ところで、万事OK問題なしとはいかない事情のもうひとつに、9月中に短期バイトをけっこう詰め込んでしまっていた、というのもあります。学校が休みだし、10月には学費の支払いがあるし、退職間際の最後の追い込みのつもりだったのです。
まあ入れてしまったバイトはキャンセルするわけにはいかないし、学費の支払いもあるのは事実なのでしょうがない働きますよ。というわけで土日も短期バイトがあったり、平日は@昼に新しい店でバイト→Aいまの勤務先に戻って残務処理→B夜まで居酒屋でバイト、てなことになりちょっとキツいです。新章、正直キツいです。
というわけで、今週末もバイト。
単発バイトでコンサートの会場設営と会場整理をやりました。業界用語で言うところの「仕本」です。つまり「仕込み+本番」のこと。荷物運び的な肉体労働をして会場を作り、そのあとスーツに着替えて何もなかったかのように会場整理をします。(さらにその後会場の撤収作業まで加わると「仕本撤」となります。)
まず登録している派遣バイトに「なんか仕事ないっすかー」と電話して、「厚生年金会館でコトコのコンサートがあります」と言われるところから始まります。
・・・コトコ?知らんなあ。
でもまあ厚生年金会館は家から近いし、一日フルで働ける仕事だったので、なんの気なしに仕事を入れました。
コトコというからには女性でしょう。厚生年金会館という会場の渋さも加わり、ぼくのなかでは勝手に平原綾香的なしっとりとした女性ボーカルの像ができあがっていました。
で、朝から集合してまずは肉体労働です。
コンサートの会場設営は初めてだったのですが、これはなかなか興味深い。まずは到着したでっかいトラックからたくさんの機材を下ろして会場内に運ぶところから始まります。会場が用意しているのは文字通り箱だけ。楽器はもちろん、照明からセットからアンプから、果てはスモーク用の炭酸ガスのボンベからメンバーのお気に入りのイスにいたるまで、全てはツアー用のトラックに積み込まれて会場に持ち込まれるのです。決してメジャーとはいえないアーティストでこれか、スケールでかいなあ、と口をあんぐりして見ていました。
で、そのセットやら照明やらを組み立てます。例により労働力は余り目に準備されており、人手が必要な作業になると「おーい、バイト!10人こい!」とか言われて借り出されてワッと片付けます。それ以外の時間は基本的にボーっとしています。
ところが今回は、ぼくの仕事ぶりが会場設営のチーフ的な人に気に入られてしまい、ほかの人がボーっとしている中でぼくはその人のそばにぴったりつかされて休みなくあれやこれやと命じられてしまいました。
これがキツい。でっかい鉄骨を組み立てて、上からクレーンでスピーカーを吊り下げます。クレーンといってもクレーン車が会場内に入れるわけはなく、テコの原理で手動でくるくる回してチェーンを巻き上げる器械です。スピーカーは、重さ1トンはあろうかという巨大なもの。それを手動のクレーンで吊り上げる。ふう、けっこう重いな、と思っていると、吊り上げたスピーカーの下にチーフがカチャカチャと次のスピーカーをセットします。で上げる。上げたらもう一個セット。上げる。セット。・・・5個くっつけました。なんかの事故でチェーンが切れたら即死だな、と思いながら、宙に浮かぶ巨大なスピーカーの下で、息も絶え絶えクレーンのハンドルを回し続けたのです。まったく、今週末はボルダリングに行けないなと残念に思っていたのですが、思いもよらずいい筋トレになりましたよ。
といっても今回はそれ以外はあまり肉体労働系ではありませんでした。
会場の設営が終わると、あとはラクチンです。ステージの掃除をしたりとか、裏でチラシを折り込んだりとかです。
あとは「シュート」といって、組み立てた照明の調整にけっこう時間をかけます。ぼくらがメンバーの立ち位置に立たされてダミーになり、無数の照明をその位置にきちんと当たるように綿密に調整するのです。そこでぼくはギターになりました。
設営しているあいだはそれどころではなかったのですが、完成したステージに立ちスポットライトを浴びて客席を眺めると・・・気持ちいいなあ!決して大きな箱ではないと思ったのですが、こうして見るとかなりの広さです。笑っていいともに出演したときの恍惚が蘇ります。
隣を見ると、コトコのダミーになった出っ歯の若者も恍惚しているようです。なぜかマイクスタンドを掴んでいます。
ぼくもギタリスト気分で、満員のオーディエンスに向かってギターソロを奏でているところを想像します。無数の照明が当たります。ステージに映ったぼくの影は、暑いのでタオルを頭に巻いていたため・・・まるでチャゲだ!ぼくはチャゲだ!SAYイエース!!
