴは浮いて、氷砂糖とレモンは沈んで、なんのハーモニーも奏でてはいないわけですが、それでも春らしくてとても美しく頼もしい景色です。浸けたそばから、写真には写らないくらいちょっとですが、イチゴの周りの液がほんのりと赤く色づいています。
そうしている間にも、氷砂糖が少しずつ溶けてシロップ状に。比重の関係で、まだ溶けていない氷砂糖の上にシロップの層ができ、最初は氷砂糖の上にあったレモンが宙に浮いてきました。そしてイチゴの赤が時間を追うごとに濃くなり、徐々に下に降りてきます。それは本当に幻想的な風景で、こうしてすべてが完全に混ざり合っていくのを想像しながら瓶の前で肘をついて見ていると、いつまででもずーっと眺めていられます。
ま、ずーっと眺めていても完成するのは2ヵ月後なわけですが。


去年の梅酒が今かなりいい具合で、それは店のオープン記念のふるまい酒としてみなさんにサービスしようと思うんです。
浸けたときにはこれをいつか店で出せたらいいなあなんて思っていましたが、なんとそれが実現する、しかも1年後とは想像だにしなかったよ。梅酒とイチゴ酒の瓶を並べて眺めていると、なんだかしんみりです。

梅酒が4・5月の「月がわり自家製果実酒」です。そして6月はイチゴ酒ですね。だいたいひと月にひと瓶くらいご提供できるように、これからも入れ替わりどんどん仕込んでいくつもりです。

原寸大の実感

2006/04/03

はいはいはいはい!(景気付け)
いよいよ店の工事が始まりますよ!!

そういえばしばらく日記をサボってたりしたのでご報告していなかったかもしれませんが、実は内装工事を依頼する工務店さんも無事決定していたのです。3社から見積もりを取って、一番安くしかも親身に相談に乗ってくれたところにお願いすることにしました。ハチヤさん(仮名)に紹介してもらった、エイトアローズカフェの施工も行った工務店です。
そして、工務店が決まったことにより自動的に工事の日程も固まりました。工務店さんのスケジュールの関係と、日取り的に友引でよろしいということもあり、本日4月3日がめでたくmichiの着工の日となりました!


まずは、さかのぼること4月1日。

物件の契約をしたのは1月だけど賃料が発生するのは4月から。ということでこれまでも鍵はもらっていたけどまだ手はつけられず、4月に入っていよいよ工事が解禁になったのです。
前述のように、工務店さんが入るのは3日から。工程的にはその日が起工ということになります。でもそれまでにぼくは、いま残っている前の店の壁紙や床を剥がしておかなければいけませんでした。
本来であればそのへんも業者にお願いする作業なのですが、なにぶん金がないもので。ある会社からの見積もりでは、壁紙剥がし17400円、床剥がし18850円。さらにその残材の処分費で37700円。高くはないが、金のない身にとって決して安くはありません。剥がすだけなら簡単そうだし、それは自分でやって節約することにして、壁紙と床のフローリング材を剥がした状態で3日からの作業に入っていただくということで工務店さんと話を進めていました。

いよいよ4月になり、工事の前にまず名刺を持ってご近所へ挨拶周りをすることにしました。ワードで挨拶文を作成し、近所のお菓子屋で手土産を用意。向こう三軒両隣と建物内のほかの居住者のところに行くことにしたのですが、うちの店はマンションの1階なのでその全居住者となると12世帯分にもなり、手土産はけっこうな出費です。でも工事で迷惑をかけるし、ご近所との円滑なコミュニケーションは欠かせません。それにぼくは昔から「挨拶だけはちゃんとする子」でしたから。
緊張しつつもみなさん「ご丁寧にすみません」と好意的に接してくださいまして、無事に挨拶周りは終了。そして夕方ごろ、フローリングと壁紙を撤去する作業にとりかかりました。

本当に自分でできるのかちょっと不安だったので、実は3月中にちょこっと剥がしてみていました。フローリング材は10センチ×1メートルのビニール製のシート状で、それらが1枚ずつ組み合わさって床に接着剤でくっついているだけ。1枚剥がしてみると簡単に剥がれました。壁紙にいたっては、笑っちゃうほどズル剥けです。「やることあったら手伝おうか」と言ってくれた人も何人かいたのですが「いーよいーよ、一人でできそうだから、それよりオープンしたら来てくれればいいから」なんてあっさり遠慮していました。
いよいよ工事が始まるという高揚感もあり、鼻歌まじりでフローリングに手をかけます。

ベリベリ!楽勝楽勝!
ベリベリベリ!むしろストレス解消で楽しいかも!
ベリ・・・べ・・・ベリ!うーん、ちょっと硬いところもあるなあ。でも大丈夫!
ベ・・・リ・・・・ベ・・・・。ちょっとというか、かなり・・・硬い!剥がれん!!

いざフロア全面を剥がしてみて初めてわかったのですが、フローリング材と床との接着具合は場所によってかなり違います。フロアの中心部分は柔らかく、壁際にいくにつれ硬くなる傾向にあります。どうやら人の足で踏み馴らされた場所は接着剤がもろくなって剥がれやすいのですが、あまり人が通らない壁際は接着剤がびっちり残っていて硬いようです。しかも壁際は、壁がじゃまで足の踏ん張りがきかず、力を入れることもままなりません。
1uくらい剥がしたころにはとっぷりと日は暮れて、もうイヤになっちゃいました。


この調子で、3日の着工を迎えられるのか?これは人手が必要だわい、明日は日曜だから誰かSOS!と慌てて男衆たちに電話をしました。
しかし明日来てくれなんて突然のオファーで、誰もつかまりません。じゅんに至っては「明日は仕事やねん」と。この忙しいのに、日曜から仕事なんてしてるアホがおるかボケー!
と、八つ当たりをしてもしかたない。とにかく装備を整えよう。近所の百円ショップに走り、釘抜きを買ってきました。そして家から金づちと軍手と、持久戦を覚悟でラジカセを持ってきました。
まずは軍手をしっかりはめます。硬いところはフローリング材の下に釘抜きを差し込んで、釘抜きの尻を金づちで打って奥まで入れて、テコの原理でフローリングを剥がして、また釘抜きを打ち込んで・・・遺跡を発掘するように少しずつ少しずつ剥がしていきます。じ、地道だ・・・。さほど進捗もなく、予想外の遅れをで1日目が終了しました。


そして2日目。床剥がしは地道なだけでなく、朝起きた瞬間からバリバリの筋肉痛です。床はまだぜんぜん残っています。今日中にやれんのか。肉体労働で徹夜、そんなのいやだぜ・・・。おりしも外は曇り空。夕方から雨の予報。不安なムードが垂れ込めます。
と、そんな中、朗報が。「時間が空いたから行こうか」とマイティボンジャックくんからの連絡。男衆キター!

