朝一番。寝坊ぎみで目が覚めて、慌ててバタバタ準備。やっべあと10分で出かけなきゃ、シャワー浴びる時間ないかな?
と思っていると、知らない番号から携帯に着信。忙しいのに朝からなんだよっ。
「○○リフォームといいますけど、水道の件で」
ハア。
あーそういえば、きのうアパートの大家に電話してあったのです。水道の蛇口の根元から水が洩れるので修理してほしいって。
でもいま忙しいんで。あとで折り返しでもいいですか。
「はあ、いいですけど。おたくのアパート、場所どこですか?」
いや、だから後でって。こんどの土曜とかに来てほしいんですけど。
「えーと、いまそっちに向かってるんで」
ハア?
どうやら、大家から水道の修理に行ってほしいという連絡を受け、次の日さっそくアポも取らずに勝手に車で出てきたみたいです。
うちの台所の蛇口は、たぶんパッキンがゆるんでるんだと思いますが、水を出すと根元のとこで少し水が漏れます。ただ、実は何年もそのままにしていたくらいで症状はごく軽め。今回も別件で大家に連絡したついでに、そういえば蛇口も直してくださいと軽ーく依頼してあっただけの話。
そんな、勝手にさっそく来られても!
とはいえ、もう向かっているというものをむげに断るわけにもいかず、しょうがないので最寄り駅と住所を教えて簡単に説明しました。どうせすぐ終わるだろうし、始業前のバイト先には電話をかけて事情を話して少し遅刻させてもらうことにしました。
ま、30分後くらいに着くらしいんで、その間に出かけるしたくをしましょう。思わぬ遅刻の言い訳ができたので、逆に余裕もできました。
おかげでシャワーが浴びれます。
いつもよりゆっくりめにシャワーを浴び、バスタオルを取ろうと風呂の扉を開けると・・・。
「あーどうも、○○リフォームです」
なんでいるんだよっっ!!!
むちゃむちゃびっくりしました。
そりゃそうです、風呂から出ようとしたら外に知らない人がいたら。
思ったより早めに着いたそうで、シャワーを浴びていたのでぼくは気づかなかったのです。
ていうかカギが開いてるからって勝手に入るなよ。すごい天然です。天然水道業者。
慌てて体を拭いて服を着て対応。
蛇口の根元のとこが、水を出すとほら漏れるんです。
「あー、やっぱりパッキンですね」
でしょ。ちゃちゃっとやっつけちゃって。
「パッキンは持ってきてないんで、次また来ます」
ハアア???
大家経由で症状を聞いて、原因がパッキンであることはほぼわかっていたのに、パッキンは持たないままに、原因がパッキンであることを確かめに、朝からわざわざやってきたと?
「見なきゃわかんないんでね」
・・・そりゃそうだけどさ・・・・。
あまりの天然っぷりに、なんだか怒る気もしません。
お前は何か、スペイン人か。(偏見。)
けっきょくそのおっさんは、土曜の朝イチにもう一度来ることになりました。
大家に報告しないといけないんで、と言いながら、蛇口の写真をデジカメで撮りました。ただの蛇口の写真じゃなくて、蛇口から水が漏れてるところを撮ったほうがいいんじゃないかなあと思いましたが、黙っておきました。
そしておっさんは、デジカメを忘れて帰っていきました。
追いかければまだそのへんにいるかな?
