久しぶりに学校の話を。
1年半通った学校も、残りあとわずか。最後の試験を残すのみとなりました。
実技試験では、まず中間試験があり、それから期末試験を迎えます。年始には製菓の中間試験があり、かなり厳しく採点して学生を威嚇する中間試験でもそれなりの評価をもらって自信を得たというのは前にも書きました。
間を空けて、日本料理と西洋料理の中間試験がありました。日本は大根の桂むき、西洋はオムレツです。
大根の桂むきは、はっきり言って自信がありました。店で毎日のように練習し、実際に桂むきにした大根を千切りにして刺身のツマとしてお客さんにも出していました。そして今の店で働くことについて「店をやりながら学校を卒業するなんて無理だ、あきらめろ」と言った日本料理のヨネスケ先生を、見てるかどうかはわからんが見返してやりたいという気持ちもありました。
中間試験の結果は、見事合格!受かったのはクラスで8人だけでしたから我ながら立派なものです。
それも、5分間で180センチを剥いてクラスの最長不倒距離をマークしました。まあ長さというのは大して重要ではなく、それよりもどれだけ薄く、均一に剥けるか、つまり商品として使い物になる桂むきができるかのほうが重要なのですが、でもせっかくたくさん練習したんだから一番取ったれと思ってスピード重視で剥きまくったのです。
とはいえ大根の桂むき、はっきり言ってぼくにとっては不要なテクニック。自分の店で刺身とか出さんし。たぶん卒業したら二度とやることはないでしょう。それよりも西洋のオムレツですよ。
オムレツについては、桂むきとはまた違った思い入れがありました。オムレツは自分の店で出すことも十分に考えられるメニューです。原価にすればわずかな卵がちょっと火を加えるだけで立派に1000円を取れる商品になるという意味で、プロの技の真髄と言えましょう。店を出すということは、プロとしてお金を取るということ。試験に受かるとか落ちるとかよりも、自分は本当に店をやっていけるのか、それを判定するための試験のようにも思えました。
ですから西洋の中間試験に向けてはむちゃくちゃ練習しました。もともとオムレツは苦手で、フライパンの柄をトントンと叩いて回すのですがどうにもうまく回らない。しかし試験の前には連日卵を鬼のように買ってオムレツを作りまくりました。(そして捨てる。)
学校で作るオムレツでは、1つに卵を3つ使います。少なくとも1日に1オムレツ、多い日では卵を5パック50個使ってオムレツの練習をしました。そして徐々にオムレツを回すコツを掴んでいきました。
西洋の中間試験には、並々ならぬ意気込みで挑みました。なんせ西洋料理の中間試験の試験監督が、ヒゲハゲ先生。これまでストーカーのように真空調理についての質問を繰り返し、彼はぼくが店をやることを当然知っています。なんだ、こんな腕前で店やるなんてちゃんちゃらおかしーぜと、思われたくはありません。採点が厳しい中間でも、絶対に受かる!そのあかつきには、店のメニューにオムレツを加えるのだ!!
しかし・・・気合が入りすぎると、空回りするもの。家のコンロで強火でやっていたので学校の調理台でも強火でやったのですがそれでは強すぎ。あっという間に卵に火が入り固まって回らなくなります。それでもなんとか体裁はつくろって仕上げたのですが・・・。とてもお客さんからお金をもらえる出来ではありませんでした。
結果発表は、一人一人ひとことコメントとともに合否が告げられました。みんなの合否をみると、中間試験のわりにわりと甘めの合格基準だったのでいけるかなと思ったのですが、ぼくの番では「悪くはないんですが・・・」と口ごもるヒゲハゲ先生。
「ください!」(中間試験合格の証であるワッペンをください、の意)と叫んでみたのですが、「あげません」と即答。不合格となりました。他の人はけっこうへたくそでも「ください!」と粘ったら合格していたのに、ちょっと恥ずかしいです。
ああ、これはヒゲハゲ先生がぼくに、「あなたはもっと上を目指しなさい」と言っているのだなと勝手に解釈しました。あなたにとってはオムレツの中間試験に受かってワッペンをもらうことが目的ではない、オムレツを商品として提供することがゴールなんだと。この不合格は、彼からのエールなんだ。そしてまた練習しました。
後日、各科目の期末試験がありました。日本料理の桂むきはもちろん合格。中間試験がなかった中華のチャーハンは、もともとぼくはハッスル級の腕前ですから合格。油断して練習してなかった製菓もなんとか合格でした。
そしてオムレツも・・・見事リベンジ成功!