・・・それでいいのか?
実際はそんな妄想に浸りながらぼけーっと立っているだけです。
とまあそんな感じで会場ができあがります。スーツに着替え、会場整理です。開場を前に簡単な配置図や関係者パスが配られ、そこで初めてコトコなる人が「KOTOKO」と表記されることを知りました。そしてミーティングがあり、KOTOKOとは「ゲームの音楽の主題歌とかを歌っている人」だということを知りました。
・・・ってことは、客は、オタク?
果たして開場の時間になり、入り口前に並んだ人だかりを場内から眺めると、そこは週末の秋葉原の改札そのものでした。開場と同時に入り口扉が開かれ、おしよせるオタクたち。酸っぱい匂いがしました。誇張ではなく。まいったなあ。
そして開演。よりによって、客席最前列でロープを張って客がステージに近づかないようにするという絶好のポジションをゲットしてしまいました。
客は9割、男。しかもオタク。女がいると思ったら間違ったゴスロリだったり腕に無数の切り傷があったり、かなりイタいです。
コンサートは、暗転からほどなく何語だかよくわからないSEが入り「カウントダウン」と告げられ、機械的な音が「テン、ナイン・・・」と鳴り響いて始まりました。オタクライブってどんな盛り上がりかたなんだろと興味深く思っていたのですが、そのときは意外と静かでした。まあ厚生年金会館って大きさもイスもちょうど映画館みたいな感じ。オールスタンディングのライブハウスとかとは違ってみんな座って静かに観るのかな、と一瞬思ったのですが・・・。
「ファイブ」あたりでだれかが「ゥヒョウッ!」と叫びました。
それを合図に、2000人のオタクたちが一斉に立ち上がり、「ヌゥオオオオオ!!!!」と雄叫びをあげました。
「ゼロ」
そしてライブはスタート。総立ちのオタク。みな手にペンライトを持ち、どうやらお決まりのペンライトの振り方などがあるらしく、サビでは激しく、スローに転調すればスローに、一心不乱に振り乱れます。彼らが飛び跳ね、地面が揺れます。ぼくが張っているロープを、破らんくらいの勢いです。
オープニングから3曲くらい続けて歌い、KOTOKOが「みんなー、元気ー?」と叫びました。
「ヌゥオオオオオ!!!!」
と歓声があがります。オタクの雄叫びです。かんべんしてよー。
KOTOKOは「みんなに元気をもらってるんだよー!」とお決まりのMCをします。するとヌゥオオオオオ!
かんべんしてよー。
ところが。
コンサートが進み、KOTOKOさんの「みんなー!新しいシングルが4月の21日に・・・違った、10月の13日に発売されまーす!」といったすっとぼけたMCを聞いているうちに・・・ぼくもだんだんKOTOKOさんに惹かれてきていたのです。
そして、オタクは、元気だ。
考えてみると、彼らは物販とかバンバン買うのです。今回のコンサートも追加公演があるらしく、KOTOKOがMCでそのことを話すとあちこちから「明日も行くよー!!」の声。金持ってんなあ。
決して身なりに気をつかっているふうはない彼らですが、金は持っています。そして使います。言ってみれば選択と集中です。日本の景気を、底上げしています。えらいぞオタク。
そして行儀はいいです。PRIDEの会場整理のときのバイトと違い、「下がってください!」と制止すれば素直に従います。えらいぞオタク。
そして、ロープを突き破らんばかりの熱気。みな思い思いの姿でKOTOKOに一心に声援を送っているのです。そして生まれる会場の一体感。アーティストとファンの心のふれあい。ちょっと感動しました
ぼくはなんだか、終わるころにはすっかりKOTOKOファンになり、そしてぼくもばっちりオタクに元気をもらったのであります。
さあいよいよ新バイト初日!
