バイト先で、通常の営業終了後に16年度下期のおつかれ会みたいなものがあった。基本的には全員参加の半公式行事だったのだが、学校があるぼくはもちろん欠席するつもりだった。でも派遣元から「最初の30分だけでもいいからどうしても出てくれ」と泣きつかれ、けっきょく派遣元から学校あてに「授業に遅れますが、外せない仕事のためなので遅刻扱いにしないでください」という文書を書かせたうえで参加してやることになった。
会は、勤務先のエラい人はもちろん派遣元の役員まで招待された立派なもの。長々と挨拶があり、17年度の施政方針演説があり、その後に16年度下期の営業成績上位者の表彰があった。派遣元がそこまでしてぼくを参加させたがったのはこの表彰式のためで、ぼくはここで表彰されることになっていた。他の受賞者は全員もう一つの派遣会社だったので、うちで唯一選ばれたぼくが不参加ではかっこがつかない、ということなのである。
いろんな部門で表彰があり、全部で10人が選ばれた。ぼくは主要商材の個人成績2位で表彰状をもらった。うちの派遣元のヨレヨレな体制の中で2位だからなかなかに優秀である。さらに1位との差はごくわずか。前にペットボトルSVが、いや、今は降格してヒラになったからペットボトルくんか。彼のミスでぼくが獲得した契約がキャンセルになったことがあった。それがなければ、本当はぼくが1番だったのだ。2位と1位は全然違う。賞金だって違う。表彰状だって「以下同文」なのだ。賞金の差額は派遣元に請求するとして、ただ一人表彰されるにしてもかっこよさが全然違う。派遣元は、なんとかしてぼくを式に参加させようとするくらいなら、そのへんの重みをわかっておいてほしいものだよ。
それはさておき、もうひとつの派遣会社に所属する、1位になった男性。この人はちょっと興味深いのだ。彼は1位なのに堂々の欠席。
ぼくは直接彼と話をしたことはないのだが、彼が一度顔をぼっこぼこに腫らして仕事をしていることがあった。ケンカでもしたのだろうと思った。そんなふうには見えない優男なんだけどね。・・・しかし後で噂に聞いた。彼は、なんとボクサーなのだ。
ネットで検索すると、ちょこっとだけヒットする。まだ4回戦ボーイだが、東日本新人王の予選にも勝ち残っている。本物のプロボクサーなのである。新人王戦の次の試合も近く、表彰式も、もちろんジム通いのため欠席。なのだと思う。そういえば昼休みに食堂に行かずに席で水を飲んでいたりする。本物だ。
30分くらいで挨拶や表彰式が終わり、懇親会が始まり、ぼくはビールを一杯と寿司4個だけ流し込んで抜け出して、急いで学校に向かった。
だからその後のことは知らないのだが、後で聞くと表彰者は一人一人演台で話をさせられたらしい。スピーチが順に進んで主要部門の1位と2位が不在。少々お寒い状況だったそうだ。
なかなかおもしろい。1位はボクサー、2位はレスラー。(ただし脳内。)どちらも欠席。ぼくらはほかにやるべきことがあるのだ。
ぼくが、この日記でかたくなに「会社」と書かずに「バイト」と表記しているのに、気づいている人もいるかもしれない。最初のうちは「うちの会社」と書くこともあったが、それはどうも違う。ぼくにとって「会社」は、4年間勤めたS橋のあのボロ会社だけなのだ。ボロくてみんな頭が悪くて、でもぼくは真剣に立ち向かって、ぼくにとって人生でやるべきこと・やるべきでないことをわからせてくれたところ。あそこ以外には「うちの会社」という表現をする気は起きないのだ。ぼくが今働いているところは、給料をもらってはいるが決してぼくが帰属する場所ではない。学費と家賃のためだけだ。だからどんなに文章上の通りが悪くても日記では「バイト先」という表現を使う。本当は「仕事」とすら書きたくない。
きっと1位のボクサーも、昼間の仕事は仮の姿。夜のジムが自分の居場所。懇親会なんかに出席しているヒマはないのだ。
ぼくは昼間のバイトが大嫌いだ。そこにいる人々が大嫌いだ。そこにいる自分も大嫌いだ。周りの人たちはわりと仲良くやっていて、いつもおしゃべりしているし仕事が終わると飲みに行ったり休みの日にみんなで卓球に行ったりしているらしい。ぼくはわき目も振らず、一日中ほとんど一言もしゃべらない。
見てると、ボクサーも同じ。一日黙って仕事をして、終業のベルと同時にさっさと帰る。かなり感じ悪い。
どんな人とだって仲良くしないよりは、もちろん仲良くしたほうがいい。無駄にカリカリはしないほうがいい。ふと気づくとこの中途半端なぬるい仕事を居心地よく感じる自分がいて、あまりカリカリせずにみんなで仲良く適当に働き続けるのもいいかもなんて思う。それなりに給料がもらえて、サラリーマン時代と比べれば稼ぎは落ちるけれども代わりに責任もない。なんとも楽な稼業。ここで働いてる人はけっこう年齢層が広く、40すぎの子持ちの人だってざらにいる。この給料じゃ家族はかわいそうと思うのだが、現実にそういう人もいる。そうやってあと何年でも、生きていくことはできるのだ。
だけどやっぱり、ぼくらはきっと、ここにいてこいつらと仲良くするのはたまらなく嫌なのだ。早く逃げ出さないといけない。
ぼくらは寄生虫みたいなもんだよ。寄生虫は本来、宿主の命を脅かさない。寄生虫による害のほとんどは、終宿主を別の動物が食べたことで寄生虫が慣れない環境に置かれ苦しくて暴れるためのものだ。
ぼくらの1位・2位というのは、こんな環境から早く抜け出そうともがいている結果のアレルギー反応だ。
しょせん寄生虫なんだけど、とにかくぼくはここにはいたくないのだ。
めざせ終宿主。伸びろ体節。8メートル、10メートル。いつか食い破ってやる!
土曜日は学校のスキルアップレッスンがありました。前にも書きましたね。試験には実技もあり、そのための補講がときどき時間外に開かれます。今回の練習課題はおなじみ、じゃがいものシャトーむきとタマネギのみじん切りです。
いつものように、みんな食材持参で集合します。
メアリーさんは、高島屋で高級新じゃがを買ってきました。
「2個で180円だったの〜」
高すぎです。
「しかも小さいの〜」
新じゃがですからね。
ていうかその新じゃが、直径5センチもないのでは。シャトーとは、じゃがいもを長さ5センチのフットボール状に整形すること。ふつうはなるべく大きなじゃがいもを選んで、それを5センチの長さに6等分してから整形していきます。小さな新じゃがを選んだ時点でシャトーにできないこと間違いなしってなもんです。
スキルアップに参加するくらいだからやる気だけはあるんだろうけど、5センチ2個で180円のじゃがいもを疑いなく買ってくるあたり、それ以前の問題です。
さ、そんな人はほっといて、ぼくらはせっせと練習練習。むき続け・刻み続けること1時間半。まさに仕込み作業です。
タマネギのみじん切りなんて、どうやってもいつかはできる簡単な課題だからあまり真剣にやったことはなかったのだけれど、いざ先生につきっきりで教えてもらうと、押さえるべきコツが確かにあることに気づきます。ポイントは、半分に切ったタマネギにペティナイフで縦の切り込みを入れるときに、両手がちょこちょこ指揮者の動きになることです。曲はピアニッシモでアレグロです。
と、独特の言語表現に成功したところでみじん切りはばっちり。
シャトーも、なかなか上手になってきました。あとはスピードかな。9月の試験のときは、形はもちろん制限時間内に仕上げることも必要です。また練習しよう!
と、ここでめでたしめでたしとはいかないのがスキルアップの恐ろしいところ。いつもの実習なら練習した食材を使って料理をするし、余ったら回収して別の実習で使います。が、スキルアップはただの練習のための練習。後に残るのは大量の野菜くず、それを持って帰らないといけません。しかも、みんなめんどうなので、「一人暮らしでしょ、あげるよ」とぼくに押し付けてきます。
それらを全て合わせて、大量のタマネギみじん切りとじゃがいものクズをゲットしてしまいました。