それも、期末の採点はヒゲハゲ先生ではなく別の先生だったのですが、どうやら中間でヒゲハゲ先生がかなり適当かつ甘々に採点していたのに腹を立てているようで、「よくこんなんで中間受かりましたね!」とみんなビッシビシに斬り捨てられていました。その中で合格したのですから、それなりにちゃんとできていたのではないかと。
これで、新しい店のメニューが一つ決まりました。プロの技の象徴であるオムレツですが、ぼくはまだまだ修行中の身ということがよくわかりました。なので1000円とかはとても取れません。300円くらいですかね。いつかヒゲハゲ先生に来てもらい「合格」のひと言をいただく日まで、メニュー名は「素人オムレツ」でがんばります。
その他、学科の試験もつつがなく終了。こちらは普通にやってれば落ちません。今回は勉強するヒマもありませんでしたが、試験と試験の間の休み時間の20分間だけ勉強して合格とか、そんなもんです。
こうして学校はほぼ全ての過程を終了。残すは身体検査などのわずかな登校日と、卒業式のみとなりました。
おじちゃんの店のほうも。
2月いっぱいで、ぼくは晴れて退職ということになりました。退職といっても、これからも取引する酒屋を紹介してもらったりといろいろ相談することはあるし、もうだいぶ前から独立することは伝えて引継ぎもしていたし、とくに持って帰る私物などもなかったので実にあっさりとしたスムーズなものでした。
実はしばらく書いていなかったのですが、2階の店はここ最近全くお客さんが入っておらず。2月に入ってからは連日売上ゼロ行進、お客さんが入る日のほうが珍しいという散々なありさまでした。ぼくは毎日開店準備をして学校に行き、戻ってくるとお客さんはゼロで、ぼんやりと自分の店の設計図を眺めて12時になると店を閉める、ということの繰り返しでした。
金曜・土曜は少しはお客さんが入るのですが、それもほぼ全てが3階の店に入りきらなかったお客さん。3階の店のメニューで、3階の店の飲み放題を普通にやるようになりました。
どうやらそれがいけなかったような気が、ぼくにはします。3階の店とは違う店作りを目指してスタートしたのに、3階の店の客を入れるようになった。メニューはおじちゃんが作り直し、完全に3階の店と同じものになりました。それまではネットのグルメサイト経由で新規のお客さんがぼちぼち入ってきていたのですが、ぱったりと予約がなくなりました。
しかし、ぼくにはどうこう言う資格はもうありません。ここはもう、完全におじちゃんの店です。おじちゃんが3階の店からの独自路線を捨て完全な2号店として展開していくことを決めたのですから、これから先は彼らが彼らのやり方で店の完成を目指していくことになるのです。
餞別に何かほしいものはないかと聞かれたので、ぼくは「酒燗機をください」と答えました。2階の店は日本酒をたくさん揃えてスタートしたのですがちっとも日本酒は出ず、熱燗にするための小さな酒燗機はいつしかコンセントを抜かれてビニールを被せられて単なる作業台になっていました。「そんなもんでいいの?」とおじちゃんは拍子抜けした様子でしたが、ぼくにとってはそのいらない酒燗機が強力な武器になります。真空調理の最終段階である提供時の加熱を、その酒燗機で行う作戦なのです。ヒゲハゲ先生からも太鼓判をもらったアイデアです。金をかけなくてもアイデアで勝負。最後におじちゃんにもらった酒燗機は、ぼくにとって最高の卒業証書です。
こうしてぼくは、学校もほぼ終わり、仕事もなくなり、久しぶりに全くの何もない状態になりました。久しぶりというか、会社を辞めてぶらぶらしていたころとは今は違いますね。これから自分の仕事を始めるための準備をしていくのですから、生まれて初めてフリーで生活していく人間になったというわけです。
とはいえフリーというのは難しいもので、ノルマも期限もないから何から手をつけていいかわからない。まずは手始めに部屋を片付けていて、源泉徴収票をまとめて去年の確定申告をしてみたら、還付金がなんと11万にもなることがわかり、鼻を膨らませて確定申告書を投函しました。フリーっていいなあ!(違う。)あと念願のジョイフル本田に店の床材を探しに行ったりもしました。でもそれ以外は数日間、ぼんやりとしてしまいました。
ただ、おじちゃんの店では元旦以外1日の休みもなかったものですから、本当に久しぶりに一日中ぼんやりとテレビを見たりして、いい骨休めになりました。
そろそろ休みは終わり。これから4月のオープンへ向け、全てを自分の店のために専念する夢のような1ヶ月間が始まります。夢か、地獄か、まだわかりませんけど。いよいよ始まります。