といっても実は、初出勤は日曜日でした。週末はオタクライブを堪能して終わったように書きましたが、それだけではありませんでした。人が足りないのでできたら週末も、ということで、まずは日曜から働いていたのです。2日たちました。
そしてこれからは、毎日じゃないし9月中の期間限定ではありますが、夜の居酒屋バイトも入ります。ぼくはちょっと忙しいです。
が、それにもまして、新しい店は忙しい!11時半オープンで、12時をすぎたころにはどっとお客さんが押し寄せてあっという間に満席になります。行列もできます。そして麺と皿が鬼のように飛び交うこと1時間あまり、13時半をすぎると客足はパッと途絶えます。オフィス街のパスタ屋なので、非常にわかりやすい客の動きです。
とはいえぼくはまだ戦力になっていないので、みなさんお忙しいところすいませんねえって感じでぼんやり洗い物をしているような感じであります。
店は、いい感じです。全部で5人くらいで回しているのでみんな仲がよいです。夜の居酒屋バイトみたいに理不尽に不機嫌な人とか話の通じない中国人とかいません。
ぼくの学校の卒業生も二人います。出身が同じというのはお互いにどこか親近感を感じるもので、学校の話で盛り上がったり、いろいろめんどうをみてくれたりもします。
なにせまだ2日。右も左もわからなくて、日記にしようとしても何をどう書いたらいいかもわからないのですが・・・とにかくいい感じです。
慣れた通勤路が変わるので、原付でどうやって行ったらいちばん近いのかとかもまだよくわかりません。朝は何時ごろに起きたらよくて何時だと遅刻になっちゃうとかのスケジュール感もまだ把握できていません。何から何までわからないことだらけ。
でも「自分の居場所が変わった」ということだけは確実に実感できます。
ぼくは携帯のアラームで目覚めるのですが、いつも同じ時間に平日だけ鳴る設定にしているので毎日寝る前に目覚ましをセットすることはありません。とりあえず1時間、その時間をずらしました。
朝に起きる時間を変える。それって大きな変化だなあ。妙にそう思いました。
もっといろんなことが変わると思います。これからどんなふうになっていくか楽しみです。
今日からしばらくは1日3バイトの日もあります。本日のスケジュールは10時30分からレストラン→15時30分から一転リーマン風→そして17時30分から24時まで居酒屋、でございました。
といってもトータルの労働時間は忙しいサラリーマンと同じ程度のもの。3つとも半端な時間でちゃんとした休憩がもらえなくてキツいですが、でも体を壊すほどのものではないのでご心配なく。
それに、先月も昼と夜をかけもちしていて思ったのですが、同じ長時間でも異なる仕事をやること自体が気分転換になって、1つの仕事で遅くまでやるよりは短く感じる気がします。収入的にはこれまでの仕事でちょと残業したのと同じくらいの稼ぎなのであまり効率がよいとは言えませんが、交通費が二重取りできたり新しい店では4時間あまりの勤務でまかないが二度食べれたり、なにげに助かる点もあります。
が、いよいよ3バイトになってみて、一つ思わぬ問題が発生。異なる職場であっても同じ飲食業を一度にかけもちすると、いろいろと混乱することがあるんです。
前に居酒屋バイトのときにも、「どこも基本はいっしょだから、店ごとに異なるポイントさえ押さえればわりとすぐに働ける」という話をしましたね。ところが2つの店で同時に働くと、その異なるポイントがごっちゃになる。
たとえばダスター。ふきんのことです。飲食店ではテーブルから食器から床や灰皿にいたるまで、あらゆるものを拭くためにダスターがたくさんあります。飲食業経験がなくても、レストランで緑や青やピンクの細かいチェックの薄手のふきんを見たことはあるでしょう。