まあいいや、土曜にまた来るわけだし。
ぼくもゆっくりと家を出て、のんびりと原付を走らせてバイトに向かいました。
ぼくらの学校では、半年間の1クールを「1年」と数える。去年の10月に入学したぼくらはこの前の4月に2年生となり、そして2年次も3ヶ月を過ぎた。1年半の学園生活は、早いものでちょうど折り返し地点というわけだ。
きょう、授業が終わったあとに「就職ガイダンス」なるものがあった。卒業後の進路に関する説明会だ。
夜間部の2クラスがひとつの教室に集まる。うちのクラスにもう1クラスがイスを持ってやってきて教室が膨れ上がり、そんな中で就職担当の綾小路きみまろ先生が就職について話した。
まずは、ぼくら調理師学校の生徒の卒業後の進路について。調理師の免状を取得した後の就職先の多くは、もちろん飲食店。そのほかにホテルの調理場というのもメジャーな職場だし、病院・学校など集団給食の現場や、旅館・結婚式場、はたまた食品会社なんかにも働き口はある。いろんなところから学校に求人が来て、学生はファイルされた求人票を見て就職活動をする。大学生とは若干異なり、ぼくらの就職活動は学校推薦で臨むのが基本となる。学校推薦ベースだから、いろんなところを回って内定をもらい一番行きたいところを選ぶというのではなく、ここと決めて受けて合格したらそこで終了だ。
「最近は個性のある人物を採用しようという動きが強くなってきまして、みなさんのようなちょっと変わった人にはチャンスは広がってきているともいえます。昔のように面接で模範解答を丸暗記するような学生が採用される時代は終わりました」と、きみまろ先生。
例えばあるホテルの集団面接で、「雪が溶けたら何になりますか」という質問があった。一人目は、「水になります」と答えた。そして二人目は「春になります」と答え、三人目は「鳥もさえずります」と答えた。合格したのは二人目と三人目。面接にはそういう機転も必要です、と。場内は苦笑。
それから面接の話になり、面接の心構えや履歴書の書き方についてのプリントが配られた。いわく面接室に呼ばれたら「ノックして部屋へ入る」「お辞儀をする」「自己紹介してイスに座る」等々。履歴書は黒ペンで、文字は丁寧に。
「まあみなさん、そのへんはわかってますよね」と先生。前の方のおばちゃんが大きくうなづき、おじいちゃんが笑う。みんな社会人経験の豊富な人がほとんどだから、面接の受け方なんてのはそれこそ言わずもがなだ。ぼくだって、面接で機転を効かせろと言われれば、たぶん学校で一番だよ。
ところがその就職活動は、もちろん楽なものではないわけで。例えばホテルはどこも経営難で、正社員の採用はいま非常に少ない。正社員を目指すならまずは契約社員で潜りこんで何年か実績を積むしかない。飲食店も、とくに有名なところは競争も激しいし、何より入った後が大変。給料は安いし、とくに徒弟制度が色濃く残る日本料理の老舗の店なんかは寮に入って一日3時間睡眠で働くとか、西洋料理の有名店ならまずはホールから始めていつ回ってくるとも知れぬチャンスを待つとか。ま、あたりまえの話だよね。いま採用が厳しいのは料理の世界に限らずどの分野でも同じだし、有名な店で修行しようと思ったら楽なわけがないわな。
しかも年寄りはキツいのだ。どんなに成績優秀人物抜群でも、学校の推薦を受けてすらもらえないことがあるという。だから本当に有名どころでやりたいと思ったら、学校推薦枠に頼るのではなく直接話をしに行って熱意をアピールするくらいじゃないといけない。入ってからも、体力的に無理のきかない夜間部卒業生は相当な苦労が必要だ。
きみまろ先生は、無給でいいからと頼み込んで入れてもらい毎朝一番に店に来て便所掃除をして認められた人の話や、時給にしたら300円くらいの職場で無理がたたってある日突然蒸発してしまった人の話なんかをノリノリで語った。
「みなさんの就職は、たいへんです」と改めて先生が言った。「これまでのキャリアは何の役にも立たないし、今の職場で得られる収入と比べれば間違いなく下がります」と。
そりゃあたいへんだ。クラスは年寄りばかり、20歳以下の人は一人もいない。30、40すぎの人も多い。でもみんな、わかってるんだ。それをふまえて学校に来てるんだ。言わずもがなだ。
ぼくは、わかってる。
卒業して調理師の免状をもらっても、それは何の役にも立たない。そしていいところに、しかも就職するというのは、自分にとって全く意味をなさない。
ぼくは今のところ、学費を払い終わった10月ごろにどこかのレストランでバイトを始め、できれば卒業後もバイトのままそこでしばらく働くつもりだ。飲食業では社員よりバイトのほうが収入がいいというのはよくある話だし、そのほうが責任や束縛もなくあらゆる意味で楽だ。そもそも自分の店をやるのが目標であって飲食業に一生をかけるつもりはない。だから就職して長い時間をかけて修行するつもりはなく、現場のエッセンスだけ吸収したらあとは自分のやり方でやるつもりだ。働く店も高級店や有名店じゃなくていい。
そんなことは、さんざん考えてきたし、よくわかってる。
そう、10月になったらバイトして、それからどうするかな。
クイズ・ミリオネアは外せないよね。「会社やめて調理師学校に通って店を出すために」っていうアングルはやっぱり有効。そして1000万、テレビとか見てるとけっこうイケる気がするんだよね。ガストのテーブルの100円ゲームのミリオネアで1000万とったことあるし、そういえばカラオケ屋のぴょん太君でも全問正解したことあるよ。そしたらお店ができる。
・・・・ハァ?