総重量3キロといったところ。ノリで引き受けたのはいいんですが、うちに帰ってあまりの量に笑ってしまいました。
笑っていてもしょうがないんで、とりあえずひき肉を買ってきてミートソースを作ることにしました。多めに作って冷凍しとけばいいし。
とにかくタマネギだけはふんだんにあるんで、負けないようにひき肉もたっぷり買いました。大きな鍋でタマネギ・ひき肉を炒め、ワインをドボドボ、ローリエは3枚、その他ハーブ類もあるだけどさどさ放り込みました。それだけで鍋からはみ出さんばかり。2缶入れるつもりのトマト缶が1缶しか入れられなくなったくらい。
しかし・・・その結果、ヤバいくらいおいしいミートソースができたのですよ!ミートソースが自慢のパスタ屋と、これは全く遜色ありません。
土曜日のお昼ごはんに、まずは普通にミートソースのスパゲッティで堪能。その後もさらに煮込んで、夕ご飯はバターライスを炊いてドリア仕立てにしてみました。どちらも超うまい。
やっぱり食材をふんだんに使うと、その旨みが凝縮されてそれだけでおいしい。ひき肉を大量に入れたため実は材料費はけっこう高く、お店で出そうとするとそれなりの値段になっちゃうんでしょうけど、でも今回はタマネギ無料だし全然OKです。
しかも、まだあと7人前くらいのミートソースが残っています。フリーザーバッグに小分けにして冷凍庫に入れ、思わずにんまりしてしまいました。
そして、ノってきてしまいました。大量調理、おもしろいぞ!
というわけで、日曜日の我が家はとつぜんセントラルキッチンに変身。
寸胴に、瓶に半分くらい残っていたオリーブオイルを全部ドボドボ。ニンニクを一株、適当にスライスして入れます。そしてもらってきたタマネギの残り全部を投入。下味の塩こしょうを少々。しかし少々っていってもこの量に対する少々って?まあ適当でいいや。そして炒めたらトマト缶を5缶ぶちこむ。