灰皿と食器を同じもので拭くわけにはいかないので必ず、このダスターは灰皿用・これは食器用と使い分けが決められています。で、その使い分けは色で決まっていることが多いです。
新しい店で3日働いて「青ダスはテーブル用」と染み付いてきたところで、1ヶ月ぶりに居酒屋に戻ってみると青は床とかを拭く用。まったく逆です。ちょっと考えればわかる使い分けですが、とっさの判断でダスターを手に取らないといけないときに一瞬とまどいが生じます。
あとは声の出しかた、返事のしかた。これも前に、店ごとに異なる押さえるべきポイントのひとつとしてあげましたね。これは日常生活レベルで深く染み付いているし考えるより前に口をついてしまうので、ダスターよりもやっかいです。
「失礼いたしました」とか「兄貴」「弟」とかは全国共通なので問題ないのですが、店にはそれぞれ一種独特の言葉の使い方があります。客に声をかけられると「はい喜んでっ!」て言う居酒屋がありますよね。従業員はそういう風に言うように教育され、それが染み付いています。そこには経営者の信念みたいなものが反映されていたりもします。
で、新しい店では従業員間で「ありがとう」と言ってはいけないことになっています。「ありがとうございます」はお客様に対してしか使うことが許されません。他の人が何かしてくれたときには「ありがとうございます」ではなく「すみません」。何かを受け取ったら「もらいます」。その心は、感謝はお客さまに対するもの、従業員は先輩後輩問わず協力関係、という信念なわけです。
こういうのは信念ですから、「ワカレミチ」は「わかれみち」ではないというのと同じでどうでもいい話なのですが、もとからいる人にとっては間違えられると多少違和感を感じます。「ありがとう」なんて日常レベルの反射ですし、ペーペーなので何が起きても「ありがとうございますっ!」とつい言ってします。そして言いすぎると怒られる。ありがとうと言っているのに怒られるという不思議な図式です。
ですから「あり・・・もらいますっ!」とグッとこらえてなんとか対応します。みなさんも、客以外には「ありがとう」を言わずにちょっと仕事してみてください。英語禁止ボウリングなみに困難です。3日経ちますがまだ慣れません。
居酒屋に入ると、こちらはありがとう関連でそういったポリシーはなく普通に「ありがとうございます」を多用します。ちょうどいいのでこちらで練習しようと思って「もらいます」で通してみました。すると・・・ドリンクを運ぶときに「もらいますっ」と言ってひったくっていくのは、それはそれで感じが悪いみたい。ドリンクの人の機嫌が悪くなってきます。
難しいね。
こういう話、大昔にもしたことがあります。
確認してみると、「麺道こってこて」の初期の初期。旧サイトの転送設定がわからなくなってしまったのでラベルつきのリンクを貼ることができませんが、サイトを開設した月の日記です。自分でも懐かしいなあと思いながら下まで読むと、ちょうど4年前にぼくは書いていました。
「普通のことをあえて普通じゃなく表現する飲食店用語は、なんだかにわかには近寄りがたい神秘性を作り出す奥ゆかしい呪文のようで大好きだった。それを使いこなせるようになってやっと一人前になり、そのお店の一員になれたような気がした」
ほんとだね。
そういうところに帰ってきたんだなあ。
早くお店の一員になりたいです。
新生活が始まって6日。一日3バイトはやっぱりキツいけど、気力と体力のどっちかが充実していれば人間なんとか乗り切れるものです。