彼は、嫁(笑)であるチンプイさんと披露宴の会場をいくつか回って下見をしていたらしいのですが、アポの間に時間があったので差し入れ持参で二人で手伝いに来てくれたのです。精神的に停滞ムードだったのでこの援軍は非常にうれしいものがありました。
そしていざ到着してみると、マイティが意外なほど使える。二日目のぼくと違い体力は十分ですし、剥がしながらの片付けもうまい。(ぼくが一人でやると廃材がそこら中に散らかって、萎えて生産性を落とす要因となるのである。)もともと彼はいつ家に遊びにいっても部屋がきれいに整頓されているような人ですから、片付け的な才能に非常に長けているのですね。彼とは長い付き合いですが、彼がこの20年の中で2番目に頼もしく見えた気がします。(1番目は、小学生のころに彼とそば屋に行き、彼が「そば湯ください」と言ったときである。)
チンプイも、さすがに力仕事は無理ですが、力のいらない壁紙剥がしを精力的に手伝ってくれました。

二人はさほど長くいられたわけではなかったのですが、三人で作業すると見違えてスピードがアップして、彼らが帰るまでにはだいぶ完成の目処が立ってきました。
実は到着した彼らを誘って真っ先にお好み焼きを食べに行きビールを飲んでのんびり語らっていたことや、この日チンプイが最も真剣な表情を見せたのがコンビニで多量のお菓子を買い込む瞬間だったことは内緒です。二人とも本当にありがとう。

そうして一気に作業も進み、テンションも上がり、一人になってからも彼らの差し入れを食べながら順調に仕事をこなしました。

腰壁を剥がしてみたら裏の石膏ボードは穴だらけだった、といったハプニングもありますが、まあいいやボードを補修するのは工務店さんの仕事だ。
床も壁紙も全部剥がし終え、午前4時になんとか終了!間に合った〜。



ゴミの山。床と壁の下地があらわになります。もちろんそれは下地であってよく見るとボロボロなのですが、ダサい床とレンガ柄の壁がなくなっただけでなんだか自分のイメージする店に近づいた気がしました。


そして3日目。いよいよ本格的な着工、工務店さんが入ります。

今日やるのは「墨出し」という工程。設計図を実際の寸法に移す作業といったらわかりやすいでしょうか。工事を始めるにあたって、これから行う全ての作業の正確な位置決めをしていくのです。
水平を取り、線を引き、剥がした壁と床の上に工務店さんが新しい店のレイアウトを書き込んでいきます。これまで紙の上、頭の中だけで作ってきたぼくの店が、まだ線だけですが形になっていきます。

が、実際にはそんな感傷にひたっているヒマはありません。
変更点や決めなければいけない点があれば、もちろんぼくがすべて判断します。これまで時間はさんざんあって、設計段階ではじっくりと考えることができたのですが、いざ工事がスタートするとのんびりしてはいられません。すべて即決即決で決めていくのです。
図面から変更していくというよりむしろ、図面を参考にその場で全てを決めていくといったほうが近いかもしれません。これまでさんざん検討し打ち合わせもしてきましたが、設計図はあくまで設計図。寸法を実寸で床や壁や天井に書き写してみると、「あれ、ここが出っ張ってるからこれじゃ冷蔵庫のドア開かないよ」ってな初めてわかる問題点が次から次へと出てきます。実際の箱は図面よりも少しずつ狭くなっていると思ったほうがいいようです。そのたびに、「じゃあ冷蔵庫を20ミリ出して、かわりにここを20ミリ削ってください」と指示を出します。ただでさえ狭い厨房が、もっと狭くなってしまうことになりました。
また、今回は小さな箱だからということで詳細な設計図はなしに工事に入ったので、コンセントや照明といった細かい施工の内容は現場を見ながらその場で決めていきます。「ここで何と何を使うから、コンセントはいくつでここに作って」と即座に判断していかないといけません。ものすごいプレッシャーでもあり、頭を使います。


しかしそうして1日の作業を終え、すべての線が引き終わると。



厨房ができた!




カウンターができた!

夢が、初めて原寸大になりました。20分の1の設計図より、20倍大きい原寸大の実感です。
前の店の古い皮膚が剥がれ、この場所にぼくの命が吹き込まれました。

さあ、いよいよ工事が始まりました!!

アマチュアリズム

2006/04/05

資金繰り。企業活動において最も重要なことのひとつであり、それがうまくいかないと利益を出していても経営が立ち行かなくなる、いわゆる「黒字倒産」といった事態にすらなりうるというようなことは、簿記3級の腕前を誇る俺様はこれまでも十分承知のつもりだったのです。
しかし実際に、小規模ながらも商売を志してみてその言葉の意味がより深くわかった気がします。店ができれば(どうやって客を入れるかは別として)現金収入が発生する。しかし、計画当初はその店ができるまでの資金が圧倒的に足りませんでした。見積書を並べて足し算すると、どう考えても店ができる前の段階で手持ちの金が底をついてしまうのです。
それからさんざん工夫して内装工事費を削り、イスなんかも格安のところを見つけ、しかも内装はずいぶん安くあげてくれる工務店さんに出会いました。それに私生活は以前にもまして緊縮財政で、出費を極力抑えて貯金を温存しました。
その結果、ふと気づくと、どうやら店を作るところまではたどりつけそうな感じになってきました。工事費を払い終えても、まだかろうじて資金は残る。それでペンキやら漆喰やらタイルやらを買って内装を仕上げ、食器を揃え、材料の仕入れをすることくらいはできます。「これだけあれば足りる」と自信を持ってスタートしたわけではなかったのですが、資金繰りの結果なんとかオープンできそうなところにまではこぎつけました。

