試験中に携帯が震えました。
ポケットから取り出してディスプレイを見ると、姉Aからの着信。試験中なのでもちろん出ることはできません。しばらくして切れ、携帯はまた震えました。
ふだん連絡のない家族から電話があるというのは、かなり不吉な感じがします。すわ、だれか死んだか!?
試験が終わり休み時間になり、慌てて折り返しました。
もしもし?なんかあった?
すると・・・。
「ちょっと聞いてようちのお母さん勘違いもはなはだしい人なのは知ってるでしょいま姉Bの部屋がお父さんのパソコン部屋だけど姉Bが寝てるときにお父さんが気を使ってなるべく背を向けるようにしてるのを無視してるとか言ったりお父さんが部屋を出ていくべきだとか言ってるらしいのよちょっと何とか言ってやってくれない」
・・・ハァ?
どうやら、うちの姉Bがむかし使っていた部屋はいま父の書斎のようになっているのですが、姉Bは実家に戻ってきてニートを満喫しており、そうすると父がパソコンをやっている後ろで姉Bが生活するという奇妙な風景になっているようで、父は父なりに気を使っているのに母は逆に父が姉Bにつらくあたっていると言っている、とかそんな話みたいです。
というか姉Aは姉Bのことが嫌いで、いい年こいてろくにGDPに貢献しない姉Bを母が甘やかすのが気に食わないんだと思います。
えっと、いま学校の休み時間なんで、後でかけなおしてもいい?
と遮って、電話を切りました。
学校が終わって電話をすると、コール音もなくいきなり姉が出て、また話し始めました。
「それでねお父さんは最近いい意味で丸くなったと思うんだけどお母さんはますますおかしくてお母さんの妹で小さいとき死んじゃった人がいるでしょその人が成仏できなくて助けを求めるのよでもお母さんは頼れないから私のところにつきまとうのわたし霊感あるじゃないでも頼られても無理だからだいいちお母さん先祖の供養のしかたがメチャクチャで神棚にあげる葉っぱを仏壇にそなえたりするのよ」
・・・もはや翻訳不能。
どうやら酔っているようです。
先祖の霊とかそういう話が、姉は大好きです。
「でもお父さんの実家もおかしいのよみんなウソばっかでこれまで姪の存在を認めもしようとしなかったのにとつぜん手の平を返したようにかわいがりだしてどうやらうちの兄弟もいとこも役に立たないから姪に養ってもらおうと考えてるんじゃないのあんたも気をつけなさいよあの家からはいきなりぜんぜん知らないわけわかんない話が来るわよ」
・・・いま、ぜんぜん知らないわけわかんない話をされているわけだが。
ぼくはまじめな相談か何かかとも思っていちおうメモを用意していたのですが拍子抜けして、日記のネタくらいにはなるかなあとぼんやり聞きました。
が、いまこうしてメモを見直して書き起こしても、まったく意味わからん。
ときどきぼくがうちの実家の話を書くと、読んでるみんなは「不思議な家族だなあ」と思ってるんだろうなと思うのですが、書いてるぼくがいちばん思います。不思議な家族だなあ。
姉Aは酔うとこういう話を際限なく話します。そういうときは、意味がわからなくても聞き流していればいいのです。全部しゃべったらすっきりして、そして次の日になったらきれいさっぱり忘れています。
すべて話し終わって気がすんだのか、姉Aは思い出したように言いました。
「わたしいま夏休みで銀座で友だちの店手伝って働いてんのあんた飲みにきなさいよアーリーハーパー山崎あたりだったら飲み放題よ」
・・・山崎。何年?