わかってねえじゃん?
突然、もう一人の自分が激しくつっこむ。
急に、不安になる。
今は折り返し地点。もう半分で卒業だ。そこまでは道はある。でもそこから先はどこに続くのか。ゴールの後の走る道について考えると、ふとわからなくなる。いったい何を折り返すというのだ。
卒業したら、ぼくは30歳になる。そこまではかろうじて見える。
40歳になったら、何をしているかな。
わかんねえ。
ときどき不安になる。
クライミングジムに通うようになってから2ヶ月ほど。みるみるうちにムキムキに!ということはなく、見た目はちっとも変わりません。しょせん週イチですからね。
しいていえば、手首。仕事中はいつも腕時計をしているのですが、時計のバンドがきつく感じて、最近は外して机の上に置いていることがほとんどです。
といっても手首がすごく太くなったというほどではなく、もともとかなりきつめのバンドだったので。ひょっとすると最近暑くなってきて汗をかくから無意識に外しているだけかもしれないし。
でもせっかく久しぶりに運動しているのだから、なにかボルダリングによる体の変化はないものかと探していたところ。たまたまNHKのトップランナーという番組に、小山田さんというそれはそれは有名なクライマーの人が出ていたのを見ていて、「これだ!」
小山田さんはインタビューを受けながら、手を股間にあてがっていたのです。
ぼくもこの前クラスの女子に、「実習中にチンコさわってるから気をつけなよ」と言われていたのです。
そう言われて自分では「触ってないよ」と否定したのですが、でも気にしてみると確かにときどき触っている。
しかしそれは、かの小山田さんと同じムーブなのです。おそらくチンコをホールドに見立てて無意識のうちに掴みにいこうとする、いわばクライマーの職業病とも言うべきクセ。ぼくは早くも達人の域に達しているのです。股間から。
なーんてことを言っているうちに、サンデーボルダリングは黄2をクリアできずに終了。先週ひっかかった同じ課題で、この前できなかったスタートはできるようになったけど。でもゴールまではまだまだたどり着かず。
1日1課題をクリアすることもままならず、1日1ホールドに近い低成長期に突入です。
ただいま巷でホットなクールビズ。といってもぼくは、朝は原付通勤→昼は電話営業→夜は学校という生活の繰り返しなので、クールビズが本当に世間で励行されているのかいまいち判断しかねます。ただニュースなどを見るかぎり、話題になってはいるようですね。
わが職場でも例外ではなく、たしか2週間ほど前から、ビルの入り口には「弊社では環境に配慮して冷房設定温度は28度でノーネクタイ・ノー上着につきあらかじめご理解」云々の看板が立っています。どうやら会社全体でクールビズが実施されている模様です。
模様です、というのは、実はうちのフロアではそんなもの全く浸透していないからです。こうして告知もされているし、食堂や玄関で出会う他のフロアの人はノーネクタイがずいぶん多いので、確かに実施されているはずなのですが。うちのフロアだけ、ネクタイのままです。
それはきっと、うちのフロアが僻地だからだろうと思っていました。ここは高層ビルの最上階。まさに、僻地なのです。
これまで、所属する派遣元がアホアホ王国だということはさんざん話していましたが、実は派遣社員を束ねる本社の人も、ここにいる人は見る限りけっこうダメっぽい感じです。ぼくらが働く派遣先は超・大企業なわけですが、それでもこれだけ末端にくると血行も悪くなるようです。クールビズについても、たぶん通達は流れてるんだけど社員が気づいてないんだろうなあ。
ま、ぼくはスーツは嫌いじゃないし原付通勤だから暑くないし、それよりいつものスーツでネクタイだけ外してシャツの上のボタン開けて中のTシャツの襟が見える的な半端なビジネスカジュアルは大嫌いなので、会社をあげてクールビズなことに薄々感づいてはいましたが黙っていました。生温かく見守っていました。クールビズだけに。
それに冷房設定28度っていうけど、うちのフロアだけ超寒いんです。(ほかのフロアはちゃんと暑い。)きっとここのフロアは末端で、いろんな意味で血行が悪く冷え性なのでしょうよ。
とか思っていたら、さっきセンター長というフロアのいちばんエラいはずの人が、横で誰かとしゃべっていました。
「午前中会議に出たら、ネクタイしてるの俺だけなんだよ。びっくりして聞いたら、うちの会社15日からクールビズやってたんだってさ。知ってた?」
やっぱりね。
ということで、明日からクールビズが実行されるみたいですよ。
いま一日のうちテレビを見るのって、朝に出かける前の10分かそこらだけ。つまり、とくダネだけ。(あと日曜に、あるある大辞典を見るだけ。)