しかし、手元にある現金の残高だけを見ながら商売しているうちは、まだ資金繰りについてわかったとはいえません。無借金で経営している企業なんてほんの一握り。多くは銀行からの融資に頼っています。それは決してネガティブなことではなく、会社の信用力を融資枠に変えることで積極的に活動できるという意味でもあります。アマチュア的な考え方だと現金がゼロになった時点でゲームオーバー、借金はマイナスであって絶対悪と思ってしまうのだけれど、借金も手玉の一部と考えて手持ち現金と収入と融資枠と返済額を天秤にかけてフル回転ができるようになってはじめて真の資金繰りマスターになるのでしょう。
ぼくの場合でも、銀行は金を貸してくれないだろうけどクレジットカードはある。銀行口座は「総合口座」というやつで自動貸越枠がついていて、残高がなくなってもそこから50万までは引き出せて自動的にキャッシュローン扱いになる。それらの与信枠を全部足すとなにげに200万近くにもなります。ということは現金はなくなっても、実はまだ200万円の余力があるという見方もできる。リボ払いにすれば返済も先送りできる。そうして目先の決済日までにとりあえずの返済額を用意し続けられれば万事OKなのです。そう考えればちっとも悲観をすることはないし、むしろ余裕なのかも。
とはいえ、手持ちのカードをフル活用してまで無謀な攻めをする気はありません。口座残高がゼロになるのはやっぱり気分がいいものではない。ぼくはまだアマチュアです。それにカードの与信枠はこれまで働いて収入があったぼくに付与された過去の信用であって、これから店をやっていくぼくに対してのものではないのだから勘違いしてはいけません。まずは、新しい店で信用と自信をつけて、勝負はそれから、だいぶ先の話です。

とりあえず銀行の口座残高を見たら、ちょっと増えていた。
学校を卒業したことで雇用保険の教育訓練給付金が支給されたのです。それが10万。それと、確定申告でなんと11万還付されました。去年はいろんなところで働いていたので、所得税がだいぶ過払いだったのです。しめて21万、ずいぶん楽になりました。これで客席のイスが買えるぞ!(アマチュア。)


***


工事・マスト・ゴー・オン。急ピッチで進んでいきます。別に急いでいるわけではないのですが、狭い店なのでひとつ工程が進むとずいぶん進歩したように見えます。

先日の墨出しは、単に線を引いただけで実際の工事をしたわけではないのですが、きのうは厨房の床を少し掘ってグリーストラップ(排水溝のようなもの)を設置しました。


そして今日は、カウンターができました。


すげえ!

ぼくが床はがし程度で悪戦苦闘していたのに、工務店さんはいとも簡単にこんなものを作っちゃいます。餅は餅屋、やっぱりプロはすごいなあ。
感謝の意を込めて、お昼ごはんを作ってさしあげました。プロというのはおこがましいけど、いちおうこれがぼくにできること。




この調子で、床のタイル貼りもお願いしちゃおうかなー。自分でやろうと思ってたけど時間かかりそうだし、仕上がりを考えるとやっぱりプロに頼むのが一番だし。タイル貼りって、追加でお願いするといくらくらいかかりますか?

「うーん、狭いからそんなにはならないと思うけど。10万くらいかな」

・・・やっぱり自分でやります。クーベルタン男爵いわく「参加することに意義がある」。

万事オーライ

2006/04/07

工事は急ピッチで進んでおります。カウンターとグリーストラップができたことをこの前書きましたが、今はさらに厨房内の配管ができてこんな感じに。



もちろん厨房はこんな風に配管をむき出しのままで使うわけではなく、この上にコンクリートを流し込んで一段高くして隠します。明日はそのかさ上げの作業をするとのことで、それができればぐっと完成に近い姿になってきそうですね。楽しみです。

厨房機器類の選定もすべて終わり、申し込みも済ませました。無事にリースの審査も通り、問題なしです。機械は12日に搬入される予定です。
前に、うちに入るパコジェットという機械は日本で最後の一台かもしれないという話をしましたが、どうやら正真正銘最後の一台だったようです。取り扱い会社には「2倍の値段を出してもいいからお願いだから売ってくれ」といった依頼まで入っていたらしいです。
パコジェットと並ぶもう一つの秘密兵器の真空調理機、これもいま飛ぶように売れて欠品中で、慌てて増産している最中なんだそうです。まさに増産中なので、最初は納品が12日には間に合わず19日くらいになるかもしれないという話で、20日オープン予定なのに試作もできないじゃんと焦ったのですが、これもなんとか間に合って12日に揃うことになりました。そんな話を聞くと、パコジェットと真空調理という2つの武器を選択したのは間違っていないんじゃないかという気がしてきますね。
あと冷蔵庫。これは3月にモデルチェンジされた新しい機種だったのですが、その機種が評判がいいらしく、また気温が上がる冷蔵庫の買い替えシーズンに重なって、こちらも品薄で増産中とのこと。そしてなんとこれも、在庫が底をつく寸前でメーカーの最後の1台をぼくがゲットしたのだそうです。厨房屋さんが「ほんっと、運がいいですよね」と言っていました。やっぱついてるね、四天王。

いままで工事にかかりきりになっていたので少し遅れていましたが、メニュー作りのほうも進めております。だいたいの骨組みはできていて、あとは実際のオペレーションや仕入れ等を考えたりそれらしい名前を決めたりします。来週あたまくらいにはほぼ固めて、食材卸の業者さんと話をするつもりです。
酒のほうは、恥ずかしながらぼくはアルコール度数以外のことはよくわからないので酒屋さんに任せることにしました。「ワインを10種くらい、ウォッカ・ジン・ラム・テキーラを2〜3種ずつくらい、ウィスキーを5種くらい、これくらいの値段のもので提案してください」ってな感じで依頼してあって、こちらも来週あたまくらいに一覧をもってきてもらえることになっています。
みなさんも、オススメの酒があったらぜひご提案ください。すでにやっしー御用達のロンサカパ・センテナリオと一ノ蔵カン太くんの一ノ蔵はリストに加えてあります。それと悪魔の酒・マッコリも置くよ。

(酒屋さんではなく)酒造メーカーさんがサンプルでどっさり焼酎を持ってきてくれたので、今夜はそれでも飲みながらメニューを考えようと思います。いや、サンプルですよサンプル。テイスティング。



折れない心

2006/04/15

8日。予定通り厨房にコンクリを流し込み、床を上げる作業が終了。



これで一気にそれらしくなった!