ただ、まだ前の生活リズムが体に染み付いているのか、それとも緊張しているのか。朝はゆっくり起きてもいいのに意外と早起きしてしまう。眠いのに目が覚めちゃうのです。
でもそのおかげで忙しい中でも日記が書けたり洗濯ができたり店で習ったことの復習ができたり、少しだけ自分の時間が作れています。疲れが取れないけど。
前の仕事の引継ぎも順調です。
何度か説明したようにこれまでぼくが売っていたサービスはほとんどのお客さんにとってまだ予約の段階で、ぼくは予約をとってインセンティブだけもらってサービス提供開始前に退職することになるわけです。提供開始までのフォローをだれかにまかせないといけません。
ただ、もともと本格稼動する前に辞めることは念頭にあったので、これまでも後で引継ぎをすることを前提に仕事をしてきました。お客さんとの折衝経緯はきちんと残してあるし、サービス提供にあたっての問題点、フォローすべき点などもエクセルでまとめてあります。あとはぼくはそれを整理する程度でOK。お客さんに迷惑はかけません。
まあ引き継ぐ人にとっては売上があがっちゃったあとの残りカスの面倒をみないといけないわけで、迷惑以外のなにものでもありません。
引継ぎ関連の業務整理にあたり、ぼくは「地雷」というフォルダを作りました。その中には、予約を取ったはいいけど開通までのフォローがすごくたいへんそうな案件がぎっしり詰まっています。顧客ごとに「地雷除去レーダ」というエクセルのファイルを作ってあって、それを開けると赤い字で「申込書を取ったあとにサービス提供地域外だということが判明したので、謝っておいてください」「申込書、勘で作っただけですのでたぶんここが間違っています。後はよろしくお願いします」とか書いてあります。とにかく、後はよろしくお願いします、です。
それからもちろんお客さんに電話で挨拶。会社員時代にも感じましたが引継ぎの挨拶というのは、卒業式とまでは言わないまでもなかなかにセンチメンタルで感動的なイベントです。これまでさんざん迷惑をかけたお客さんでも、「退職するので担当が替わります」と挨拶すれば「えっ・・・そうなんですか!?お世話になったのに残念です」なんて言ってくれる。
もちろんしっかりとラポールを築けていたお客さんなら、ものすごく残念がってくれます。「次何するんですか?」と聞かれて、小さな声で「実はレストランで働くことになりまして・・・」と打ち明けたら、「食べに行くから、メールで店の場所教えてくれよ」なんて言ってくれた人もいます。そういうのはちょっと涙が出そうになります。
引継ぎの挨拶というのは、お客さんにとって自分がやってきた仕事は意味があったんだなあと実感させてくれるいい機会です。
ところで15日は給料日だったのです。
申込書が山をなすほど契約を取ったので、今月はさぞやガッポリもらえるだろうと思っていました。ちょっと前に「インセンティブが入ったらうなぎを食べるんだい」とか言っていましたね。契約を取って即インセンティブが発生というわけではなく、いろんな事務処理を経て振り込まれるので少し遅れます。7月の歳末大売出しの結果は8月の給与には全く反映されていませんでした。でもさすがにそろそろもらえるはずです。インセンティブだけで10万は下らない、順調にいけば15万くらいはいくだろう、これで10月の学費の支払いをするぞ!という皮算用だったのですが・・・。
給与明細を見てびっくり。
インセンティブ3万。
慌ててボーンヘッドさんに言うと、「あ、そうですか?派遣先からの振込が遅れているんですかねえ」。ですかねえって。インセンティブはお前の会社の収益なんだぞ。その一部をぼくらがもらってるだけなんだぞ。なんで知らないの?なんでそんなに悠然としているの?