で、今朝もとくダネを見ていたら、引越しおばちゃん(ワカレミチでのHNは力皇おばちゃん)の公判のニュースで。
おばちゃんは罪状認否で「大きな音だと思わない」と述べたという。
それを受けて小倉智昭が、「人が不快に感じればそれが騒音ですからねえ」みたいな感じで振った。
すると室井佑月は「目の視力って、人によりいい悪いがあるじゃないですか、耳も同じなんですよね」とコメントした。
何度考えても、その発言の真意がわかりません。
室井佑月という人は小説家らしいが、とくダネのコメンテーターとして見る限りでは発言は、ほぼ100%見たまんま、もしくは間違いである。どんな小説を書くのかすごく興味があります。
きょうは昼の社員食堂のテレビでもワイドショーが映っていて、「検証:花田家の女たち」みたいなのをやっていた。遠くでよくわからなかったのだけれど、いろんな証言を元にして花田家の女性の人となりをぶっちゃけようという話らしい。で、景子さん美恵子さん憲子さんとそれぞれに、あることないこと言われているみたいです。
証言を元に、って。要は周りの人の噂や悪口をそのままテレビで流してるわけでしょ。その「証言」の信憑性はどこに?
なんていうあたりまえの突っ込みはおいといて。
ソバをすすりながら、音は聞こえないので遠くから画面だけ見ていると、数々の証言の内容が文字でトレースされまとまっています。
「金にうるさい」「夜になるといつも出かけてしまう」「相撲に関わりたくないと思っている」とか。ほかに「よく気がつく」とか、好意的なコメントも一応取り上げてはいる模様。どれもいかにもありそう・言われそうな内容です。
が、その中に、「笑うと天使」「息子のクラスメートには気を使う」「双子山親方が亡くなった時間には食事を作っていた」とか、取り上げる真意がはかりかねる内容が出てきて、「ん?」とソバをすする手が止まります。
そのうちに「スーパーが大好き。パリに行っても高級店ではなくスーパー」「震えるほどたくさんネグリジェを買う。しかも、すごく焦って買う」「ギョエー!1万8000円しかない!!」とかの寝言っぽい文字が踊り狂い始めてもう大興奮しました。
ワイドショー大好き。ぼくはよく「主夫になりたい」というようなことを言っていますが、その理由はいっぱいワイドショーを見たいからかもしれません。
食品学では「アルコール」についての講義。酒税法ではアルコール度数1%以上のものを「酒」と規定します。5%前後のビールから、40%のウイスキー・ブランデー、はたまた98%のスピリタスまで、さまざまあるのはご承知のとおり。
「ウイスキーくらいならストレートで飲んじゃうなんて人はいますか?」とアタシ先生が聞きました。
すっと、手をあげるビッグマウス・バン・ベイダー。
彼のことをよく知らないアタシ先生は、「すごいですねー飲み過ぎには注意してくださいよ」なんて言っています。
彼の性質をよく心得ているぼくたちは、生温かく見守ります。
とにかく、ベイダーは検証できないことについてはめっぽう強気なのです。
と思ったら。
「ではみなさんお酒の強い弱いを、アルコールパッチテストで確認してみましょう」とアタシ先生。
エタノールをしみこませたガーゼが配られ、それを腕の内側に貼り付けます。7分間してガーゼを取り、さらに10分放置します。最初の7分で腕が赤くなる人は体質的に全くアルコールがダメな人、10分後に赤くなる人もかなり弱い人です。欧米人はほぼ100%が大丈夫なのに、日本人は実に45%が飲めない部類に分類されるといいます。
これがかなりはっきりと結果が出るもので、ふだんから酒は飲めないと言っている人は、ガーゼを貼ったところだけでなく腕全体がみるみるうちに真っ赤に腫れ上がっていきます。みんなきゃあきゃあ言いながら時間が経つのを待ちます。
しばらく別の話をした後、アタシ先生が終了を告げました。
「ウイスキーはストレート派のベイダーさんは、どうでしたか?」と彼の腕を覗き込みます。「・・・あれ、ちょっと赤くなってますね?」
笑いを押し殺すのに必死なぼくら。
「おかしいなーきのう飲みすぎたかなー」とベイダー。
その言い訳はいただけませんね。アルコールパッチテストは、体がアルコール(正確にはアルコールが分解されてできるアセトアルデヒド)を分解する酵素を持っているかどうかのテストです。100歩譲って前日の飲みすぎのせいで酵素が出払っていて分解できないということがあるとしたら、今もなお体はアルコールを分解中ということになります。つまり、今も酔っているということ。
いったい何に酔っているのか?