いちおう聞いてみました。
「12年よ決まってるじゃない。べつに普通の店だし普通のカッコだし、こんど飲みにきなさいよ」
ここへきて初めて会話が成立しました。
やっぱ12年だよね。うん、ヒマができたらね、ぼくはそう言って電話を切りました。
電車が走る音を、みなさんはなんと表現しますか。
「ガタンゴトーン ガタンゴトーン ガタンゴトーン」
というのが一般的だと思います。
ところが我が家では代々、
「デデンデデーン デデンデデーン デデンデデーン」
という擬音が用いられていました。
「ガタンゴトン」というのは、実際には「ガタン」と「ゴトン」の間に明確な差異があるわけでなく、電車の走る音の表現としては不適当なのです。
一方このデデン式、世間ではごく少数派ですが、でもこんど踏み切りの通過待ちのときなどにデデンデデーンとつぶやいてみてください。妙にしっくりくることがおわかりいただけることと思います。
とくに最後の「デデン」で終わるあたりが秀逸です。
***
うちの近くでお祭りをやっているようで、買い物に出かけたらおみこしをかついだ若者の集団に遭遇しました。
下北沢の駅前におみこし、という図は少々奇妙なのですが、そこはシモキタのおみこし。他とはちょっと違う若者テイストでした。
というのもかけ声が、普通は「ワッショイ、ワッショイ」とかですよね。
でもそのおみこしは、先頭でかけ声をかける人が
say ホー
するとみんなが
ホー
以下同様に、
say ホー
ホー
say ホッホー
ホッホー
say ホッホッホー
ホッホッホー
now scream!
ワー!!!
と、ヒップホップなおみこしなのでした。
というのはウソです。ホーホー言いながらかついでいたのは本当ですが。駅前のおみこしは通行の妨げになってじゃまでした。
携帯電話の着信で目が覚めました。ディスプレイを見ると、この前バイトの面接を受けたレストランの社長です。慌てて電話を取ります。
こういうのは、スポーツニュースの野球の試合と同じで、話の流れで途中で結果がわかる。社長は「この前の面接の結果です」と話し始め、「各店舗にバイトの空きがあるか聞いてみたんですが・・・」と続けて、ぼくはその「が」のトーンで全ての結果を知ることになります。
不合格。うえーん。
昼は人手が足りているそうです。「夜なら働けるけど、どう?」とは言われましたが、夜は学校なのでどうにもなりません。
「昼に欠員が出たら声かけるし、社員なら引き続き考えるから、卒業のときにまだ働きたいと思ってくれるなら2月か3月ごろにまた電話してよ」と言われました。
まあ、2月か3月のことはぼくにもわかりません。
残念ながら今回は、ご縁がなかったというわけです。
ここで落ち込んでいてもしょうがないので、次のアクションです。
もともと10月からのバイト先として考えていたのには2つのパターンがありました。
@家の近くとかの小さな店で、自分で食べてみていいなと思うところに飛び込んでみる
Aグローバルダイニング系とかの大手チェーンのレストランで働く
@は、いい勉強になりそう。やっぱり働くなら自分が好きな店がよいでしょう。というわけで今回も、まず自分が好きな店に行って「バイト雇ってますか」といきなり聞いてみたわけです。ただ今回のように、人手は十分足りていて働けない可能性も大。そして総じて給料は低めです。
Aは、いろんな意味で働きやすい。常に働き口があります。時給もどちらかといえば高いです。しかも明確にキッチン採用があり、@のようにまずはホールでしばらく経験を積んで次に火を使わない調理に入り・・・といった回り道を取らずにすみます。ファミレスのようなセントラルキッチン方式ではなくちゃんと自分の店で作っているところを選べば、役に立つことは必ずあるでしょう。
@にするかAにするか、そこでもらえる給料と生活費のやりくりなんかもよく考えて結論を出そうと思っていたのですが、その前に思いがけず@タイプのバイトの面接がトントン拍子に進んでしまっていたところでした。
しかしそこではご縁がなかったわけで、じゃあ次いってみよう!
