命日

2005/7/3

このまえコックコートの首に巻く青いチーフにアイロンをかけようとしたら、根元が白く先が黒い、おじいちゃんの髪の毛みたいな細い毛が一本はさまっていた。

それが何か、ぼくにはすぐわかった。うなぎいぬの毛だ。

うなぎいぬの気配は、もうぼくの部屋には残っていないようでいて、どこかにはかすかに漂っていて、そうちょうど髪の毛一本分くらい。ときどきぼくは彼のことを思い出す。



今日はうなぎいぬの命日だったので、ふらりと墓参りに行った。去年はみんなを呼んでぎゃあぎゃあ騒ぎながら葬式をとりおこなったのだが、今年はさすがにみなさんにご迷惑をかけるまでもなく、ひっそりと一人で行った。

一年前の記憶をたどり、電車を降りて少し歩いて駅からほど近いペットの斎場に着いた。そこにウナの墓がある。

その斎場は、去年ぼくらが行ったようなペットの葬式を扱う業者で、ほかにこうして墓参りに来てもいいことになっている。カフェが併設されているそうで、お墓参りのついでに立ち寄って亡くなったペットとの思い出を振り返ってください的なことが、そのときもらったパンフレットに書いてあった。
墓参りだけとはいえむこうも商売なんで、ただ行って帰ってくるだけでは上がったりだろうから、ぼくはそのカフェとやらでコーヒーでも一杯飲んで帰ってくるつもりだった。
が、到着してみると、入り口には「ただいま葬儀セレモニー中につき、30分ほどの間カフェ・ショップの営業は中止いたします」という看板が下がっている。あらら。「ご参拝はどうぞご自由に」とのことなので、自動ドアを開けて勝手に入る。

ウナの墓といっても人間のように個別の墓があるわけではない。そういうコースもあるにはあったが高すぎてかなわんので、合同慰霊碑みたいなやつの下に諸々の動物たちと共に眠っていただいている。まあそこは、実家に預けにいくといつも隣の家の犬を威嚇し実家のネコに牙をむいていたウナのことであるから、それなりにどっしりと眠っていることであろう。
店員もだれもいなくて、勝手がわからない。慰霊碑みたいなのの前に祭壇らしきものがあり、キャンドルが3つあったので置いてあったチャッカマンでとりあえず火をつけてみた。手を合わせ目をつぶり、なんて言ったらいいかちょっと考えた。

元気か?

そう心の中でつぶやいて、ぼくは目を開けた。
すると、ちょうどそのとき奥のほうから係の人が出てきて、声をかけようかどうか困った感じでぼくのほうを見た。ぼくはすっかりコーヒー代を払わずに帰るつもりでいたので、慌ててキャンドルの火を手であおいで消して、けげんな視線を背中に受けながら急いで外へ出た。

滞在時間わずか1分ですよ。


いっしょに暮らしているときも、うなぎいぬとぼくの関係はべったりラブラブというよりはクールな同居人だった。
でもぼくは出かけているとき、いつもウナが元気にしているかどうかをほんの少しだけ気にしていて、家に帰ってウナが動いているのを見るとほんの少しだけほっとした。そしてウナも、ぼくが帰ってくるとハンモックから上半身だけにょろりと出してこっちを見て、そして水でもひと口飲んで、またとぐろを巻いて寝入った。

元気か?それならいいよ。

それが当時も、ぼくらの短いアイコンタクトの間に交されていた挨拶だったように思う。


***


このまえコックコートの首に巻くチーフにアイロンをかけようとしたら、根元が白く先が黒い、おじいちゃんの髪の毛みたいな細い毛が一本はさまっていた。

半月前のことだ。

それを見つけてぼくは、7月3日の日記はぜひそのエピソードから書きはじめようと思った。なかなかいい話じゃないか。

でもいざ書きはじめてみると、仕事中なのにじわじわと涙が出てきて、困った。困ったので、えだまめちゃんの話なんていうくだらない別のネタを書いた。


それはとても素敵なことだ。
残されたものは亡くなったもののことを忘れ、残されたものの毎日を元気に過ごす。亡くなったものの記憶は大切なままに少しだけ残り、残されたのものをいつも少しだけ支えてくれる。