去年も見に行った、学校の卒業制作の作品展示会がありました。2回目ともなると感動は薄めで、あれは料理ではなく完全に図工だなあというのが第一の感想です。というか去年も感動というよりむしろ爆笑しながら回っていたわけですが、今年は去年ほど笑える作品もなくイマイチでした。
ただ、クラスの何人かが作品を出展していて、それぞれに力のこもった作品で印象的でした。ぼくら夜間生は卒業制作もみそっ子扱いで参加しなくてもOKなのですが、一部の人が参加していたのです。中には賞を取った人までいました。すばらしい。
あとビッグマウス・バン・ベイダーが参加したのにウケた。参加者は申込書に「出身校」を書く欄があって、これまでに「東大医学部に飛び級で入ったけど血を見るのがいやで中退した」「オックスフォードの名門のほうに留学していた」「劇団四季にいた」「ディズニーランドでミッキーマウスの中に入っていた」などと数々の妄想を口走っていた彼が出身校をなんと書いてくるのかみんな興味津々でした。彼は、「東大とかは、どうすればいいのかな?」と言いながら、今回は「東洋大学・大学院卒」という中途半端な経歴詐称を繰り広げてクラス中の苦笑を呼びました。つーか出身校の欄で、どうすればいいのかなもクソもねーだろ。んで、出展作品の目録を見ると彼の作品のタイトルが「美・健康」。彼は推定100キロのデブですから最も縁遠いジャンルで、これまたウケました。そしてオチもきっちり。彼は作品を提出せずにばっくれたようで、彼の作品スペースは名前とタイトルを書いた札が裏返しに置いてあるだけの空っぽでした。期待以上の出来、すばらしい。
それはさておき、ぼくも出展すればよかったかな、卒業制作。ほとんど料理とは関係のない発表会なんだけど、小学校のころは学芸会の展示とかもけっこう好きだったし。こういうイベントごとには目がないのです。けどさすがに今回は時間がなかった。参加した人はみんな一ヶ月くらい前から準備していたようです。
でも彼らが卒業制作どうするという話で休み時間なんかに盛り上がっているのを尻目に、ぼくは自分の店の設計図を睨んでいたんだ。自分の店というのは、これ以上ない卒業制作じゃないか。設計図を出展してもいいくらいだと思います。引き続きがんばりましょう。
さて店作りのほうですが、いよいよ厨房は本格的にレイアウトが決まってきました。いやもうこれだけいろんな機器がホントよく入ったなあと自分でも感心です。
必要な機器とスペースの兼ね合いもさることながら、店の営業許可を得るには保健所の検査をクリアしないといけません。これが微妙にクセモノで、検査をクリアするために必ず設置しないといけないものがいくつかあるのです。例えば収納棚には必ず戸をつけないといけません。ネズミとかが入らないようにするためです。また厨房と客席を隔てる扉を設ける必要があります。実際にはどの店も、収納棚の戸は開けっ放しで営業していたり、検査のときは厨房の出入り口にスイングドアがあっても邪魔なので外して営業していたりするのですが。でもとにかく、営業許可を得る最初の段階ではそれらの項目を満たしていないといけません。スイングドアは、設計業者の見積で3万くらいしたので蝶番を買ってきて自分でつけることにしました。
そして最大の難関が、手洗いシンクでした。すべからく飲食店は手洗い専用のシンクを設けないとなりません。飲食店で働いていたことのある人は、食器洗い用のシンクとは別にトイレの洗面所みたいな白い洗面器があるのを見たことがあるでしょう。それがその手洗いシンクで、通称L5シンクといいます。(L5という大きさの規格だから。)ひょっとすると、その白い洗面器は全く使われずに単なる物置き場みたいになっていて、いらないなら付けなければいいのにと思ったことがあるかもしれません。でもそのL5シンクは保健所の命令でしかたなく設置されているのです。
うちも、L5シンクのことを考えなければわりとすんなりと厨房のレイアウトは決まります。でもL5シンクを置かないと営業許可がもらえない。単なる手洗いシンクなのに、400×330×800とかのサイズでスペースをけっこう食います。よしんば後で取り外しちゃうとしても、最初に設置するスペースすらありません。そこで考えに考えた結果、L5シンクはなんと作業台の下に置くことにしました。
作業台の下に置くというのは、それはすなわち営業許可をもらうためだけで実際には使わないと宣言しているようなものです。厨房屋も内装業者も口をそろえて「それはちょっとマズいんじゃないですかね」と言いました。しかし他に置くところないんだからしょうがないでしょ!