ということで、こんどはAタイプで検討してみます。
ネットで検索すること5分。
「お手ごろ価格で本格イタリアン」的な有名チェーンの本店に、電話をかけてみました。
「キッチンのバイトの募集って、してますか?」
「はい、やってますよー」
で、月曜に面接を受けることになりました。まあ、求人募集を通さずにいきなりアポを入れるのは@と同じです。
月曜の、ディナーの開始前の面接なので、いまの昼のバイトは早退しないといけないのですが、そうそう仮病を使うわけにもいかず。まあいいやもう退職間近だから堂々と「次のバイトの面接です」って言って早退しちゃおうっと。
***
あと土曜日はそのほかに、原付のパンク修理をしに自転車屋に行ったり、酔っ払ってメガネをなくしたのでメガネ屋に行ったり、洗濯をしたり、ヤフーのブリーフケースに書きとめてあった日記をアップしたり、実習の試験の練習のために生クリームとアジを買いにいったり、いろいろやった気がするのですが、でも考えてみると9月3日という日をぼくは6時間くらいしか起きていなかった。残り18時間はずーっと寝ていました。試験の間の土曜日というのはそういうものです。
2年次期末試験。学科はこれまですべてつつがなく終わり、残すは金曜・月曜の実習の試験のみとなっていました。学科はだれでもほとんど一夜漬けで満点に近い点数をとれる程度の難易度なのですが、実習はそうはいきません。中間試験でもビッシビシ落とされているのです。中間より基準は甘くなるとはいえ、いつも半分くらいの人が落ちて再試を受けるそうです。練習しなきゃ!
まず金曜日が、西洋と中華。個人的にはどちらかというと得意とするジャンルです。しかし、西洋がじゃがいものシャトー・たまねぎのみじん切り、中華がきゅうりの千切り・しょうがのみじん切り・ねぎのみじん切り。2教科5種目・・・多いよ!
本当は夏休みに練習しときゃなんてことはなかったのですが、夏休みは夜もバイトばかりしていて夏休みどころじゃなかった。ふだんの食事は家で作っていましたが、学校の包丁ケースは一度も開けていませんでした。そこできのう慌ててじゃがいもからねぎまで全部で1000円ばかし買いこんで、一夜漬けということになりました。
とはいえ野菜5種類1000円分って目の前にするとかなり多いです。練習するより前に、嫌気がさしてきてやる気が出ません。やはり人はプレッシャーのかかるイベントの前にはセルフハンディキャップに走ってしまうわけです。
それどころか、セルフで無意識に不利な状況に追い込まれるくらいならむしろ意識して追い込んでやる!とか変な意地も芽生えてきて、木曜夜はけっきょく12時くらいまで一心不乱にテレビを観てました。
そして日付が変わり、試験当日を迎えたころ。
・・・さすがにやばいな。そろそろやるか?
というわけで、ようやく練習スタート。
そこから切って切って切りまくり。
ふだんの実習ならもちろん切ったものをすべて使って料理をします。食材をムダなく使う、これが学校の教えでもあります。家で練習するときもなるべくそうするのですが、これだけいろいろあるともうそんなことは言っていられません。
切ったものをボウルで受けるとかではなく、三角コーナーで受ける。つまり切ったそばから、捨てる。
しょうが・ねぎ・たまねぎあたりはみじん切りの状態で冷凍しておけば後で使い道がありそうなので取っておきますが、じゃがいもは前回シャトーの練習をしたときにゆでて冷凍したやつがまだ残っているし、きゅうりは冷凍もきかなそうだし、イモガミさまとウリガミさまに怒られそうだなーと思いながら心を鬼にして捨てまくりました。
・・・そしてきゅうり3本・じゃがいも6個・しょうが2個・ねぎ3本・たまねぎ3個をすべて切り終えたときには、すでに夜は白み始めているのでした。
てな感じで実習試験1日目はなんとか乗り切りました。2日目は月曜日、土日をはさんでみっちり練習・・・するはずはなく、やはり直前に慌ててやります。
月曜の試験は日本料理と製菓。アジの三枚おろしとクリームの絞りです。
まあアジは前にさんざんやったんでだいじょうぶでしょう。とりあえず小ぶりのものを8尾購入してちゃっちゃとおろします。
しかし、あいにくアジチョビの在庫はまだあるうえに次チョビの座をイワシが塩漬けの状態で狙っているので、おろしたアジは例により次から次へと捨てます。アジガミさまに怒られます。
クリームのほうは、買ってきた生クリームが家のバーミックスでうまくホイップできず。なんでも植物性の生クリーム、しかも内側に銀紙の貼ってある長期保存可能のやつはホイップに不向きなんだそうな。はてどうしよう、これからまた別の生クリームを買いにいくのもめんどうだし・・・。
と、そこで思いついたのが、「マヨネーズを使おう!」。
クリームではなくマヨネーズを絞り袋に詰め、絞りの練習をします。

硬さも材質もちょうどクリームに近いかんじで、かなりよい練習になります。これは大発明!