一年前、会社を辞めたぼくの再出発を見届け、いいタイミングでうなぎいぬは死んでいったとぼくは思った。
でも結果的には、彼はちっとも見届けられてなんかいなくて、それから一年の間にもぼくはずいぶんとジタバタして、けっきょく思ってもみないステージにやってきた。七転び八起き。・・・八起きなのかな?転んだままでは?七転八倒のほうが合ってるかな?
けどいま彼に「元気か?」と聞かれれば、一年分成長したぼくは胸を張って言える。

ぼちぼちだな。

そうか、それならいいよと言って、彼はまた眠りにつくだろう。
そしてぼくはまた彼のことを忘れる。
でもほんの少しだけ、髪の毛一本分くらい、ぼくの頭の片隅には彼がいる。
また一年後に会うときに、ぼちぼちだなと言えるだろうかと、そう考えると少しだけ、ほんの少しだけ元気になる。

亡くなったもののことを少しだけ覚えている。一年に一度だけ思い出す。それはとても素敵なことだ。

ナーウ・ゲッタ・ちゃん

2005/7/4

クラスにはやはり飲食業経験者が多いのですが、現場経験が全くない人も意外と多くいます。そして、現場経験があるはずなのに使えない人も、経験はなくても使える人も、やはり意外と多いです。
使える・使えないについても長々と語れそうですが、それはまた別の話。きょうは現場経験のある・ないについて。これは一発で見分けるいい方法があるのです。

「失礼いたしました!」

ものを落としたときにとっさにこう叫んでしまうのは、間違いなく現場経験者です。逆に、現場経験のない人は「ごめんなさい」とは言っても絶対に「失礼いたしました」とは言いません。
アルバイト経験がある人ならわかると思いますが、飲食業を中心とした接客業において従業員は、客の近くでものを落としてしまったときなどにこう叫ぶことになっています。
で、それが体に染み付いているので、店ではなく学校の実習室でも「失礼いたしました」が活用されます。別に実習でなく座学でも、例えばバサッと教科書を落とせば「失礼しました」となんとなく口ずさんでしまうのです。

また自分がものを落としたときだけでなく別の人のせいでも、近くで音がしたら何がなんでも「失礼いたしました」ということになっています。ですから、例えばあなたが刑事さんで重要参考人の取調べをしていて、こいつは飲食業経験者なのではないかと怪んだときには、近くで何かを落としてみるといいでしょう。そして「失礼いたしました」と言ってみて、彼がとっさに「失礼いたしましたっ」と復唱してしまうようなら、そいつはクロです。

そんなシチュエーションはないでしょうから役には立ちませんが。


役には立たないのですが、飲食業経験者の見分け方はもうひとつあります。しかもこれはアルバイト経験者などではなく、かなりのクロウトの判別法です。

それは、食材に「ちゃん」をつけることです。

大学生のバイトのころから、社員の人の中でもいわゆる料理人は、なぜか「エビちゃん」「おいもちゃん」などと言う傾向にあるなあと思っていました。
料理人にはわりと、カマっぽいというかバイセクシャルの気がある人も多いので、そのせいだと思っていました。

しかしふと気づくと、学校の先生もやたらと「エビちゃん」などと言います。
先生がそう言うからつい我々も、実習のノートに「トマトちゃんコンIN」などと走り書きします。トマトをコンカステ(角切り)して入れる、という意味です。コンINなどと略しても、トマトはきちんとちゃん付けです。
料理の世界とは、そういうところです。


ということを、このプロ仕様の枝豆を見て、思いました。



栄光のワッペン

2005/7/5

夜間のクラスは勉強熱心な人が多く、学科の試験があれば100点が続出します。しかしここはあくまで調理師学校、座学だけでなくやはり大事なのは実習です。そして実習にももちろん試験はあり、なんと本日が実技の初めての中間試験なのです!

そこは、熱心(小心ともいう)な夜間生。初めての実技試験を控えてここ数日は、試験科目のシャトーのことでみんなの頭はいっぱい。休み時間の会話といえばシャトーむきの後のじゃがいもの処理の話ばかりでした。(たいてい結論は「ビシソワーズにでもすっか」ということになる。)

もちろんぼくもじゃがいもを一袋買ってきて、この週末はシコシコむきました。
シャトーはじゃがいもを長さ5センチのフットボール状に整形するテクです。じゃがいも1個からだいたい6つのシャトーが取れます。一袋5個入りで、30シャトー。
プロはもっと早くやらないとお話にならないのでしょうが、試験ではいちおう3シャトー5分が最低ラインです。ぼくはも少し早くできますが、それでも30個はかなりの時間。
ひたすら、@じゃがいもを5センチの長さで6等分したやつを→Aむいて→Bシャトーに、の繰り返し・・・。