このまえ実際に、図面を持って保健所に殴りこみに行きました。これこれこういう物件で、他に置くところがないから手洗いシンクは作業台の下に置きます!と。保健所の担当の人は、勢いに飲まれたか、L5シンクを作業台の下に設置するという苦肉の策をOKしてくれました。営業許可ゲットへ向け一歩前進でございます。こうやって事前に相談しておくと、実際の申請のときにわりとスムーズに許可をもらえるそうです。
こうして、日々ギリギリのところで設計を行っているわけです。
そうそう、ギリギリといえば、うちの厨房の秘密兵器である例のパコジェットという機械。どうやらぼくの店に入るパコジェットは、なんと「日本で最後の一台」のようなのです。
もともとパコジェットについて知ったのは去年の暮れくらい。真空調理について調べているときに、同じように新しい機械を使った調理技術ということで興味を持ちました。食材を冷凍させた状態でミキサーにかけて粉砕するという機械で、スイスの精密機器メーカーが作っています。デザートも、スープの仕込みも一瞬でこなせます。
えらく使えそうなので、いざ自分で店をやることになってもちろんパコジェットを導入しようと考えました。しかし真空調理よりももっとマイナーな調理法なので、情報はないし厨房屋さんも知らないしでとても苦労しました。
なぜかネットで探してもあまり情報がない。取り扱っている通販サイトもあるのですが売り切れだったりします。そこで、日本でパコジェットの輸入をしているメーカーの担当者をヒゲハゲ先生に紹介してもらったところ、衝撃の事実が発覚しました。なんと日本には、もうパコジェットが輸入されていないとのこと!なんでも輸出元がいきなり価格を大幅につりあげてきたらしく、日本での売値を倍くらいにしないと採算が合わなくなってしまったそうなのです。いきなり売値を倍にすることもできず、日本では事実上すべての輸入代理店が撤退してしまったのです。
慌てて、ネットでパコジェットを扱っているところにかたっぱしから問い合わせをしました。どこも「在庫がありません」という中・・・ようやく1社、あと9台だけ在庫を持っているという会社を見つけました!そこで急いで注文して(正確にはその会社を厨房屋に紹介して間に入ってもらって)なんとか確保したのです。
それが1ヶ月前くらいのこと。当時はありとあらゆる代理店に問い合わせて、ぼくはたぶん日本で一番パコジェットに詳しい人間でしたね。
先日、パコジェットを注文した業者からキャンセルはないかの確認の電話が来ました。聞くと、わずかにあったその会社の在庫も底を尽き、売約済みのまま1台だけ残っているので他の担当者が虎視眈々と狙っているのだそうです。間違いなく買うのでそのまま取っておいてください、と重ねて言っておきました。
もともと年に数えるほどしか売れない商品だったのですが、輸入停止を受けてあるレストランチェーンが買い占めたりして、最後はあっという間になくなったそうです。「ほかの会社でももうどこにもないみたいで、問い合わせがすごいんですよ」とのこと。ほかの会社にもないということは、ひょっとして、ぼくが押さえた1台が日本で最後のパコジェットですか・・・?「ええ、たぶんそうだと思いますよ」。うーん、なんだか運命的なものを感じます。
ま、「日本で一番パコジェットに詳しい人間」といっても詳しいのはパコジェットの流通についてであって、使ったことはないのですが。正直なところ、さて何つくろって感じでもあります。
厨房のレイアウトも固まってきたことですし、機械が届くまでにも、ぼちぼちメニューを考えていこうと思っております。
内装のイメージは、ほぼ固まってきました。レイアウトが決まり、置くテーブルやイスについても検討が進んでいます。ちょっとだけお教えしますと、「白がベースで差し色に黒といろんな色、素材でいうとステンレス」です。
つってもちっともわかんないですね。こればっかりは見てもらわないとわからない。そして見てもらうためには、いま現在はぼくの頭の中だけにあるものをどれだけ忠実に再現できるかにかかっているのです。
イメージしているとおりに普通にやると、さくっと300万くらいかかってしまうので、それをいかに安く仕上げるかが焦点です。かといってケチりすぎると安っぽくなったり、下手に自作すると危険が生じたりするし。難しいところです。