そしてカウンターの下も同様にかさ上げされました。これがみなさんの足場になります。

***

9日。店に設置するスピーカーを買いに行くことにしました。

飲食店たるもの、BGMが必須なのは言うまでもありません。でもぼくはふだん音楽は聴かないし、ましてや店舗で音を鳴らすのは家でラジカセで聴くのとは話が違うわけで、どうしたらいいか全くわかりません。そこで底石さんをmichiのオーディオ・プロデューサーに勝手に任命し、そのあたりのアドバイスは彼に一任することにしました。

まずは内装工事の段階で、「スピーカーは自前で用意して設置するから」といって配管だけしてもらいました。

といってもできあがりは指定の場所に天井からニョーンと管が出ているだけ。これにスピーカーをつなげばいいの?スピーカーの電源はどこから?USBみたいに本体から電源を取れるの??ぼくはパソコンのことならぼちぼち詳しいのですが、オーディオのことは全くわかりません。
なんでも底石さんによると、スピーカーというのはそもそも例の管から送られた電気信号を音に変えるだけの装置であって、電源とかそういうレベルの話ではないのだそうです。よく理解していないのでこの記述が合っているかどうか定かではありませんが。
BGMそのものはノートPCでMP3をかけるつもりでした。すると、厨房内に出してもらったこの配管のもう片方を、ノートPCにつなげばいいのか?
と思ったのですがそうでもなく、ノートPCから出せる音では店舗用には小さすぎるので、音源(PC)とスピーカーの間にアンプをかまして音量を増幅させる必要があるんだそうです。音量を上げるなんてボリューム上げればすみそうなものですが、そういうわけではないようです。アンプというものの意味を始めて知りました。

というわけでスピーカーとアンプを探しに、底石さんと秋葉原へ。
久しぶりの秋葉原なので、ぼくらはけっこう興奮していました。秋葉原といえば昔みんなでメイド喫茶に社会科見学にいったものです。「テンション高めで!」「でもズボンの裾は短めで!」「紙袋持参な!」「おでん缶はおやつに入るんですか?」などと意気揚々と電気街口で待ち合わせました。
が、久しぶりに降り立つ秋葉原の地は、駅前がずいぶん開発されていてきれいなビルが立ち並んでまるで別世界。まるでお台場や汐留みたいな新都心ぶりです。
もちろん、例えば汐留でも、歩いていると「あ、こっから新橋」みたいな雰囲気がガラリと変わる一線というのがあるものですが、秋葉原でもそれは同様。きれいな駅ビルの反対側ではオタクがひしめくオタクの聖地なのは全く変わりがありません。

メイドと、それを撮影するカメラ小僧たち。

というか、昔ながらを超えて、少々やりすぎの感あり。電車男を筆頭に秋葉原文化がフィーチャーされ、そこに集う人々も完全に開き直っているというか、自分たちが主流なんだと勢いづきすぎているというか。「萌え」と書かれたジャージを着ている人なんかもいて。
昔は、どこか後ろ暗いものとしてのオタク文化があり、そこにたまに浸って非日常的なドキドキを得るのが秋葉原ツアーの醍醐味であったのだけれど、ここまで開けっぴろげにオタクを謳歌されると逆に引くというか。パンチラはパンチラだからこそ心惹かれるのであって、常にパンツ丸出しではそれは単なるワカメちゃんであるというか。

まあいいや。今回の目的はオタク探訪でもメイド喫茶でもなく、店のスピーカーの購入です。
何軒か、中古屋やオーディオ機器の専門店を回ってけっきょくヨドバシへ。秋葉原の人の流れを変えたとまで言われる巨大なヨドバシはすべてが揃います。

 
途中、5.1chのサラウンドに身を任せたりフィギュアに見入ったりの寄り道をいちおう経つつ、目的のスピーカーをゲット。中古でもよかったんだけど思ったより安かったので新品にしました。

スピーカーが予算を下回ったので、ついでにプリンタも買っちゃいました。もちろんプリンタはすでに持っていて、本当はスキャナのほうが優先順位は高かったのです。でも最近のプリンタはスキャナ内蔵なんですね。それでいてスキャナ単体とそんなに値段は変わらないし。しかも、最初にいいなと思った機種が、他と見比べている間にタイムサービスみたいなやつでいきなり3000円引きになって、思わず衝動買いしてしまいました。
これで、手書きのメニューをスキャンしてコピーすれば「本日のメニュー」が作成できます。それに、添付ファイルをつけてメールを送ると相手先にFAXとして届くNTTのサービスを申し込んでおいたので、FAX機なしにFAXを送ることができるようになりました。これまでも打ち合わせでFAXを使っていたし、今後は発注があります。FAXが不可欠です。これまではわざわざコンビニに行って1枚50円で送信していたのでずいぶん楽になります。ちなみに、ネット接続は自宅のADSLのルータを変更して無線LANの電波を増強して店をLAN環境にする予定です。うちの店はハイテク満載です。

スピーカーだけでなくアンプも買わないといけなかったのだけれど、微妙に高かったので保留。かわりに、底石さんが使っていないアンプをとりあえず借してもらうことになりました。
そこで秋葉原から底石宅へ。ついでに、彼の家の近くに最近できたというホームセンター・Jマートへ。ここ最近で、ホームセンターはドイト・カインズホーム・ジョイフル本田に次いで4軒目。内装のための本格的な資材購入は日を改めて気合いを入れてジョイフル本田に行くのですが、とりあえず小さめの缶のペンキやハケなどをいくつか購入。
そして底石宅へ戻り、アンプを借り受ける儀式として乾杯。つまり黒いカリスマ主婦さんの手料理をいただきつつ飲み会。ゆうは、この前会ったばかりなのにもう忘れられているようで泣きっぱなし。「なになに?ヘンな人きたよ」とこっちを見ては泣く。しばし母の胸に顔をうずめて落ち着く。するとまたこっちを凝視して、また泣く。なら見るなよー。
終バスで帰宅。荷物がむちゃくちゃ重い。スピーカーはメーカー直送にしてもらったので持ち帰らずにすんだけど、プリンタとアンプ(ビデオデッキくらいの大きさ)。それとペンキとか。今回は電車に置き忘れずに無事帰宅。