いちおう9月末の退職後も、9月勤務分の給与が10月にもらえるのはもちろんのこと、遅れて振り込まれるインセンティブのために11月までは給与の振込みがあることになっています。遅れるとしてもなぜ遅れているのか、いつ処理が終わっていつ振り込まれるのか、確認してくださいとまくしたてたのですが。アイツ確認なんてしないだろうな。
退職を待たずに店で働くのを許可してもらってるのに自分の小遣いのことだけギャアギャア言うのもなんだか心苦しいし、ぼくもあんまり強く言えません。ていうか半分、あきれ果ててどうでもよくなってきました。ほんとにおかしな職場だったよ。
でも、結局もらえなかったらどうしよう。学費どうしよう。皮算用とはいっても「取らぬ狸の」ではなくて、ちゃんと取ったのに。
自分がやってきた仕事は意味がなかったのかもしれません・・・。
新しい生活が軌道に乗るまでは、これまでのようにワカレミチを頻繁に更新できないかもしれません。日記を2日空けるのは心苦しいので今日こそは書こうと思ってPCを開けると、いつの間にか前の日記から3日経っていたりします。
新しい生活が軌道に乗るとは、9月中に引継ぎを終え新しい店に慣れ3バイトに耐え、10月に学費の支払いがありそのために少々カードローンに頼り、11月くらいに借金も返して資金繰りも安定して店にも馴染む。そんな感じです。
とくに資金繰り。もらえると思っていたインセンティブがまだもらえていないおかげで非常に苦しいです。さっき実際に計算してみて「10月危機」という言葉が脳裏をよぎりました。
新しい店の給与の支払いが25日締めの当月末払いと非常にスピーディーなため(飲食業は総じて給与支払いサイトが短い。日銭が入る業種のため。たぶん。)いま働いているぶんが9月末にもらえて思わぬ収入が発生するのはよいのですが、時給も低いしインセンティブの不足分をカバーするには至りません。そして10月始めにはドカンと学費の支払い。カードローン確定です。
10月15日には前職の給料の支払いがあり、そこでようやくインセンティブが入る・・・のかなあ?入れば早期返済で利息もわずかですみますが、もしそこでも入らなかったら・・・・。
なーんてことを考えていると、実際にお店を出したらこんな感じなのかな、とも少し想像します。すべからく事業というものは、他人に頼る融資なしには成り立たず、そうすると手元資金と返済額と収入と支出を見比べての資金繰りが必要。車か家でも買わなきゃサラリーマンには味わえないスリル。そう思うと、まだ事業は興しちゃいませんがなんだかこの自転車操業状態もちょっぴり楽しくなってもきます。
が、ということはぼくの人生この先ずっと自転車操業か、と思うと、とたんに複雑な気分です。
まあいいや、たとえインセンティブが入らなくとも、カードローンの早期返済ができなくて利息がかさむだけ。かさむといっても1万円にもならずに、働いていればじきに返せます。人生の倒産には至りません。自転車ならこげばいいのだ。
で、新しい店のこととか。いい感じです。同じ時間働いても、自分のモチベーションでずいぶん違って感じるんだなあということを実感しています。
具体的には、平日の3バイトは@店で4時間→A前の仕事の引継ぎで4時間→B居酒屋で4時間、という感じのスケジュールなのですが、Aはこの前書いたようにお客さんとの心の交流もあるし、何より新生活へ向けての後片付けなので日に日に足取りと肩の荷が軽くなっていきます。そして@は、後で書きますがとにかく楽しい。あっという間に昼間の時間は過ぎていきます。でもBがねえ。同じ4時間でもこうも違うかというくらい長くキツく感じます。しかしまあ生活のため、あとわずかの間だけ歯をくいしばってジョッキを運ぶのでございます。
9月中は、平日だけでなく土日もどっちかで通し(オープンからクローズまで)をやります。10時に店に行き、夜11時に出るという感じです。前の仕事でいったら、9時からだから夜10時までか・・・。無理無理。前は5時まででも退屈でしかたなかったんです。でも今は一日あっという間です。