ここしばらく、ハンズやホームセンターに通いまくって店を自作するためのアイテムを探して情報収集につとめました。ホームセンターはドイト、カインズホーム、そしてジョイフル本田と3軒も回りました。しかも全て電車で。ホームセンターに電車で行くというのは、ラブホテルに自転車で行くのと同じくらい無理がありますよ。なにせ遠い。ジョイフル本田なんて電車賃が片道1300円、印西牧の原駅ですからね。印西って何?パキスタン?そしてサイトの地図では駅前に見えても、その地図はあくまで車で行くためのもので、歩くとどこも駅から軽く10分はかかります。しかも周りに何もないので逆に道に迷います。そして、そこまでしてホームセンターに行っても見るだけで帰ってくるのですから、ラブホテルの例えでいったら相当な徒労感です。
それはさておき、おかげでかなりDIY関連の情報は集まってきました。
壁と天井は自分でなんとかできそうです。ジョイ本で「誰でも簡単!クロスの上からでも塗れる本格漆喰『うま〜くヌレール』」なるものを見つけました。いまの物件は前のテナントが残した安っぽいレンガ柄の壁紙なのですが、それを全部剥がして漆喰で真っ白に塗ります。漆喰なら、きれいに塗れなくて凹凸が残っても逆に味が出るというものです。
床は、タイル貼りにします。フローリングも考えましたが、内装のイメージは「カントリーではなくアーバン」なのです。木目はほとんど使いません。自分でタイルを貼るのは、部屋の隅のタイルを切ったりするのがちょっと大変そうですが、複数種のタイルを組み合わせて色遊びをすることなんかを考えると楽しみでもあります。実はお店のイメージカラー的なものがなんとなく決まっており、それを床に差し入れてみようかなと思っています。
テーブルは自作することにしました。壁とは違いテーブルをDIYでやるのは少し不安もありますが、狭いスペースに合わせてかなり変形のテーブルを置くことにしたので既成のものでは対応しきれないのです。(オーダーすると目が飛び出るくらい高い。)1800×900の天板を買って、カットしてもらって脚を付けます。テーブル脚用に金具の付いた角材が売っていたのでなんとかなるでしょう。天板と脚を組み合わせたらカッティングシートを貼って木目を隠し、できれば天板にはステンレスのシートを貼ります。今回ぼくはステンレスを、客席を彩る重要な素材として位置づけています。前にある家具屋でオールステンレスのテーブルを見て、その近未来的な輝きに魅せられてしまったのです。そのテーブルは7万もしたので手が出ないのですが、ぜひ自分の手で再現したいと思っています。
ステンレスといえば、厨房屋さんの得意分野です。相談したら、テーブルを作るとちょっと高いけど板にステンレスを貼るだけの加工ならわりと安くできることがわかりました。そこで2200×400の板をステンレスで包んでもらい、それをカウンターにすることにしました。クールで、しかも厨房屋さんに頼むのでリースに繰り入れることもできて一石二鳥です。
ステンレスばっかりだとちょっと冷たい感じもするので、照明やイスの色で温かみを出すつもりです。イスはぜんぶ違う色にします。10席ですから10色ですね。家具屋を見て回ったり通販サイトで生地見本を取り寄せたりして、それだけでウキウキします。
壁と天井が真っ白で、ところどころにステンレス。イスをポップでカラフルに。配色は、まだ内緒ですが、どうやらワカレミチとはだいぶ違った感じになりそうですよ。
厨房は、早くから取り組んだおかげでほぼ決定です。仕上げに、こんな感じでレイアウトをエクセルで自作して厨房屋さんに送りました。左から、厨房の平面図・厨房後列の立面図・厨房前列の断面図です。

これを見た厨房屋さんは、感心しながらも、「ここまで自分でやる人は初めてです」と若干引いていました。もはやオタクの域です。しかし限られたスペースにぎゅうぎゅうに物を詰め込むので、実際の寸法を縮尺して図面にしないとちゃんと収まるかどうかわからなかったのです。
そして、きっちり収まった。狭いながらも使い勝手のいい厨房です。(頭の中では。)
こうした作業は部屋を作るみたいでとても楽しい。そう、内装は、ちょっとしたおしゃれ部屋みたいな感じにできればいいなと思っています。イメージがどんどん膨らんでいきます。
ただ問題は、レイアウトができても、内装の見積がまだまだ予算オーバー。2社に見積を依頼したところ、図ったように同じような金額で上がってきて、ぶっちゃけ50万くらい足が出ています。そっちのほうは膨らんじゃ困るんだけどなあ・・・。
なんとか予算内で仕上げようと、いま四方八方手を尽くしています。まだまだ時間はあると思ったけど、3月末に着工のつもりなので、そろそろ業者を決めないといけない時期が近づいてきます。頭の中のイメージと現実の予算の折り合いを上手につけてくれる業者さんを探すのが、目下のところの最重要項目のひとつでございます。