***

10日。お世話になっているコンサルタントのロバート先生のところに相談に。

今回はメニューブックのデザインについて。最初は、どうせすぐ変わるだろうから自分で適当にワードで作ろうと思っていたのですが、絶対にメニュー表に力を入れるべきだと前回アドバイスをもらって、急遽作成することになったのです。
「この店は、ただのバーじゃなくて料理に力を入れる店なんだから、それをお客さんに伝えるためにフードのグランドメニューはちゃんとデザインしたほうがいい」。なるほど。ロバート先生は、やっしーがデザインした名刺やロゴをいたく気に入っていて、メニューもこの人にデザインしてもらいなさいといいます。
そこで慌てて構想中のメニューをやっしーに渡し、見開き2ページのグランドメニューをデザインしてもらいました。
すると・・・これがすばらしい出来!こればっかりは店に来て実際に見てもらいたいので事前に公開はしませんが、見ていて楽しくなるような、思わず注文したくなるような素敵なデザイン。注文してくれ!
で、ロバート先生も絶対に気に入るはずと思い、早く見てもらいたくてウズウズしていました。先生はいつものように、というかいつも以上に急がしそうで応接スペースのあちこちを行ったりきたりしていました。ぼくはしがない無料相談の身なのでじっと待ちます。
ようやく時間を空けて来てくれたロバート先生は、まず「カウンター立ち上がったね!」。サイトの写真を見てくれたようです。そしてメニューを見せると「いいねえ!このデザイナーの文字を選ぶセンスは、実にいい」。メニューのフォントはやっしーもこだわっていたところなので、ばっちり伝わったようです。
あとは、「実際に開けてみて出せない料理があったら、無理せずオーダーストップにしちゃう」「汗流しながら一生懸命やって、『うまい酒飲んでってくださいね』って言っとけば、誰も怒らないから」と最後のアドバイスをくれました。

最後のアドバイス。そう、毎週月曜日にせっせと無料相談に通っていましたが、いよいよ彼のところにおじゃまするのは最後になるのかもしれません。学校の特別講義を受けただけのぼくに、忙しい中たくさんの時間を割いてくださいました。物件が全くのスケルトン、現況の平面図しかなかったところから始まって、彼の導きがなければメニューも内装もここまでたどり着けなかったでしょう。
別れ際、ロバート先生がメニューを持ったままだったので、思わずぼくは「記念にどうぞ」と言いました。意味、わかんねえ。でも、それが先生のおかげでここまでできたという感謝の気持ちだったのかもしれません。
そしてオープンしたら、ぜひ一度店に来てください。先生はまだ図面と写真でしか見たことはないけれど、先生といっしょに作った店を、ぼくがどんな風に仕上げたか、見に来てください。ありがとうございました。

***

11日。いよいよ厨房機器が入る前日。
工務店の柴又社長から、「機械が入る前に壁塗っといたほうがいいよ」と言われていました。壁と天井はぼくが自分で塗るのですが、機械が入ってから塗るのは面倒なので厨房の中だけは先にやっておきなさい、ということです。プロがやる場合でもそういう順番でやるそうです。
そこで底石さんとJマートに行ったときにペンキを買ってきていたのです。ついでにそのときツナギも買いました。



まずは形から。意気揚々とツナギに着替えます。カウンターができたのでセルフタイマー撮影も楽々だぜ!と、どうでもいいところでひとり興奮。
そして買ってきたローラーでペンキ塗り。客席は漆喰で仕上げるつもりですが、人目に付きづらい厨房は面倒なのでペンキにします。



あれ、やってみると意外と難しいな・・・。どうにも、ムラができてしまいます。壁は、今回の工事で新しく石膏ボードを貼った部分と前の店舗が使っていた古いボードが残っている部分があり、新しいところはきれいに塗れるのだけれども古いところは昔のシミがペンキの下に透けて見えます。二度塗りしてもダメ。むしろ塗りムラが際立ってしまう。



そして、床には白いペンキがポタポタと。初めに新聞紙でも敷いときゃよかった。
ま、ここは厨房だし。機械が入って隠れるし。適当でいっか。
しかし、いざ内装に自分で手をつけてみて初めて、「意外と大変だぞ」ということがなんとなくわかってきたのは事実です。

そして、本当に大変なのはここからでした。
いま残っている壁には、前は壁紙が貼ってありました。その壁紙を剥がすのが、この前やった今回のセルフ工事の第一歩でした。しかし剥がしたから次はその上に漆喰を塗ればいい、というわけではないのです。
店舗でも家でも、壁や天井は基本的に石膏ボードの上に壁紙がのり付けされてできています。そして壁紙は紙の下地とビニールのクロスの二層構造になっていて、この前剥がしたのはビニールの表皮の部分だけなのです。紙の下地はまだボードの上に残っています。その下地はボードにぴったりくっついているわけではなく、いたるところでブカブカと浮いています。新しい内装では壁紙ではなく漆喰を塗るのですが、古い下地が残ってボードから浮いているときちんと塗れないのです。

そこで、まず紙の下地を剥がします。霧吹きで壁や天井を濡らしてしばらく置くと、ボードに密着していない部分は気泡のように浮き出してきます。そうしたらそこを引っかいて下地を剥がします。



紙なので、ちょっと引っかけば簡単に剥けます。ネットで調べたとおり。
・・・しかし!下地はごく薄い紙なので、逆にすぐにちぎれてもしまいます。ビニールの表皮は壁一面が一発で剥がれたりして本当に楽勝だったのですが、紙の下地はデリケートで何倍も、いや何十倍も手間がかかります。
さらに、この紙が貼ってある石膏ボードも、実は表面はボール紙のようなものでコーティングされているのです。うまいこと壁紙の下地だけを剥がそうと思ってもそうはいかず、どうしても石膏ボードのボール紙までいっしょにはがれてしまう。さらにさらにボール紙も何層かに分かれていて、剥こうと思えばいくらでも剥ける。一番上の一層だけを剥きたいのに、ビリビリといろんなものが剥けてしまい、壁はあっというまに自分がレベルいくつを剥いているのかわからないまだら模様になります。



そして、剥いても剥いてもいたるところで、破けた紙の端がささくれ立って壁から浮き上がっています。それを剥がすと途中でまたちぎれ、ちぎれた部分がまたささくれ立つ。剥がす。ささくれ立つ。どこまでも剥がれ、どこまでもささくれ立ちます。仕上げ前の下処理のはずなのに、前よりもどんどん荒れていく!いつまで剥いても終わらない!