色だってほら、カスタードクリームみたいでおいしそう。
・・・ただ、においは・・・・すごくマヨネーズ。部屋中にマヨネーズの匂いがたちこめて、だんだん気分が悪くなってきます。
生クリームのお菓子作りなら手についたクリームをちょっと舐めて、というのも楽しいものですが、マヨネーズの絞りの練習でそれをやっているとコレステロール過多です。
だんだん暖まってきてゆるくなるので氷水にあてて冷やしたりと、生クリームと同じようにめんどうをみてあげないといけないのがムカつきます。
練習を終えてまな板と袋のマヨネーズを洗い流すころには、手も部屋も絞り袋も、ほんのりとマヨネーズの香りがしみついているのでした。
これは、マヨガミさまのたたりか。
てなわけで駆け足で練習し、2日間の実習試験は終了しました。これで試験日程は全て終了、晴れて3年生に進級です。
といっても、再試験がなければの話。
学科も実習も、成績が悪い科目があれば、再試をくらいます。発表は明日、水曜日。ぜんぶ受かっていればめでたく秋休みに突入ですが、落ちていればまた勉強もしくは練習です。
学科はまず大丈夫だと思うんですが、実習はどうでしょう。1回目はふつうにクラスの半分くらいが落ちるそうです。それが4教科ですから、ぜんぶ1回で受かる確率は2分の1の4乗で16分の1。というのはあまりに単純な計算ですが。でも実習のほうはどうだか正直わかりません。
これ以上食べ物をムダにしないためにも、なんとか受かっていることを祈ります・・・。
少し前に、「運命は、回すと決めさえすればぐるぐると回りだす」ということを書きました。その後です。その後というか、その最中。
最初に面接を受けたお店は、いいお店でとても働きたいところだったのですが、残念ながら今回はご縁がなかったということになりました。でもそこの社長は「卒業するときにまだ働きたいと思うならまたおいで」と言ってくれました。昼のバイトという意味では取り急ぎの需要はなかったのですが、ちょうどぼちぼち社員をひとり募集しようと思ってはいたところだそうで、それも急ぎではないのでぼくの卒業を待ってもいい、とまで言ってくれました。すごくゆるい約束ではありますが、内々々定くらいな感じです。
もともと好きな店でしたし、社長と話をしてさらに好印象を持ったので、実は4月以降のことはまだあんまり考えてなかったのですが、もし雇ってくれるならそこで社員として修行をしてもいいなあとまでぼくは思っていたのです。
が、とりあえず目先のこと。いまのバイトは9月で業務終了です。10月からの働き口を見つけないといけません。第二志望として、別の店の面接にも行きました。
そこももともと狙っていた店ではあったのですが、でも第一志望の店の後で、しかも第一志望をもっと気に入ってしまった後の面接となると、どうにも気合が乗りません。ちょうど10月に一人辞める人がいて空きができるというこれまたグッドタイミングだったのですが、でも入れて週3〜4日とのことでした。それは困るなあ。
そしてもしそこもダメなら、また別の店を探さないといけません。自分のイメージとは離れて、100席くらいあるようなもっと大きい店、いつも豊富に求人があるようなところに行かないといけないかもしれません。そうなると、中村紀洋の言葉を借りれば「罰ゲーム」のような、そんな雰囲気すら漂ってきます。
と、思っていたら。
昨日、携帯が鳴りました。第一希望の店の社長からです。
「突然社員がひとり倒れちゃって・・・まだバイト決まってないならウチで働いてくれない?」
運命の急転直下キター!!!
はいっそりゃあもうっ喜んでっ。
どうやら、ひとりギックリ腰かなんかでひとり動けなくなってしまったみたいです。
さしあたっての需要はない、ということだったのですが、そのさしあたっての需要ができてしまったというわけ。久しぶりに俺様のスタンド「ラッキー」発動!遠隔操作型で人ひとりくらいギックリ腰に追い込むぜ!
・・・あれ、ところで・・・・10月からでいいんですか?