メニュー作りにはある程度セオリーのようなものがあり、本を見ればいろいろと書いてあります。ロバート先生にも相談しました。10席ならフードメニューは全部で40品くらいが普通で、固定のグランドメニューが20、週替わりまたは月替わりのメニューが10、日替わりが10といったところだそうです。40品の内訳は、サラダ(のようなもの)、肉や魚など焼いたもの、酒のつまみになるようなもの、食事になるもの、デザート、そしてその店の技術がウリになるようなもの(通常は手の込んだソースなど)で、それぞれ5〜7品ずつバランスよく配置するとよい、とのことです。なるほど、思い出してみるとどこのレストランもそんな風な構成になっているような気がしますね。
それをふまえて、まずはぼく風にメニュー作りのコンセプトを整理しました。
サラダ系・たんぱく質系・つまみ系・炭水化物系・デザート系でバランスよくというのは全く異議なしです。中でもデザートは重視しようと思っています。基本的に事前に仕込んでおけるものだという利点もあるし、最後にもう1品で客単価を上げるという意味もあるし、デザートだけでも満足できるカフェ的な要素があると近くの人にしょっちゅう足を運んでもえると思うんです。
技術をウリにするもの・・・というのは、正直ぼくには技術はないのですが、うちの場合は真空調理を使った料理やパコジェットやエスプーマを使ったデザートというのがそのへんにあたりますね。それと、技術とは少し違いますが、ワカレミチでおなじみの料理というのも同じような分類として組み込みたいと思っています。オムレツもやるし、APことアッシュ・パルマンティエ(略すとHP)とか食べたいでしょ?
かといって、ラーメンとかチャーハンとか鯉の洗いをやってるといったい何屋だかわからなくなってしまうので、少なくともグランドメニュー上では「イタリアン系洋風ダイニング」という雰囲気を崩さないように配慮するつもりです。その前提から離れるメニューは日替わりとか、あるいはサイト内だけで宣伝する裏メニューとしてご提供するかもしれません。(そうそう、たまに「ラーメンナイト」をやります。その日だけはメニューは完全にラーメン屋です。チャーハンとか餃子とかピータン豆腐とかです。)
それから素材は、「ちょっとだけいいもの」を使おうと思っています。
むかし魚屋でバイトしていてつくづく感じたのですが、「高い素材はうまい」。同じ素材、例えばタイでも1キロ1000円くらいのものから2万くらいのものまで大きく値段の幅があって、食べ比べると如実に味が違います。そして値段の高い店ほど高い素材を使っています。だから高い店はうまいのです。だって、寿司屋なんかは身もふたもない言い方をすれば魚を切って乗っけてるだけですからね。原価をうんとかけるのがおいしいものを出すための絶対条件なのです。当たり前すぎてなんだかがっかりした覚えがあります。
でもこれは忘れてはいけないことです。おいしいものを作ろうとしたら、いい食材を使うこと。みんなに気軽に来てもらうためにはバカみたいに超高級食材ばかり使っているわけにはいかないのですが、でもせっかく食べにきてもらうのだから少しは「おいしい!」と喜んでほしい。だからちょっとだけ、みんながスーパーでいつもの食事を作るときよりはちょっとだけ高級な食材を使って料理を作ろうと思います。前に働いていたイタリアンレストランで使っていた契約農家とか、日経レストランの記事で見たブランド卵の農家なんかに連絡してカタログを取り寄せたりしています。サンプルをくれるところもあって、それを使ってみると確かにうまい!ちょっとだけ高いのですが、そのぶんちょっとだけ幸せになれます。
とはいえ、ただやみくもに原価をかければいいというものでもありません。原価をかけるべき食材を絞らないと経営が成り立ちません。
魚屋で働いていてもうひとつ役に立ったのは、「キロあたりいくら」と換算して把握する考え方です。スーパーで魚を買うときは「1匹いくら」と考えることが多いのですが、業務用の魚の取引で1匹いくらと考えることはなくすべて「1キロいくら」で表記されます。
魚だけでなく他の食材も「キロいくら」で把握してみると、お得な食材とそうでないものがはっきりとわかります。例えば卵は、いわゆるブランド卵でも1キロ1000円はしませんから意外とお得と考えることができます。卵は高いものを選んでもいいポイントというふうにいえるんじゃないでしょうか。