すぐに根をあげ、工務店の柴又社長にSOSの電話をしました。
「漆喰塗る前の下処理、どうしたらいいかわかんないんですけど〜」
実は、これは自分では手に負えないかもという気がして、追加工事を工務店さんにお願いしちゃおうかなという考えが半分ありました。
すると、今日は厨房のコンクリを乾燥させる日で工事の予定が入っていなかったのにも関わらず、社長がわざわざ現場の移動の合間を縫って店に様子を見に来てくれたのです。
「これはねえ、こう水で濡らして、浮いてるところを剥がして、ヘラかなんかで・・・あ、ヘラ買ったのね、それ使うといいや。ガリガリこすって、キリがないから、とにかく浮いてるところがなくなりゃいいんだよ」
そうして実際に、下地を剥がす作業を少し手伝ってくれました。なるほど、社長が実際にやるのを見ると、完璧に剥く必要はないようです。
でも、このささくれ立ってるところはどうするんですか〜。その上に漆喰塗ったら剥がれちゃうんじゃないですか〜。
「だから、この接着剤を塗って固めるんだよ。水で2倍くらいに薄めて。ローラーでガーっと。全面に。置いてってやるから、使いな」
なんと社長は、壁の下処理に使う接着剤の余ったやつを持ってきてくれたのです。そして、接着剤を溶くバケツと、それを塗るためのローラーも貸してくれました。
缶に入った接着剤をバケツに注ぎ、「これくらいあればちょうど全部塗れるでしょう。じゃ、がんばんなさいよ」
そう言い残して、あっというまに社長は次の現場へと向かっていきました。

おりしも外は雨。壁を水で濡らしていることもあり、店内は湿気むんむん。窓はびっちりと結露しています。
水は壁に染みこみ、ぼくの心には社長の気遣いがじんと染みわたります。
しかし社長・・・接着剤ぜんぶ缶から出すことないじゃん・・・これじゃ今日中に、使い終わらないと固まってしまう!

それから、夜を徹しての作業がスタートしました。
霧吹きを吹きかける。浮いた部分を剥がす。さっきと同じことをやっているのだけれど、社長にやり方を教わったので少し手際がよくなりました。そしてぼくには社長からもらった魔法の接着剤があります。うまく剥がれなくてもささくれ立っても気にせず、とにかく剥がす。そしてローラーで接着剤を塗る。剥がしたつもりでも塗料を塗るとまた浮くところがでてきて、それをツブす。塗る。
ですが・・・壁はまだしも、天井がキツい。イスの上に立ち上がり、上を向いての作業です。ローラーからポタポタと接着剤がしたたり、顔に落ちます。5分もするとすぐに首が痛くて耐えられなくなります。

上を向いて首が限界になったところでイスから降りて腰かけて下を向き、しばらくしてまた立ち上がって上を向く。その繰り返しで1時間くらい。
ずいぶんやったなと思って少し休憩することにして店全体を見渡すと・・・まだまだ、天井の5分の1くらいです。剥がすだけでも面倒なのに、接着剤も塗るのでえらく時間がかかります。それに天井だけじゃなく壁もやらないといけないし、どんだけ時間がかかることやら。そして首が・・・。

外は大雨。つい口ずさんでしまいます。

君の選んだことだから
きっと大丈夫さ
君が心に決めたことだから

選んだのは君っていうか、ぼくだな・・・。
ホントに大丈夫なのかな・・・・。

そして
僕は途方に
暮れる



しかし、途方に暮れているヒマはありません。接着剤が乾いてしまう。そしてぼくは、店をオープンさせなければいけない。
まだ音響設備も何も整っていない店の中で、雨の音と通り過ぎる車の音だけを聴きながら、ひたすら首の痛みに耐えながら剥いて塗ります。きっと、社長が接着剤をバケツに空けていったのはぼくに対する激励なんだ。いつかやればいいと思っているといつまでたってもできない。これが乾くまでに、一気に全部やってしまえと。
そう、ぼくは店をオープンさせなければいけない。みんなが待っている。助けてくれる人たちがいる。その人たちのためにも、ぼくはやり遂げなければいけない!

上向き地獄の中でもがき苦しむこと8時間くらい。雨は小降りになり、空は白々と明け、とっくに朝になっていました。

そして壁と天井の下処理、全面終了!
朝6時までかかりました。

***

12日。といっても寝たのが朝の7時ごろ。しかし9時には電話があって起こされて、店に行きます。
でも起きた瞬間からテンションアップ。



なんたって、電話の主は冷蔵庫だっ!念願の、厨房機器の搬入の日なのです!

が、体力の限界につき、搬入時の簡単な確認と打ち合わせを終え、「じゃ、あとはよろしくお願いします〜」と家に戻ってダウン。

次に昼すぎに電話があって起きて、もう一度店に行ってみると・・・。



厨房ができている!!




冷蔵庫が本当に入るのか若干不安だったのですが、見事に収まりました。天井の端に梁が突き出ていて、その数ミリ下をギリギリくぐっています。冷蔵庫の上部は排熱のため空間がないといけないのですが、熱を発するラジエーターは冷蔵庫の左上、ちょうど梁のないところに位置しているのでこれでOKです。まるでうちの店に合わせて特注したかのような、この場所にその冷蔵庫が入るのを待っていたかのようなアジャスト具合に、厨房屋さんも「ビッタンコですね」と驚いていました。

そして、やっと会えたねパコジェット。




さらに、主戦力となる真空包装機(右)と湯煎式加熱調理機。




実は、おりからの大雨でダンボールや説明書はびしょびしょ、しかも湯煎式加熱調理機は豪雨による高速道路の通行止めでメーカーからの配送が間に合わずにだいぶ遅れて3時ごろに届き、届いてみたら注文していたのと別の機種で用意したコンセントと合わず後日交換してもらわないといけない。上の写真で上からたれ下がってる黒いコンセントが、えらいごっついいのがわかるでしょ。
等々、ここでもやはり問題は発生しているのですが、そんなのは関係なし!
これまでも、カウンターができては喜び、コンクリが流し込まれては喜んでいましたが、厨房機器が入ったときの喜びはひとしおです。苦心のレイアウトの結果が、またひとつ形になりました。

***

13日。この日が工務店さんにお願いした作業の最終日でした。もう大きな工事はなく、レンジの上のフードをつけたり換気扇をつけたりといった最終仕上げです。
前日は厨房機器の搬入で作業が休みだったので、2日ぶりに店に来た柴又社長は壁と天井を見て「おお、あのあと全部やったんだ」。朝6時までかかりましたと言うと、「やっぱりね、それぐらいかかると思ったんだ。私たちならそこまでは時間かからないけど、それでもけっこう大変だよ。お金の大切さがよくわかったでしょう」とガハハと笑います。はい、よーっくわかりました。これからもご指導よろしくお願いします!
そう、工務店さんの作業はこれでおしまいですが、工事は全然終わってない。これから天井と壁を塗って、タイルを貼って。その前にその材料を買いに行かないと。もちろんメニューのことも考えないといけないし。はーっと、大きくため息をついたら、「ダメだよ今からため息ついてちゃ。これからだよ本番は。はあ、じゃない、さあ!」と社長にハッパをかけられました。

「ぜんぶ終わったんで帰りますから」という社長からの電話を受けて店に顔を出すと、なんとフードや換気扇だけじゃなく、カウンターの横にスイングドアが付いている!