いまのバイトは9月末までの契約です。
社長にももちろん言いました。
「あれ?そうだっけ?(電話のむこうでヒソヒソ話。)・・・すぐにってわけにはいかない?」
そりゃそうです。今日倒れてしまった人の代わりを探しているという話ですから。10月になりゃたぶん治っています。いきなり怪しくなる雲行き。
あのーいちおう今の勤務先に、早めに業務終了ってことにしてもらえないか聞いてみますよ。
降って湧いたチャンスですから逃すわけにはいかず、勝手にそう言ってみました。
「そうしてみて!キミが無理なら緊急で社員の募集をかけないといけないから!」
・・・と、いうことは。
@さしあたってのバイトの必要はないが、そのうち社員を増やすつもりではいた
Aぼくが働きたいというので、その募集はとりあえずペンディングにした
Bでも社員に急遽欠員が出たので、ぼくが働ける枠ができた
Cでもでもぼくがすぐに働けないなら、社員の募集を前倒しして欠員の補充をしないといけない
つまり、ここでぼくがその欠員を埋めることができないと、いまバイトで働けない云々の話だけでなく、社員が一人増えて、ギックリ腰さんはそのうち復帰して、ぼくがゆるーくもらっていた内々々定枠はなくなってしまうということ!
うわー困った!
何度も言うように、いまの仕事は9月いっぱい。それは契約です。履行しなければいけません。それ以前に、退職するにあたっての引継ぎ等もまだ終わっていません。いきなり辞めたいと言っても、雇い主が素直に首を縦に振るわけがないし、ぼくとしても今のお客さんに迷惑をかけることになります。
でも!このチャンスを逃すと!
「チャンスの神様は前髪しかないんだぜ」
無理を承知で、いまのバイトのマネージャーに相談しました。すぐに!すぐに辞めさせてください!
「そりゃあ無理です」とボーンヘッドさん。
そりゃあ無理です。わかってます。そこをなんとか無理を承知で!
いままで文句ひとつ言わずに働いてきたでしょう!低迷するボンクラ軍団の売上の3分の1を稼いできたりもしたでしょう!
・・・文句ひとつ言わず、というのはウソですが。でも売上の3分の1を稼いだこともあるのは本当です。貢献してきたはずです。最後にもうひとつだけ、わがままを聞いてくれ〜!
即答ができない、というのがボーンヘッドさんのボーンヘッドたるゆえん。派遣先とも相談しないと回答はできない、ということで話は終わり、彼は本社に戻っていきました。
困った困った。社長からは「いつから働けるか、少なくともいつから働けるかいつわかるか、それだけでも早急に回答をほしい」と言われました。それ次第ではペンディングにしていた社員の募集に動かないといけない、というわけです。
ここでぼくが取るべき選択肢は2つ。
@ボーンヘッドさんの決断を素直に待ち、社長もぼくのことを待ってくれることを祈る
A見切り発車で「来週から働けます!」とか先に社長に言っちゃって、それからボーンヘッドさんをなんとかやりこめる
早く辞められなければ希望の店では働けない。かといって退職時期を早めるのはいまの勤務先といまのお客さんに迷惑をかける。早めに辞めさせてくれとか騒いでけっきょく雇ってもらえなかったら単にいろんなところに迷惑をかけただけになる。どう転ぶにしても大バクチだ!