魚はあんまりお得じゃないですね。高級なのはキロ1万以上。しかも、いわゆる「歩留まり」が悪い。仕入れた食材の全部が使えるわけではなく、頭と骨を取ったら半分くらいになってしまうのです。さらに「足が速い」(すぐ品質が落ちる)し。というわけでうちではあまりお魚さんには頼りません。だったら同じ高級食材でもキロ6000円とかで歩留まりのよいフォアグラとかに軍配が上がります。(ただし輸入禁止。)
また自家製の加工食品を使うのも、原価をかけずにおいしいものを出すための方法のひとつだと思います。パンチェッタとかアンチョビなんかは、買うととても高い。普通のスーパーで売っているやつでもキロあたりだと3000円とかします。そこで以前から自作してきたのですが、これが意外と手間もかからずおいしいんですよ。もちろん本場の超高級品なんかには及びもつかないのでしょうが、ちょっといい肉を使えばスーパーで売っているやつよりは全然うまい。「ちょっとだけいいもの」というコンセプトにぴったりです。
あと忘れてはいけないのは、「手間がかからないこと」。従業員はほかにいません。調理もドリンクも会計も洗い物も全部一人でやる必要があります。それはとても難しいことであり、調理の手間を減らすためになるべく仕込みで準備しておけるメニューを揃えないといけません。そのために真空調理や食器洗浄機を導入するのです。そして可能な限り時間を余らせてみんなと話をするのです。(これ重要。)
たぶん1つのオーダーごとに調理にかけてよい時間は、(再加熱の時間など手がかからないところを除いて)3分といったところなんじゃないでしょうか。ひとつの料理に5分かかりっきりになるとすると、その間に入ったドリンクオーダーは5分待たせることになってしまいます。ドリンクで5分待ったら、ぼくならイライラします。
ロスを出さないように食材を組み合わせてメニューを作るといったことはもちろんですが、うちの場合は「最終調理は3分以内」、これがメニュー選びの絶対条件になります。
一人でやるということの絡みで、お通し制度を導入しようと思います。店員としても客としても、最初の一品が出てくるまでの時間というのは非常に気まずいもの。仕込み済みですぐに出せるお通しがあれば、ファーストドリンクを出してから最初の一品を作るまでの時間がかせげてお互いに安心です。
個人的にはチャージがある店というのは好きではないのですが、現実的にはお通しで自動的に加算される数百円というのは客単価を考えるうえですさまじく強力な武器です。もちろん単なる柿ピーとかではなく、数百円取られても満足していただけるようなものをお出しします。惣菜系とデザート系から選べるような形式にしようかなとか、ここだけは思いっきり和の惣菜でもたまにはいいかなとか、いろいろ検討しています。
こういった基本方針に基づいて、メニューを考えているまっ最中。まずは思いついたものはかたっぱしから挙げてみて、それからバランスや食材の絡みを考えて選択していきます。
セオリーがあるしコンセプトははっきりしているので楽といえば楽ですが、今までに食べたことのあるもの・作ったことのあるもの・見たことのあるもの全てから引っ張り出してくることになるので、それには膨大な手間がかかります。幸運なことにというか運悪くというか、昔からぼくはレシピ本の類が大好きで、買ったり借りたりで資料だけなら売るほどあります。さらには学校での1年半の実習ノートもたいへんな量で、ルーズリーフを縦に並べると東京タワー2本分くらいになります。(縦に並べず重ねろ。)今まで実習レシピをまとめるまとめると言い続けてきたのですが、けっきょくやらなかったツケがやっぱり今きております。
それになにより、考えてるうちに腹がへってくるので、メニュー作りはなかなか進まないのですよ・・・。
ごちそうさまがききたくて、というよりはむしろ、メニューに早くケリをつけていただきますが言いたいです。
なんだかちょっと印象的な夢を見ました。
家の近くで寝転んで、見上げると青い空がすごく広い。その中に一本高い金属の塔があり、高いなあ、なんだこれ、と思ったらどうやらクレーンのよう。あの下で何か作っているのかしら。それにしても大きなクレーン。ずいぶん高いビルになりそうだ。
と、目覚めたときに覚えていたのはそれだけで、あとのストーリーはさっぱり忘れた。
でもなんか、その広い青い空と高いクレーンだけは非常に印象的でした。なんとなく、縁起のよさそうな夢じゃないですか。
そこで、ふと思いついた。そうだ、占いに行こう!