保健所から営業許可をもらうには、厨房と客席の間にそれを隔てる扉を必ず設置することが義務付けられています。といってもけっこう邪魔なので、保健所の検査が終わったら取り外しちゃう店も多いのです。どうせ取り外しちゃうようなものなのに、ある会社の見積もりではスイングドア設置で26100円。できるものは自分で作戦の一環で、ホームセンターで適当な蝶番を買ってきてそのへんの板切れで自作するつもりでした。社長にもそう言ってありました。
しかし、「スパゲティのお礼だよ」と社長は笑い、なんとサービスでスイングドアを設置してくれたのです。塗装もしていないし材料費でいったらわずかなものなのでしょうが、思ってもみない立派なドアができました。これは、邪魔だから取り外すなんてできないな!きれいに塗って、ちゃんと使います。

それと、あの接着剤を入れたバケツもくれました。「どうせ買うなら、使いなよ」と。これも高いものではないのでしょうが、ありがたく頂戴しました。
「これから全部自分でやるのは大変だよ。途中で音を上げるんじゃないかって俺らも話してるんだけどね、また近くで作業があったら見に来てあげるから。まあ、ギブアップするなら早めに言ってちょうだいよ。手配するから。ギブアップしないで最後までできたらすごいよ、おみやげもってきてやるよ」
そう言って、ガハハと笑いながら社長は帰っていきました。
エイトアローズカフェのハチヤさん(仮称)の紹介というひょんな縁から仕事を依頼したところから始まり、予算は少ないだの金がないからやれるところは自分でやりたいだのの困った注文にも対応してくれて、アドバイスまでくれて。ぼくは本当にいい工務店さんにめぐり合いました。

***

14日。業者さんの作業があらかた終了したので、いよいよ自力の内装の本格スタートです。まずは必要な材料を全てそろえるところから始まります。事前に何度かホームセンターに通って下調べをして、どれを使おうという目星はだいたいつけてありました。あとはレンタカーを借りてジョイフル本田に乗り込み、一気に買い込む、運び込む!

9時のジョイ本の開店に合わせ、朝8時にレンタカー屋へ。予約していた小さいバンが整備不良だったらしく、金額は同じでいいですからと一回り大きいサイズの車があてがわれました。しかし、正直余計なお世話。こちとら自動車の運転は1年半ぶりです。いちばん小さいやつでいいのに〜。
手に汗握りながらの運転です。1年半前に乗っていたのが魚屋のトラックだったので大きめの車には慣れていたといえば慣れていたのですが、オートマ車の運転は人生でたぶん10回あるかないかです。えっと、Pはパーキング、Rはリバースで、Dがドライブのことだよな、あれシフト動かないぞ、ああこのボタンを押しながらか、と考えながらでないと発進できないのでちっともオートマチックじゃありません。それにDの次のSとかLとかって何?前回(たぶん3年くらい前)乗ったオートマ車にはODとか書いてあったような。確か高速走行時に使うモードだったと思ったので、首都高に入って試しにSに入れてみたところ、エンジン音がものすごくなったので慌ててDに戻しました。
ハラハラしっぱなしでしたが、空いていても100キロも出さずに、なんとか高速をクリア。しかし降りてからの下道がけっこう混んでいて、目的地のジョイフル本田千葉ニュータウン店についたのは10時半ごろでした。レンタカーの返却は20時で、店に戻って荷物を降ろしたりもしないといけないから、16時くらいまでには買い物を終えてジョイ本を出ないといけない。やれんのか?

平日午前のジョイフル本田。「生活館」には子ども連れの主婦などもぼちぼちいるようですが、「資材館」はガラガラです。いるのは、作業服を着たいかにも職人さんといった感じの人ばかり。そんな中に飛び込んだぼく。役柄で言えば、ひょんなことから膨大な借金を背負い込んだまじめな男、定期預金を解約した金を懐に意を決して闇カジノへ潜入、といったところ。買うものの多さとこれからの作業の大変さを思うと、役柄そのものに顔がこわばってピリピリしているのが自分でもわかります。

まずは台車を一台手にすると、わき目もふらず一目散にタイルコーナーへ。どのタイルを使うかは前に下見に来たときに決めていて、すでにそれを元に内装のイメージを組み立てていました。幅10センチのタイルで、3×3=9枚が裏打ちされて30センチ角になっているシートがあります。そのシートを、タイル貼りする部分は12uくらいだから・・・持参した電卓で計算すると133枚!多いなあ。15枚でダンボールに入ってケースになっていたので、それが多めにみて9ケースか。いざ計算してみてその多さにたまげつつ、店員を呼びとめ、これを9ケースくらいくださいと言いました。
「えっと・・・ここに出ているだけなんですけど」
・・・・パードゥン?
ここに出ているのとは、たったの2ケースです。
いきなり目の前が真っ暗になりました。ジョイフルどころか、アイアムサッドです。むしろ胃が痛くなってきました。シックです。しょっぱなから計画が狂いました。わざわざ千葉ニュータウン店まで来たのは、そこが東京近辺のホームセンターで一番大きな店だからです。「近くの店舗に在庫があるかもしれませんけど、ひたちなか店とか」って遠いっちゅうの。メーカー直送も不可。取り寄せはできるが、そうするともう一度千葉までこないといけない。

しかし、もうこうなったら仕方がない!
これに似た感じのタイルはないですかと聞いて、質感がちょっと違うけどだいたい近い色のものへと作戦変更。そのタイルの12枚セットを14ケース、えいやと台車に積み込みます。やはり、そのタイルがひと山ほとんど全部なくなってしまうくらいの大量買い占めなのです。




それから、タイル貼りに必要な道具を全部ください!
「・・・お客さん、タイル貼りは初めてですか」と店員。「はい!」と元気よくぼく。「チャレンジャー・・・」と、店員さんが絶句します。
しかしそれから店員さんが親切に教えてくれて、言われるままに接着剤、目地剤、タイルカッターなどどんどん台車に積み込みます。タイルも1ケースで15キロくらいありそうだし、目地剤は1袋25キロです。そして会計は、8万円。

それを台車で駐車場まで持っていって車に積み込みます。



積み込みを手伝ってくれた店員は、「ガーデニングですか、いいですねえ」なんてのんきなことを言っている。無視です。ぼくはむしろ、はるばるシンガポールから秘伝書を探しにやってきたくらいのガチンコなのです。