困ったので、本当に困ったので、筋違いだとは思いながらも、派遣先の社員の人に相談しちゃいました。派遣先には、ぼくら派遣社員をとりまとめる担当の女性社員がいます。彼女の会社とぼくらとの間には直接の雇用関係はないのでこういう話をするのは筋違いというかむしろルール違反です。でも、これこれこういう状況ですぐにも辞めたいんです、あしたうちのボーンヘッドさんからこういう相談があると思いますが、どうか、どうか何も言わずに首を縦に振ってください!涙ながらに訴えました。
すると彼女は言いました。
「あら、素晴らしいじゃない、それはぜひやったほうがいいわよ。後のことはまかせて夢のためにがんばりなさい」
彼女は、年のころは40すぎでしょうか。おばさんです。身なりは・・・そうですね引田天功みたいな感じです。
でもぼくは思いました。
抱 か れ て も い い
それを受けて、うちのボーンヘッドさんとの間には何も握りはできていないのですが、ぼくは大バクチに出ました。社長の携帯に電話をしました。留守電でした。チャンスの神様の見えない前髪に向かって、ぼくは勝手にしゃべりました。
「どうやら来週アタマにはそちらで働けそうです。早ければ金曜日には行けそうです。ご連絡お待ちしております!!!」
ってな感じ。
そして連絡待ち。
これがいまの状況です。
実はけっこう仕事そのものがトラブル連発で忙しくて、そんなことやってる場合ではない感じだったのですが、でもこんな感じでした。
そんなドタバタを終えて学校に向かうため足早に高層ビルを後にして、原付に乗ろうとすると、とんでもない状態でした。
きょうは朝は雨が降っていなかったので原付で来たのですが、昼間すごい雨でしたね。窓に雨が吹き付けて外が全く見えないくらいでした。
帰るころには雨はやんでいたのですが、後部シートの横にぶら下げていたはずのヘルメットが風であおられてシートの上に乗っていました。前輪の下には、どっかから飛んできた看板がはさまっていました。地面についているはずの前輪の下にぴったりとはさまっているということは、風で前輪が浮いていたのか?
そして左のバックミラーが、ぐりんと曲がっていました。鏡の角度が変わっているとかじゃなくて、鏡のついている根元の棒から曲がっていました。もとに戻すのにはかなりの力がいりました。よっぽどすごい風だったんだな。
というわけでぼくの人生も、大型で強い勢力を保ったままゆっくりと進んでいます。
やめられんのか?今の仕事。働けんのか?希望の店。
どっちの方向に進むかは、いまんとこわかりません。
でもとりあえず言うことは、決めている。
「これだけ無理言って使ってもらうんだから、使いものにならないと申し訳ないですよね、がんばります」
それは今の勤務先に対しても同じ。
がんばります。
俺の人生、ただいま中心気圧985ヘクトパスカル。今後の気象情報にご注意ください。
学校は試験がすべて終わり、成績発表はまだですが、秋休みを前に試験の合否のみが発表されます。最後のホームルームのときに、担任の若先生から出席番号順に「再試票」なるものが配られるというスタイルです。つまり、それを受け取ると「アナタはいついつ何の科目が再試験!」と書いてあり秋休みがつぶれるという恐怖の召集令状なのです。自分の名前が呼ばれると落ちていて、呼ばれずに通り過ぎると合格しているという、アメリカのミスコン方式です。
これがなかなかスリリングなもので、他人の名前が呼ばれて初めて自分の合格がわかるものですからあちこちからワンテンポ遅れた歓声が起きます。逆に名前を呼ばれた人は即アウト、泣き出してしまう人もいます。いつもさんざんエラそうな口を叩いているベイダーは、今回もしっかり落ちていました。
ぼくは出席番号が後ろのほうなので、結果がわかるまでにずいぶんとジラされます。悲鳴・歓声・怒号が渦巻く教室でジリジリとそのときを待ち、ついにぼくのすぐ前の番号の人が呼ばれました。そして・・・。
「・・・メアリーさん」
メアリーさんはぼくの次です。ということは・・・。
受かった〜!
けっきょく、クラスの6割くらいが再試票を受け取っていました。それぞれ何が落ちているかはわからないのですが、やっぱり学科はみんなだいたい受かっていて、ほとんどが実技の試験の落第だそうです。
これでぼくは明日から、再試もなく晴れて秋休みに突入!台風一過だ!
・・・って、違うダロ!
バイトの採用・不採用の結果を今や遅しと待っているわけですよ。
ふと、携帯が震えます。キターッ!?
と思うと電話番号が違う。これは・・・第二希望の店?
いまは第一希望の結果待ちの身。ここは電話を取らずにスルーするのが吉です。
やりすごしているうちに着信は消え、留守電が入っていました。
「えー、先日の面接の結果ですが、採用ということにしたいので連絡ください」
おー、よかった。
・・・でも、お前も違うダロ!