見よ!Bにずらりと並んだシャトーの列を!
といってもほとんどの人にはそのめんどくささが伝わらないのが悲しいところ。
とにかく、じゃがいも1キロもシコシコむくから大変なのっ。

こうしてできたシャトーの山は、とりえはフットボールの形をしているくらいで使い道はとくにありませんので、終了後にかたっぱしから刻んでAといっしょにします。これまで実習でも家でもさんざんシャトーをやってきましたが、シャトーをシャトーのまま食べたことは一度しかありません。今回もやっぱり刻んで大量のビシソワーズ(じゃがいもの冷製スープ)を作ったのでした。
5個30シャトーでもずいぶんやったなとぼくは思ったのですが、しかし驚くことに、クラスにはこの週末にじゃがいも10袋60個360シャトーをむいたという強者(小心者)もいました。使い道はどうしたかというと、捨てたということです。10袋・・・8キロくらいか?軽く環境破壊です。


さてさて、こうして迎えた中間試験。

着替えて実習室に入ると、黒板には「じゃがいものシャトー」の文字と「玉ねぎのみじん切り」の文字が。中間はシャトーのみと聞いていてシャトーの練習に専念してきていたので、降って沸いた玉ねぎに教室は軽くパニックです。
ぼくは運良くビシソワーズで玉ねぎのみじん切りも使っていましたし、前回のスキルアップでばっちりコツもつかんでいました。だから大丈夫だとは思ったのですが・・・。

番号順に呼ばれて並ばされ、タオルと食材の入ったボウルを渡されます。タオルとボウルを持って並ぶ、見た目はすっかり銭湯だ。
しかし!そこで浴びるのは湯ではなく衆人の視線!
なんと中間試験は、ぼくらが教壇に立って実技を行わないといけないのです。大緊張、そんな銭湯やだ!白い〜たまねぎ〜カタカタ鳴って〜!
8人ずつ前に並んで実技をやらされ、ばっちり先生のチェックを受けます。
緊張のあまり泣き出す人あり、手がすべってじゃがいもを飛ばす人あり、焦って手を切る人あり、まさに阿鼻叫喚です。
ちなみに、キヨメアリーさんも指を切り、「妖怪は指を切る」という法則が観測されました。キヨは「わたし指切ったから0点だよね〜」とずーっとネチネチ言っていましたが、指切ったから0点なんじゃない、0点だから指切るの。早く人間になりたいねっ。

さてぼくはシャトーも練習したし、玉ねぎもまあいけるだろと思ったのですが、そうして前に出てやらされるとやっぱり勝手が違います。どうもうまく切れないなと思ったら、いつのまにか両肩がぎゅわーんと頭に向かって縮こまっています。
切りながらいかにも下手くそだなあと思ったのですが、こういうときはとりあえず雰囲気!と開き直り、スピード重視でちゃっちゃか切って、「あれー、時間余っちゃったよー」みたいな感じでみんなを見渡してみたりして。そして最後にダメ押しで、採点している先生に向かってニコっと笑いかけてみました。
さて、どうでしょうね。

けっきょく、血とか涙とか玉ねぎの汁とか、液という液が飛び交う地獄絵巻の末に全員がシャトーとみじん切りを終え、使った食材は捨てるわけにはいかないので料理にします。
時間がないので本日はおさらい。あのAPことアッシュ・パルマンティエ(略すとHP)です。試験仕様でじゃがいもが少なかったので、本日は前回の2分の1量で作ります。2回目なので感動も2分の1です。試験の気疲れでぐったりとしながら作りました。
んで、食べる前に先生から、合格者の発表。

ええっ?即日開票なの?

出席番号順に合否が告げられていき、歓声と悲鳴が教室に響きます。
採点基準は決して甘くはなく、みんなビッシビシ、みじん切り並みに斬られて落第しています。
ぼくは試験中は全然ダメだと思ったんですけど、周りの合格者の顔ぶれを見てるうちに「あー、これくらいが合格ラインなわけね」というのが分かってきて、自分の順番を待たずして正直受かったなと思いました。

で、受かった。

ごめんね感じ悪くて。
合格者は、その証としてワッペンが先生から手渡されます。コックコートの左肩にマジックテープの片方がついていて、そこに栄光のワッペンが付けられるようになっています。といってもただの1.5センチ四方の四角い青いマジックテープ。簡単に偽造可能です。(してもしょうがないけど。)
でも。クールを装ってはおりますが。「西洋料理中間試験合格」の証であるワッペンが肩に付くと、やっぱりうれしいのです!わーい!!