超重いタイルやら材料やらを積み込んで、ひと息ついて時計を見ると、12時すぎ。タイルだけでもう2時間も経っている。これは20時のレンタカーの返却は無理だなと、早々に腹をくくってすぐにレンタカー屋へ3時間延長の連絡を入れました。
そうして昼飯をかきこんで、休む間もなくジョイフル本田の東京ドーム3.2個分を縦横無尽に駆け巡りました。
漆喰23キロ・テーブル天板1830ミリ×930ミリなど大きいもの重いものから、ビスやS字フックといったこまごましたものまで。ここで絶対に買っておきたかったものを夕方ごろにはすべて揃え、ゴミ箱や傘立てや、パスタパンや大きめのまな板といった家にはない厨房用品類にまで手を伸ばしました。もちろん改めて合羽橋にでも行くので今日でなくてもいいのですが、合羽橋といってもそんなに安くはないし、車で荷物を運べるのは今日だけだから!

膨大な買い物リストと電卓とメジャーを手に、買っては積み、積んでは買い・・・。ノンストップで閉店の19時まで。



買いも買ったり、本日のお会計合計17万円なり!
さすがにぐったりしました。あとで経理処理めんどうだなあ。これまでの人生で最も高い買い物はもちろん店舗取得費だけど、あれは振り込みだし権利金みたいなものだし、モノを買ったという実感自体はそんなにはありませんでした。持って帰れるものの1日の買い物額ではこれが人生で最高かもしれません。

帰り道、なんか暗いなと思いながらしばらく走っていたらライトをつけていなかったり、高速までの道がわからなくて30分ほどジョイフル本田の周りをぐるぐる回ったりしていたのは相変わらず。しかし帰り道は、行きにもまして慎重に慎重に運転しました。荷台には無秩序に大量の積荷があるので、乱暴な運転でそれらが崩れたりでもしたらえらいことです。
高速に乗って、まっすぐな道でも車がふらつくのに驚きました。行きと違い、荷物があります。札束は意外に重くて現金輸送車はハンドルをとられて走りづらいと聞きますが、この車も荷物の総重量は300キロをくだらないでしょう。なんたって、店一軒分のあれやこれやがぎっしりと詰まっているのですから、札束に勝るとも劣らない重みなのです。

これで今日はおしまい、とならないのがつらいところ。
帰りに車で実家に寄って、脚立を借りて中学時代に図工で使っていた工具入れを取ってきました。そして店に戻り、こんどは荷物を降ろす降ろす。今度は店中が荷物だらけ。プチ資材館です。



そしてレンタカーを返却に行き、店に戻ってくると、休む間もなくさっそく作業スタート。壁を塗る作業の前の下処理をします。下処理をしてから乾かす時間なども必要なので、一刻も早く手をつけておきたかったのです。
いま壁は古い壁紙を剥がして石膏ボードがむき出しになっている状態ですが、そのままではボルトのネジ穴やクギ穴や原因不明の穴がけっこうあります。それに石膏ボードというのは、なんでかしらんが端をナナメにカットしてあるので二枚の継ぎ目はV字の溝になっています。そういった凹み部分にはそのままでは漆喰を塗ることができず、パテで凹みを埋めておかないといけません。

そのためにジョイ本で買ってきたアイテムのうち、ファイバーテープというのがあります。



これがなかなかすぐれもので、テープなのですが網状になっています。凹みが大きな部分にはそのファイバーテープを貼って、網の中にヘラでパテを塗りこむとうまく補修できます。



壁・天井全面での作業が必要だった壁紙の裏紙はがしに比べれば楽ですが、面倒なことには変わりありません。天井上向き地獄もあるしね。
でもコツコツと、続けました。やっぱり朝までかかりましたが、5時に終わったのでこの前に比べればやっぱり楽です。

***

というわけで、めまぐるしく働いた1週間。
「万事オーライ」というタイトルを最後に日記が途絶えていましたが、その後は実のところはオーライとは言いがたかった。苦難の連続です。
しかし、なんだかぼくは強くなった気がする。心が折れなくなった。
折れなくなったというか、ボキボキ折れるんだけど、折れてる場合じゃないことに気づいたんだよね。

どんだけ大変でも、やればいつかは終わることは、やればいつか終わる。どんだけ大変でも、やらなきゃいけないことは、やらなきゃいけない。だったら折れてるヒマなんてない、やるしかない。

そして、この店ができるのを楽しみにしていてくれる人がいるという実感、手伝ってくれる人がいるという支え。それがあるから、折れてもまた立ち直れるのです。
ジョイ本の帰りの車のラジオの、桑田が600日ぶりの勝ち星をあげたというニュースで、「自分はただ生きているんじゃない、生かされているんだと感じた」というコメントを紹介していました。桑田は、ボールに話しかけたりするような求道者的な自意識があんまり好きじゃなかったのですが、そのコメントはぼくにはすごくしっくりくるものでした。

この店は、ぼくが作っているんじゃない。みんなの力を借りてぼくが作らせてもらっているんだ。

問題はまだまだ山積みです。
たとえ内装が今のスケジュールどおりに進んでも、メニューは?食器は?正直言って、メニュー表のデザインができただけでメニュー自体は固まっていないし、仕入れの業者とはまだほとんど話ができていません。だいいち厨房機器の最終設置もまだ終わっていなくて、機械にはビニールがかかったまま。試作も仕込みもできません。
でも、そういえば。おじちゃんの店を手伝ったときに学んだことの一つに、「店作りの第一フェーズは、なにがなんでも店を開けることである」というのがあった。あの店も、12月1日のオープンのときには何ひとつ揃っていなくて、8日に延期して、そこからも幾多の軌道修正を繰り返していった。
ぼくの店もきっとそう。4月20日がオープンと決めたけれど、まだどうなるかわからない。どうなるかわからないけど、しょうがない。オープンをめざして何が何でも切り開いていくしかないんだ。
20日は、仮に内装ができていたとしてもお客さんをフリーで入れるのはまず無理。まずは時間指定で親でも呼んで、近くのスーパーで揃うもので作れる料理を勝手に出すくらいかしら。それからしばらく身内で試食会。出すつもりでも使えない料理もあるかもしれない。店というより、ホームパーティーに毛が生えたようなものだね。そうしてだんだんと仕入れを揃え、仕込みをして、メニューを固め・・・。すべては、まだまだこれからです。やるしかない。

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