と、これまたジリジリと待っていたところ、ついについに、第一希望の店の社長から、電話が入りました。
こういうのはやはり、話の流れで途中で結果がわかるものです。
いま大丈夫?いろいろバタバタしてごめんね?といった挨拶のあと、社長は話し始めました。
「あのさ、土日も入れる?」
・・・ということは。
「ぜひうちで働いてくれませんか」
やったー!!!!!
さっそくいまのバイトでは、別室にマネージャーのボーンヘッドを呼び出しました。もう、こっちの希望を通してもらうよりほかありません。
「店長さん、いろいろ検討したんですが、結論から言うと来週から抜けるというのは無理です」
何度も言うけどそりゃわかってます!何度も言うけど無理を承知で!!
すると、しばらく考えて彼は言いました。
「じゃあ、最低でも来週はレストランを早めにあがって戻ってきて引継ぎをしてください」
へ?
ということは?
・・・OK!!!!!
拍子抜けするほどあっさりと、彼は許してくれました。
レストランは近いし昼だけの勤務だし、幸い9月いっぱいは秋休みで学校もないのです。ランチが終わったら速攻戻ってきていま持っている仕事の引継ぎをするから、お客さんにだけは迷惑をかけないようにするから、それがぼくが提案していた折衷案でした。それを飲んでくれました。
けっきょく9月末の退職というのは変わりません。でも来週からは、朝はレストランで働き、ランチが終わって2時か3時くらいにあがって大急ぎでいまの職場に戻ってきて、多少残業してでも引継ぎをしていくという、変則シフトをとることになりました。
ついでに、第二希望の店には申し訳ないんですがお断りの連絡を入れました。
なんでしょう、万事うまくいきました。
思えば、きのうの日記が「大嵐」だった時点で、今日の日記のタイトルが「台風一過」になるということは決まっていたのかもしれません。
ぼくは一度不採用になった第一希望の店で働けるかもしれないという可能性が出てきたときからなんとなく、こうなるかもしれないという気はしていました。
いやどちらかというと、こうしなきゃいけない、かな。
チャンスが転がり込んできた。全力で掴みににいかなきゃいけない。全力で掴みにいけば、それはきっと掴める。それが運命ということだろ。そう思って必死に調整して、けっきょく万事うまく行きました。
きのうの高層ビルから眺める空は、夏には珍しく富士山まで見渡せるすばらしい景色だったことはみなさんもご存知でしょう。
拍子抜けするほどあっさりと。台風のあとには晴れになり、そして秋がくるのです。
ワカレミチもちょっぴり新章に突入です。
無事、新しいバイトは働きたい店で働くことができるようになりました。しかし万事OK全く問題なし、とはいかないもので。実際問題、今のバイトは9月いっぱい勤めあげて退職する予定だったのですが、無茶をいってすぐに新しい店で働かせてもらうことに急遽なったわけです。
そこで落としどころとしていまの勤務先に提案したのは@新しい店で朝から働いて→Aランチが終わったら今のバイトに戻ってきて仕事の引継ぎをする、という変則シフトです。幸いなことに店といまのバイトは目と鼻の先、5分くらいで移動できます。しかも学校は9月いっぱい休みでなので、ちょっとくらい残業しても大丈夫です。引継ぎだけは漏れなくやっていけそうです。そして学校が始まる10月にはいまの勤務先も終了となり、@昼間は店で働いて→A夜は学校、という理想的なスケジュールが始まります。
が、それで問題なし、かというとそういうわけでもない。夜は学校があるので、昼は長時間働けません。いまのバイトは勤務時間的に、夜の授業までの空き時間をフルに時給労働に活かせる理想的な環境でした。そして時給も高かった。ですから昼働いて夜学校、というので十分に生活ができていた。しかしこれから働く店では、時給はもちろんいまより安い。そして勤務時間も、飲食店というのはふつう朝が遅めです。そして昼だけ働くいわゆる早番は、だいたい3時あがりくらいが普通です。時給も労働時間も短くなるので、生活は困難になります。
それは前からわかっていたので、バイト探しの段階ではできるだけ入り時間が早くて授業ギリギリまで働ける店を選ぼうと思っていました。もう学費を稼ぐ必要はなくなるし、ある程度長い時間働ければとりあえず生活はできるかなと。