さてお店は、オフィス街なので平日昼間はむっちゃ忙しいです。なので昼だけ入っているぼくはなかなか仕事を教わるヒマもない。
でも、びっくりしたのはみんな教え方がすごく上手で、仕事に無駄がないことです。初日に一番最初に店に入ったときにやったのがオープン前にお冷やのグラスを用意することだったのですが、言われるままにグラスを並べ水のポットと氷のバケツを用意したところ、「水と氷の位置は逆のほうがいい、なぜなら氷を入れて水を注ぐときにこっちのほうが手の動きが少なくてすむだろ」と社長が言いました。それを聞いてぼくは、ああこの人は仕事のできる人だな、と思いました。
ぼくは学生時代にハンバーガー屋で長くバイトをしており、晩年にはクルーリーダーという教える側の役職にもついていました。そのときぼくが思ったのは、ダメな仕事のやりかた・教え方とは「線形的であること」「最短距離でないこと」。
例えば、新しい店で初日にウーロン茶の作り方を教わりました。
ウーロン茶を作るなら、ダメな例は@お湯を用意して→A茶葉を空き缶に入れて→Bお湯を注ぎ→Cフタをして蒸らして→Dタイマーで5分→Eそしたら手つきザルにキッチンペーパーを敷いて別の缶に漉して→F氷で冷やしてポットに入れる、という具合にダラダラとやること・教えることです。
そりゃあ仕事を全部順番に並べるとそうなんですが、そう教わって次に一人でそれをやると絶対に忘れています。あっちこっちうろうろしながらやって、キッチンペーパーなんてまず忘れますね。慣れてきたって、そういう意識で仕事をしていると最後の最後で「あれ?ザルないじゃん?やべ洗わなきゃ!」なんてなって無駄が生じて仕事のクオリティも落ちます。
一方で、できる仕事のやりかた・教え方とは、「ウーロン茶を作るときはウーロン茶セット、まず空き缶を2つとタイマーとザルとペーパーとポットを用意!で茶葉がここ!蒸らし5分!」。最初に仕事の全体像を見せて、それから各論に入ります。そうすれば覚えやすいし、仕事にミスとロスがなくなります。新しい店では、ばっちりそれを教えてくれます。
そんな調子で、何をするにしても「こういう理由でこれをやる」「無駄を省くためにこう動く」という原理原則や方針がしっかりとあり、それを教えてくれるからすごくやりやすいです。社長だけでなく、ほかの人もみんなそうです。それはたぶん社長からそういう教育を受けてきたからだと思います。新人には入社して日の浅い人が教えてくれることが多いのですが、そういうときには幹部の人がそばで聞き耳を立てていて、どこかに無駄や漏れがあればすかさずフォローして教えた人に対しても知識を補います。そうしてみんな成長しているのです。
ウーロン茶だの氷だの、どうでもいいことですが、そんなところにこそあらゆる仕事の本質が垣間見えます。原理・原則・総論・方針、そういうものがしっかりとある。居酒屋バイトで何も教えてもらえないままにぼくが経験値で本能的に仕事をしているのや、ボーンヘッドさんがボーンヘッドなのとはえらい違いです。だから働いていて楽しいし、仕事も覚えられます。
そして、上でウーロン茶の作り方を例に取りましたが、新しい店ではウーロン茶を発注せずに店で作るのです。その心は「そのほうが52円安い」。これには感心しました。細かい金額は教えてくれませんでしたが、外から買うといくらで、店で作ると人件費込みでいくらだからというところまで計算しているのです。アイスコーヒーも自家製です。水の一滴・洗剤のひと泡まで無駄に流させてくれません。徹底したコスト意識。
これまでコスト意識がすっぽり抜け落ちているような会社でばっかり働いていたので新鮮でしたし、ガムシロまで作ってみるぼくのスタイルにぴったり合っています。そういえば、店ではもちろんパンチェッタも自家製です。早く作り方を教わりたいです。
あとは、人間関係。実はぼくはそれがちょっと不安でした。それは雇う店側も同じだったんじゃないかと思います。