実は、中間試験はただの予行練習のようなもの。採点はされますが成績表とは無関係。本試験で落ちたらもちろん落第ですが、中間は落ちても大丈夫、むしろ落とすための試験です。現時点でのレベルを学生に思い知らせて、「こりゃやばい」と焦らせて本試験に向けて練習させようという魂胆のイベントなわけです。
ということで採点基準はやや辛めとのこと。クラス60名のうち、合格したのは20名です。いちおう20名のうちには入っております。

あと2科目、これから製菓と日本料理の試験があります。(中華は中間試験はなし。)
別のクラスで日本料理の試験があり、合格者は2名だったとのこと。2名っておい。
そんなわけで、栄光のワッペンをほかにもゲットできるかはわかりませんが、もらえないよりはもらったほうがいいのです。がんばっていきまっしょい。

実録 企業小説

2005/7/7

いまの昼間の仕事については、これまで日記で抽象的なグチをこぼすことはあっても、具体的にその仕事内容にまで踏み込んで語ったことはありませんでした。
といっても具体的に言うことができるわけはないので、いつものようにおとぎの国の例え話をひとつ。

***

ぼくは、F1レーサーです。
弱っちいチームに所属して、毎週サーキットを転戦しています。チームの監督はボーン・ヘッドが帽子をかぶって歩いているような人だし、チームメートもイタい連中ばかりだけど、それはまた別の話。意外とレーサーの仕事というのは、チームと関係ないところでスポンサーからもらえる広告収入があったりするもの。コンストラクターズ・ポイントではボロボロでも、ぼくは食ってはいけてるんだ。ピット作業がやたら遅いのを我慢しさえすればね。

ところがきのう、チームに衝撃的なニュースが飛び込んできたんだ。それは、チームにタイヤを提供するタイヤメーカーから。

「うちのタイヤ、完走できるか正直わからん」

ハァ?

「このサーキットのターン13、タイヤにかかる荷重が意外とデカくて。バーストしたらごめんね」

なんですと?

予選で、同じメーカーのタイヤを使う別のチームの車がコーナーでクラッシュしたのですが、その原因がタイヤにあるかもしれないらしいのです。タイヤメーカーとチームは朝から大騒ぎ。
午後になってようやく、ぼくらドライバーも集めたミーティングが行われました。

ボーン・ヘッド監督は、苦々しく言いました。

「タイヤが、本戦を耐えられない可能性があるみたいで・・・レースは棄権することになりました」

うーん、やっぱりね。タイヤメーカーの方針で、他のチームも棄権を余儀なくされるみたいです。
ところで、ぼくはすでに次戦以降のレースでもステッカーをしょって走る契約でスポンサー契約をたくさんとっちゃったんだけど、それはどうなるのかな?
まあいいや、ギャランティーはもらっちゃったし。あとしまつはチームとタイヤメーカーの仕事だもんね。
それで、これからどうするのかしら。

「F1はあきらめて、インディーカーレースに出ることにしました」

ハァ?
そりゃ同じ車のレースだけどさ、ちょっと無理がない?

「とりあえず今週のレースは棄権するけど、でも来週は出ます。今月いっぱいはF1です」

なんで?

「今月ぶんのタイヤは作っちゃったんで、もったいないから使ってくれとのことです。だから予選だけ出ます。本戦は欠場します」

えええー、いいのか?
確かに、このタイヤやたらとグリップはいいんだよね。耐久性に難ありとはうすうす感づいてはいたけどさ。
グリップがグリグリきくから予選じゃけっこう走って、これまでぼくも予選で好位置につけることだけ狙って走ってたんだけど、そっかあ、やっぱり本戦ではもたないのかあ。

よーし、じゃあ最後に走りますかね予選だけ。今月いっぱいは、予選で目立って広告いっぱい集めよっと。
本戦は?契約のあとしまつは?
知らね、どうせぼくリタイヤするもんね!