ところがそのへんを深く考える前に好きなお店に顔を出してみたら、思いがけず働けることになってしまった。ここは乗っとけと勢いで決めたのですが、冷静に考えるとそこの勤務時間は10:30〜15:30。入りが早くも上がりが遅くもありません。いくらまかないと実習で食費はほとんどかからないとはいえ、収入的にはかなり厳しい。ていうか無理。
そこでぼくが考えた10月からの生活パターンは、@朝にマックかなんかでバイトして→A10:30からは店→B夜は学校、という3本立てです。マックはまだ面接すら受けてませんが、ああいうところは求人はいつもあるし、朝だけ4時間とかの激短シフトも受け入れてくれるし、年齢に制限もないし、ファーストフードは学生時代にさんざんやったから今すぐにでも戦力になれそうな気がします。
おいおい大丈夫かよ、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。なんせぼくは去年の今ごろ、1日2つバイトをやって金を稼ごうとして挫折した前科がありますからね。
しかしぼくもそのへんは考えています。去年の2バイト、あれは睡眠が一日3時間で週6日だったのです。体力派ではないぼくには少々キツすぎました。
でも今回は、朝マックするとするとたぶん6時から。学校は夜10時まで。家は近いので、速攻帰って寝れば休養十分です。しかもマックも店も、学校にあわせて平日週5日の勤務にします。リーマン育ちのぼくには「週休2日」という生活サイクルがすごくしっくりきます。
無理して朝マックなんてするより土日のどっちかに派遣の単発バイトを入れていって生活費を稼ごうかなとも思ったのですが、それよりも平日少し無理をしてでも週休2日で休んだほうが自分には合っているな、という判断です。それでまだ余裕があればさらに単発バイト入れればいいし。
というわけで基本は平日は3本立て、土日は休み。これで、ある程度の収入と生活と夢と勉強のいいとこどりを狙うことにしました。バイトのあと、学校までには3時間くらい空き時間ができるので、自分の時間もとれます。日記も書けます。
ぼくには計画性が欠けているなあ、と思うこともあります。生活できるかどうかなんて、予め考えてからバイト探せよという話です。そもそも会社を辞めたのだって、なんの考えなしです。学校に入ったのだって行き当たりばったりです。学校に入る前には2バイトでコケたりホストで逃げ帰ったりもしました。全くの無計画です。
でも無計画ではあっても、慎重ではあると思うのです。この2つは同じ性質のようであって少し違う。事前に立てるのが計画性で、事後に対処するのが慎重性です。事前に考えることはあまりせずに飛び込んじゃうけど、そこで起きたことに臨機応変に対処する慎重さは、ぼくにはある気がします。行き当たりばったりで飛び込んだ学校では多くのことを学び、コケた2バイトからは自分の限界を学びました。無計画でも、慎重に考えればそれは必ず次の何かに活かされると思うのです。
実はまだまだ「考えてなかったこと」というのがたくさんあります。たとえば卒業後に社員になるという予定で新しい店に採用されたわけですが、正直言うとそこまでは深く考えてなかった。社員とバイトでは立場が違うので、また違った問題も出てくるでしょう。そもそも客として好きな店ではあったけど、働いてみたらイメージと違う、ということも大いにありうるでしょう。自分がやりたいことがこれから変わってくるということもあるかもしれません。使い物にならないからクビということもないではありません。
そして、もし新しい店での仕事が自分のやりたいことに一致しているとしても、その先どうするか。自分の店を持つという未来に向かっては、どうやって近づくのか。
まだまだ考えないといけないことはたくさんあります。これからじっくり考えます。
事前に考えるのは苦手なのですが、起きたできごとにじっくり考えて的確に対処するのは、得意です。それがぼくの人生であり、ぼくの夢への近づきかたです。
そしてこのサイトは。企画をやったり集客力があるコンテンツがあったりするわけではない。「いつオープンするかもわからない店を待っているほど俺は悠長ではない」なんて感想をいただいたこともある。でも、身の回りで起きたできごとについてよく考えて長々とつづる。少しずつ、どこかに進んでいく。ワカレミチはそんなサイトです。
そんな感じでみなさん、これからも末永くおつきあいいただけるとうれしいです。
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