ぼくはこれまで昼の仕事で、お客さんに電話をするときと営業事務の人に仕事を依頼するとき以外はずっとしかめっつらでPCの画面に向かっていました。最初のころこそ少しはみんなと仲良くしていたのですが、みんなが余りに能天気でイライラするし、あたりさわりがないから退屈で、話をするのも面倒になってきたのです。だからみんなのぼくに対するイメージというのは、「売上だけはあげるけど、付き合いの悪い嫌なやつ」というところだと思います。
話をするのも面倒というのは誇張ではなく、途中からは食堂にも一人で行くようになりました。夜は学校があるし、一日のうちで一人になれる貴重な時間だったのです。高橋がなりが「学生時代は周りの人間と話が通じなくて、いまに見てろビッグになってお前らを雇ってやるとずっと言って変人扱いされてた」みたいなことをブログかなんかで書いていましたが、なんだかその気持ちがわかりました。
ぼくももちろん一人の食堂で虎視眈々と仕事の段取りとか人生の設計とか日記のネタとかを考えていたのですが、でも反面では仲良く食事をして仕事中もおしゃべりをしたり、わからないことがあれば足りない頭を寄せ合ったり、飲みに行ったり卓球に行ったりしている他の人をうらやましく思ってもいました。
いや、うらやましいのとは違うな、うらやましくはないです。それより自分は、もう一生ありとあらゆる組織では生活できないんじゃないか、という不安がありました。
組織に馴染めず会社を辞めた。組織に頼らず自分を磨けばいいやと精進してきたつもりだし、一人でもそれなりに成果をあげることができるようになってきた気もするけれど、でも次にやるべき「店で修行する」というステップにおいてはどうか。一から修行する身、そんな態度は許されません。年下にアゴで使われたり理不尽に怒られたりすることになります。やれんのか。
雇う店側としても、いきなり門を叩いてきた29歳大学卒を受け入れていいものかと躊躇したのは想像にかたくありません。面接でも「周りは若い子ばっかだけど、大丈夫?」と聞かれました。そして実際に、ぼくは一度不採用になっています。
周りは若い人ばかり。そして学歴がらみのキャリアは全く関係のない世界です。大卒はもちろんのこと、調理師学校卒業見込みとか調理師免許取得予定とかいうのも、現場での仕事には実はたいした意味を持ちません。むしろ挫折したり和を乱す可能性のほうが高いと思われても不思議はありません。
が、そんなのは心配ご無用でした。
みんないい人ばっか。
社長は面接のときに「うちの社員は入社が早いからといって偉そうな態度をするやつはいないから、みんなさん付けで呼んでくれると思うし」と言っていましたが、その通りでした。同じ店に同じ学校の卒業生が2人いるというのもよかった。
みんなはみんなで、29歳で学歴アリの人がバイトで入ってくるというのでどんな堅物だろうと興味津々ではあったと思んです。でもぼくはそういう過去の栄光的なキャリアは何の役にも立たないことはわかっているつもりだし肩書きはむしろキライなので、みんなが抱くであろう堅いイメージの真逆をいくように努めて振舞いました。
それこそ、出勤はできるだけおしゃれに。下ネタにも食いつく。いいとも選手権3日勝ち抜きなど、溜め込んだネタは惜しげなく披露。そして仕事はきっちり。
あらゆるネタに貪欲に食いついて必要以上に広げているうちに「ロリコンでドSでバイの気もあり秋葉原に入り浸りメイド喫茶に通い大食いゆえに痛風でプロレスオタクで得意技はシャイニング式オナニー」という、得体の知れないキャラになりつつありますが・・・。
でもそんな話をしながらみんなで笑いながら仕事のできる、楽しい店です。3連休は休みが1日だけで2日通しをやったのですが、閉店後に社長のおごりで焼肉を食べに行きました。そしてたらふく飲んで食ってみんなで店に泊まりました。朝起きて、帰ってシャワーだけ浴びてまた戻って一日働きました。
なかなか時間はありませんが、でも楽しい。疲れるけれども元気です。またご報告いたします。
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