***

えー、なんのこっちゃわからないかもしれませんが、まとめると、逃げ出すことのできない会社員って、みんなたいへんだなあということなんです。

おしまい。

職業病

2005/7/8

栄養学は講義がひととおり終わり、これまでの内容をふまえたグループワークが始まりました。実習班で集まって何かのテーマにそったメニューを2つずつ考え、栄養計算したり料理の絵を描いたりして発表するというものです。今日はみんなでテーマとかメニューを考えることになっていました。

何をかくそうワタクシは、発表とかそういうの大好きです。中学のときに国語の授業の3分間スピーチというので1位になったこともあります。以来学校でも職場でも、発表と名のつくものには積極的に参加して制限時間を大幅に超えてしゃべりまくってきました。
発表に大事なもの、それは何をおいても「テーマ」です。独自の着眼点、オリジナリティ。文章に比べスピーチは、論理が甘くてもビジュアルや雰囲気やユーモアといった周辺要素でカバーすることができるので、テーマで目を引くことさえできれば後は適当にしゃべっているだけで何となくそれらしく聞こえるものです。

そこで今回も、実はけっこう楽しみにしていました。
所用でちょっと遅れて学校に着きました。給食の時間みたいに机が並びかえられてみんながワイワイ話をしており、遅れてきたぼくを見ると班の人がワッと軽く歓声をあげました。
ふっふっふ、みんなも言わずとも発表マスターの俺様の登場を心待ちにしていたようだな。

しかし、遅れて班の席に着くと・・・。
すでにみんなのノートには「ぷるるん美肌メニュー」「スタミナもりもり韓国メニュー」とコンセプトが書かれており、彼らはメニューの考案にまで取りかかっていたのでした。ぼくが来たのを喜んだのは、「栄養計算とか得意そうだったから」。
「美肌」「スタミナ」って!少しはひねれ、お前ら!!

ぼくは横から「『実技試験に受かるメニュー』はどう?」(じゃがいものシャトー・タマネギのみじん切り・アジの三枚おろしなどを使い、DHA・糖質など脳を活性化させる栄養をふんだんに盛り込んだ、集中力アップとスキルアップの両立で合格間違いなしなレシピ)とか、「『少子化対策メニュー』はどう?」(ニンニク・山芋などで精力をつけるとともに、おっぱいやチンポの形に盛り付けてエッチな気分を高めるレシピ)とか、など次々と提案したのですが、やつら聞く耳持ちゃあしねえ。

班に紙が回ってきて、決定したテーマを書き込みます。恐ろしいことに、全10班で出てきたテーマは「美肌」「ダイエット」「夏バテ防止」この3つに見事なまでに集約されていました。そのほかには薄毛防止・キレ防止というのがわずかに1つずつあったくらい。1班2つで20通りのテーマがあっていいはずなのに!
みんなと同じテーマを選んだ時点で負けなんだよ!せめてタイトルだけでも!ほら韓国料理にするんでしょ、「スタミナつけてウィルソンをぶっとばせ」っていうタイトルにしてド肝を抜こうよ!(ウィルソン先生という、すごく性格の悪い韓国料理の非常勤講師がいる。)

とかさんざん抵抗したのですが、まるで通らず。

ぼくも、「発想を変えて『ダイエットメニュー実録ルポ』とかで、1日じゅうリンゴだけ食って過ごすとかの過激なダイエットを実践してみて体重や栄養状態の推移をレポートするとかはどう?あ、それなら『スーパーサイズミー』を実際にやってみるってのは?それとも、キシリトールガムを一本まるごと噛んでみるってのは?」とか言ってるうちに、ああぼくの発想はいつもの日記の思考で、今回の発表の趣旨とはだいぶずれてきているなあということに気がついて、けっきょくどうでもよくなったのでした。

産めよ育てよ!

2005/7/10

ボルダリングはここ2回、今まで行っていた錦糸町のジムではなく、国分寺にある別の系列のジムに行っています。どっちに行くのも時間は同じくらいで、国分寺のほうがだんぜん安いからです。底石さんも国分寺が近いので、二人で国分寺というパターンが定着してきました。