ぼくは占いがけっこう好きです。これまでもけっこう占い日記を書いてきました。ぼくは信じたいことだけ信じて都合の悪いことは気にせず、かといって「死神きちゃうよ」と言われて心当たりがあれば自制して、ハマりすぎず真摯に受け止める占い向きの性格といってよいでしょう。
悪いことは気にしないので、開店にあたって日取りやら風水なんかはちっとも考慮しておらず、そんなことに気を回すより自分が努力するのが先だろうと思うのですが、でも周りからはやたらとそういうのも考えたほうがいいと言われたりもします。そう言われて気にしてみると、店内に神社のお札を貼っていたりする店はけっこう多い。商売をやるにあたっては、みんなすごく縁起担ぎをするものみたいです。
そこで何気なくいつもの死神きちゃうよ先生のスケジュールをネットで調べてみたら、たまたま空いているじゃないですか。思いつきですが、さっそく予約して行ってみました。
この前行ったのは7ヶ月前。今回が3回目で、少しはぼくのことを覚えてくれたようでした。「どんなご相談ですか」という彼女の決まり文句に「こんど店をやることになりまして」と答えると、「・・・あら、ずいぶん早いわね」。占い師でも見通せなかった展開の速さというわけです。たしかに前回も、「店をやるのは向いているけれど、向こう3〜4年は力を蓄える時」というようなことを言われました。
生年月日から何やら計算し、「準備万端整えてやるというより、走りながら準備するタイプみたいですね」。ええその通り。これまでもあてもなく会社やめたりしてきました。「準備万端というわけではないからこのタイミングで始めるのは難しくもあるけれど、これから運気は上向いていくいい時期だと思いますよ」。よっしゃー!「・・・でも最初の3年は、大成功というわけにはいかないかも。つぶれなければいいやというくらいの心構えが必要です」。あちゃー。でも、こちらもそのつもりです。そしてワタクシの大ブレイクは、3年後の2009年と大決定!(←こういうプラス思考が占いを受けるコツかと。)
それから、店を開けるにあたっての縁起担ぎポイントをいろいろ聞いてみました。
オープン日は?いちおう4月の20日が30歳の誕生日なので、20日オープンにしようかなーってなんとなく考えているんですけど。「・・・あら、その日はすごくいい日取りです。うん、オススメ」。
あと、あれ、イメージカラーというか。ちょうどイスとかを選んでいる最中なんで。「・・・水ですね。水色とか、白とか。水のイメージ」。・・・まじっすか!実は、店のイメージカラーはズバリ水色!この前もちょっと書いたけど、白の中に差し色として黒といろんな色を配色しようと思っていて、中でも中心は水色にしようと思っていたのです。青空の夢も、それを暗示していたのかもしれません。ホントはみんなに来てもらうまで内緒にしようと思ってたんだけど、どうせ新しいサイトができたらバレるし教えちゃう。
「それと・・・ポイントは豪華さ。あなたの性質は豪華と堅実さが両方存在するところが特徴です。店をやるからって変にケチりすぎてはダメ。大盤振る舞いするくらいの豪華さを持ち合わせていないと」。あーやっぱり。料理の原価率は40%で決まりですね。「豪華さを出すために、貴金属的な装飾があるといいでしょう」。貴金属・・・内装にステンレスをいくつか配置しようと思っているんですが。「ステンレス?いいですね、ピッタリです」。
とまあこんな具合で、これまでなんとなく考えていたことが占いの面からも次々と裏づけされていきました。やっぱり、俺様には四天王が付いているわけですから、占いなんかに頼らなくても必然的に俺様の選ぶ日、選ぶ色が正解なんですよ!(←こういうプラス思考が以下略。)
あと、営業が始まってから運気をあげるコツは「床を掃除すること」ですって。そんなんでいいの?って感じです。でも運気というものは平均を50とすると、いきなり80とかにできるわけではなく、51をキープして少しずつ上向けていくものなんですって。小さなことからコツコツと、ということでしょうか。
しかし、これまで4月20日オープンと言っていたのはすごく漠然としたイメージであって、その日はまだ遠かったし確定でもなかった。けどその日がだんだん実際に近づいてきて、さらに占いでもゴーサインが出されてしまって。いよいよ4月20日が締め切りとして具体的なものになってきた。そう思うととたんにプレッシャーも大きくなってきて・・・胃が痛い・・・・。
とたんにマイナス思考にもなってきますが、ぼくには四天王がついているんだ。頼むぞ四天王、まずは床の掃除から。
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