それは、自分にです。
ビッグマウス・バン・ベイダーの大ぶろしきは、いま思い出せば入学初日の自己紹介からすでに始まっていました。
「昼間は声優の仕事をしていて、最近は『○○ー・○○○ー』(某有名洋画)の日本語吹き替え版をやりました」
へえ、と声があがりました。ぼくは一瞬、スーパーでバイト?と勘違いし、それから、ああ声優ね、映らないからデブでもできるんだね、と考えました。
次にクラスの最初の飲み会で、彼は聞かれてもいないのに言いました。
「俺は飛び級で東大理Vに入ったが、医学部進学を前に血を見るのがいやで退学した」
これは、クラスのある人がどうやら東大卒らしいという話の、すぐ後に飛び出した発言でした。
大学やめてどうしたの、とだれかが聞くと、「考古学に興味があったんで別の大学に」とベイダーは答えました。考古学ならあそこが有名だよね、どこだっけ、中央大だったっけ、と別のだれかがぽつりと言いました。「そうそう、中央大に入り直したんだよ」とベイダーもうれしそうに言いました。
ナンカオカシイゾ。みんな思い始めました。
それ以降もオックスフォードの「有名なほう」に留学していたとか、はたまたクロールで1時間泳げるとか太陽の手を持っているとか。動くものにはとりあえず飛びつくカマキリ・スピリット。デブのくせに口のフットワークだけは軽快で、数々の日記のネタと極上のイライラを我々に提供してくれてきたのはみなさんご存知の通りです。
で、これまで彼は「検証できないことに関しては強気」というのがチャームポイントだったのですが、今回のパッチテストではアルコールの分解能力の低さがばっちり検証されてしまいまして、少々バツが悪いわけです。
「なんだかな〜。かそこまでして自分を作り上げてるのがアホだね」と、休み時間にクラスメートのもっさんがつぶやきました。
ふと思い立って、ぼくはもう少し検証してみることにしました。
家に帰ってパソコンをつけます。なんで今まで気づかなかったんだろう、インターネットがあれば、世の中のかなりのことはわかります。
まずは「声優をしており、某有名洋画の日本語吹き替え版に出た」という情報から。ちょっと検索するとすぐに、某有名洋画の吹き替えのキャスト一覧にヒットします。
見たところ、彼の名はありません。
ま、芸名かもしれないしな。(声優で男で芸名、なんて聞いたことないけど。)
次に、中央大学の考古学研究室がらみで足跡はあるかしら。
・・・?
中央大では、考古学は学べない??
ちょっと怖くなってきました。
まあまあ、検索すると「中央大学考古学ゼミ」というのにはヒットするし。(ちょっとだけだけど。やっぱり名前はないけど。)
あと情報といえば。東大に飛び級か。東大に、飛び級・・・?