そして今日はボルダ終了後に、黒いカリスマ主婦さんにも出てきてもらって3人で買いものをしました。買いにいったのは先月やっしーとタキさんの間に生まれたのんちゃんの誕生祝いです。
といっても、黒いカリスマ主婦さんも臨月バリバリ、出産予定日5日前です。ベビー服の店に行けば買いにきたのはお腹の子の洋服と思われるし、道を歩けば皆がおそれおののいて道をあける感じです。
ぼくらも「こんなに暑い日に出歩いてて大丈夫かよっ?」と気が気ではないのですが、本人は意外と元気なもの。われわれ男のイメージでは、出産の前1週間くらいは家で安静にしてその日に備えそうなものですが、実際には出産の準備がOKになったらあとは適度に散歩とかして早く出すことが大事なんですって。まるで便秘ですな。
というわけで臨月のお腹を先頭に、吉祥寺の人ごみを元気よく歩く。すると道行く人がモーゼの十戒のごとくサーっとどく。なかなか便利な機能です。

そしてのんちゃんの誕生祝いに、底石家はBaby GAPでおくるみを、ぼくはアーケードのベビー服屋でスタイを買いました。
おくるみ?スタイ?
なんだか、ベビー服界には独特の専門用語があるのです。一般には「よだれかけ」と呼ぶものを、かの業界では「スタイ」と呼ぶようです。ほかにも、つなぎのことを「ロンパース」とか、隠語めいた品名がいろいろあります。「おくるみ」にいたっては、ぼくは結局何に使うものなのかわかりませんでした。タオルのことでしょうか。でも妊婦はみなそれで通じるらしいから不思議です。

で、とにかくおくるみとスタイを買い、おなかに向かって「次は出てこいよー」と呼びかけて、底石夫妻とはお別れ。


そしていよいよ、誕生祝いを持ってのんちゃんのところへ。ちょっと緊張します。
家に着いて、チャイムを鳴らしていいものか少し迷った末にコンコンとノックをすると、タキさんが出てきて、「ごめん今おっぱいあげてるから」
おっぱいキター!
そうっと入ると、赤ちゃんを膝にのせたやっしー。むこうを向いて授乳中。信じられない光景です。部屋にはクラシック音楽なんかが流れちゃっています。のんちゃんの顔はよく見えないのですが、やっしーは、なんかこう眉毛の線が柔らかくなっているというか、どことなく母親顔になっているのです。
ぼくは別室に通されます。なんだか突然知らない人の家になったようでどぎまぎします。部屋に置いてあった扇風機の、強⇔弱のリズムの風にまでも、なんとなく母の愛を感じてしまうのでした。

まもなくのんちゃんのお食事タイムも終了。まもなくといってもけっこうな時間飲んでましたけどね。元気です。一心不乱に飲みます。ウィーヒックとか言っておっさんくさいところもあります。
のんちゃんが満腹になって寝始めて、ようやくやっしーは手が空いて、そこで改めて「久しぶりー」「おつかれー」。

そして寝入ったのんちゃんを、ぼくも少し抱かせてもらいました。子どもに慣れていないぼくは超おっかなびっくり、へっぴり腰でキャッチ。ぐっすり寝ているのでなんとか抱きとめました。



・・・ちっちゃっ!
頭なんて、手のひら大です。指は含まない手のひらの大きさです。爪は米粒くらい。
でも寝息を立て、夢を見ているのか手で宙をかくようなしぐさをして、少し笑って、口の片方だけ笑うと何かたくらんでいるような顔になり。小さくても寝ていても、いっちょ前に表情があるのです。かわいいなあ。

そしてのんちゃんはぐっすり寝てしまったので、布団でおやすみタイム。



やっしーも元気そうです。お祝いの品を渡すと、「あらスタイ」とやっぱり通じるようです。
ただ若干ストレスが溜まっていたのか、お祝いに訪れた人全員に語っているであろう出産時の経緯やハプニングなどを余すところなくブワーっと語ったり、レイザーラモン住谷の話で爆笑したり、少しおかしなテンションでもありました。ぼくらが遊びに行くことが少しはストレス解消になるのならよいですがフォー。


やっしーの書く日記はこのところ格段におもしろいのです。母になり娘への愛が溢れ出し、感覚が繊細になっているように見えます。
赤ん坊を抱き、あやし、「この人は宵っ張りでねえ」なんて話すやっしーは、今までは想像もつかなかった姿です。そんな母娘の姿をまの当たりにして、出産という人生の一大事は、人を大人にするのだなあ、やっしーも成長していくのだなあと、しみじみと感じました。
あ、ちなみに、短い滞在の間ではタキさんの成長はとくに垣間見えませんでした。

しかしいちばん成長していくのは、もちろんのんちゃんですね。
友だちがひとり増えました。次に会うあうときにはまた大きくなっていることでしょう。
また会いましょう。

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