いわゆる飛び級は、正式には「飛び入学」という制度だそうです。平成9年に「数学又は物理学」に限定してスタート。平成13年の学校教育法等の改正により、対象分野を問わず行うことが可能に。千葉大で導入されたのを皮切りに、現在では国立・私立の5校で実施。
東大は・・・なし。そもそも彼が大学に入学したことになっている年は、飛び入学が制度化する、前だ。そいつはさすがに、飛びすぎだ。
最後にぼくは震える手で、彼のフルネームを入力し、検索ボタンを押しました。
「カテゴリ・サイト・ページ検索で一致する情報はありませんでした。」
学校に通っているかぎり、唯一絶対にウソがつけないのが名前。
ワールド・ワイド・ウェブの世界においてその名前は、声優としての現在であったり大学に在籍した過去であったりと、彼がまとう全てのキャラクターとは一切リンクしない。
がらんとした検索結果ページを見て、なんだか自分がとても悪いことをしているような気がしてきました。
彼がホラを吹いているのはわかっていました。彼がホラを吹くことで、自分を大きく見せようとしているのはわかっていました。
でもそのホラをひとつひとつはいでいくと、その巨体の中心には、果たして何も残らなかった。虚無感。それをあえて覗いてしまった、罪悪感。
とりあえずもっさんに、調査の結果をメールで報告しました。彼の名はネット上には存在せず、少なくともその名で声優なり大学の研究室なりで活動したことがある確率は低い。そして東大には、飛び級はない。
「やっぱりかいな(u_u)o そのうち詐欺罪かなんかで捕まんじゃないの」と返信がきました。
悲しくて、ぼくはこう返しました。
「詐欺は、上手だから騙される人がいて、騙されるから罪になるんだよ。彼の場合は騙される人はいないから捕まる心配はないと思うよ」
「そうだな、安心した」と返事がありました。
ありがとうベイダー、そしてさようなら。
6月としては記録的な暑さだとか、35度だとか40度だとか言われているようですが、いまいちピンときませんでした。
エレベーターを待っていて、だれかが「駅からここまで歩いてきただけで汗だくだよ〜」と話しているのを聞いて、ふと気づきました。
一日のうちで、いったい何歩歩いてるんだろう?
朝は原付で、ビルの前まで乗り付けます。エレベーターに乗ります。一日中座ったままの仕事です。昼もエレベーターで、社員食堂ですみます。夜になればやっぱり原付で学校へ。教室は8階で、たまにエレベーターが混んでいて乗るのに時間がかかりそうで階段を使うと、途中で息切れがします。
賞味200歩くらいしか自分の足では移動してないんじゃないか。そして一日のほとんどはクーラーか原付で切る風の影響下にあります。汗をかくということが全くありません。だからこの6月が記録的な暑さだという実感が、ぼくにはすっぽりと抜け落ちていました。
実家にいたころは部屋にクーラーがなく、南に大きな窓があったので夏は平気で42度とかになりました。でもおかげで暑さ寒さには意外と強くなった気がします。
会社員時代は外回りもしたし、時間にルーズなのでいつもアポぎりぎりに走って到着して夏はいつもお客さんのところで汗だくです。「たいへんですねえ暑いのに。おい山田くん急いでアイスコーヒーをお持ちしなさい」とか気を使われて仲良くなる、という妙な営業スタイルを確立したものです。
そんな、代謝機能がしっかりした健康体だったはずです、ぼくは。(汗っかきともいう。)
しかし、今年の夏はぜんぜん汗をかいていない。夏の暑さに気づいてすらいない。
こりゃあいかん、自然を取り戻さねば!
というわけで。
というわけで、というわけでもないんですがね。
朝はやっぱり原付で出勤しました。
ご存知のように東京は朝から雨だったのです。しかもけっこうな雨。そんな雨の中を傘もささずに疾走、これはある意味自然な姿だろっ!
要はいつものパターンです。原付のほうが早いし安いので、最近ではもはや天気予報とか目の前の天気とかも俺様を止めることはできない感じになってきております。
といっても今朝は、大雨といってもいいほどの雨。帰りに大雨にあった、というパターンはこれまでも数多くありましたが、朝から大雨の中をあえて原付通勤、というのはなかなかありません。
びしょ濡れで会社に到着。びしょ濡れですが、濡れすぎると周りは逆に濡れていることに気づかないものですね。頭はヘルメットをかぶっていたので乾いています。シャツは黒系だったので濡れても見た目は変わりません。ズボンは茶色いチノパンがこげ茶色のチノパンになっただけです。なるほど朝でも濡れるなら、中途半端ではなく徹底的にやればいいのだな。ぼくはひとつ自然に帰った気がしてご満悦です。
周りは例のクールビズ。予想通り、ネクタイを外してボタンを一つ開けただけという負のクールビジネスマンが大勢です。(恐ろしいことに、Yシャツの開襟から覗かせるTシャツに色ものを着るおしゃれが流行していたりします。)それでも彼らはTシャツ+長袖シャツですから、ここへきて冷房が急に弱められ室温が高くなってちょっと暑そうです。
半袖シャツ一枚のぼくを見て、「いいねえ、涼しそうで」なんて言います。いいでしょう。しかも、濡れているから乾くときに気化熱を奪ってさらに涼しいんですよ。超・クールビズ!自然バンザイ!!
と思ってたら、どうやらカゼをひいたようです。
へっぷし。
まあ、濡れたらカゼをひくというのも自然な姿ということで。
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