そして、歌いながらかき混ぜて煮るのです。
ぼくらの なまえは ぐりと ぐら
このよで いちばん すきなのは
おりょうりすること たべること
ぐり ぐら ぐり ぐら
と、歌い終わって煮詰まったら、100円ショップで買ってきたビンに詰めます。

これで、万能トマトソースが大量にできあがり!トマトソースを大量に作ってびん詰めしとくなんて、イタリアのマンマみたいじゃありませんか。
さらにこのソースのすごいところは、1年次の食品衛生学のテストで100点を取ったワタクシがその誇りにかけて滅菌処理に努めているところです。

びんはもちろん煮沸消毒、さらにその後にアルコール除菌剤で消毒し、ソースを入れた後に蓋をしてまたびんごと熱湯へ。密閉した状態で63度以上の熱を30分以上加えることにより、商用レベルでも十分な滅菌処理となります。これをパスツリゼーションといい、あのパスツールの名に由来します。そしてビン詰めは1804年に、ニコラ・アッペールという人が軍隊の保存食用に発明しました。200年の時を経て、ワタクシが現代に蘇らせました。
ま、そんな胸張って言うほどのことはない、普通のマンマの技ですけど。
下味の塩こしょうしかしていないので、ここから何にでもアレンジできます。ひき肉を炒めてこのソースを入れればミートソースになるし、冷凍のシーフードミックスをさっと炒めてソースとからめればあっという間においしいペスカトーレのできあがり。水で延ばしてコンソメキューブでも溶かせばスープとしてもいただけます。鶏肉を焼いてこのソースをかけて、ナンプラーでも少々加えて煮込めばやっしーごはん風です。と、レシピを考えているだけでも楽しいトマトソース作り。
そして売ろうかな、このソース。ちゃんと手を加えてあるので、常温でもかなり保存はきくはずです。100円ショップのビンなので密閉はされてないだろうから保証はしないけど。材料費はトマト缶5缶、たまねぎ、オイル、にんにく。その他セロリの茎とかパセリの茎とか、余ったものや備え付けのもの。全部で700円弱くらいでしょうか。それで500ミリリットル入りのびんに6つのソースができました。ネット通販で調べると、同じようなトマトソースが350グラムで450円で売っています。じゃあ500ミリひと瓶で500円ならかなりお得で人気が出ますね。500円×6=3000円の売上。原価は700円と、びんが100円×6で合計1300円。1700円の粗利。このソースを使ったレシピでもつけてですなあ。「店長印のトマトソース」としてこのサイトで販売ですよ。アファリエイトっていうか、ワカレミチも商用サイトですよ。と、皮算用まで楽しいトマトソース作りなのでした。
さっそく市場調査も開始。夜にボルダリングに行きましたが、そこで底石さんとじゅんに配布しました。月曜日には学校で、タマネギくれた友だち4人にお礼に配ります。ぜひ感想や、お勧めのアレンジなどをお聞かせください。今後の商品開発に活かします。
あれ、ところでそうすると、自分の手元に残るのは、ジップロックに入れた余りの分だけ?

大損です。あーはは。
climb is life
life is climb
とは、去年だか一昨年のノースフェイスのコピーである。
と、ボルダリングの師匠の160/160さんが言っていた。ノースフェイスが何かは知らない。だけどとにかく、life is climbらしい。
始める前からそんな、人生の縮図に違いない的な期待を勝手に抱いてボルダに挑戦して1ヶ月、まんまとハマっている。
昨日は青の5番に挑戦。
青5のキモは通称「食べかけメロンパン」、写真下のデカい黄色いやつ。この見るからに役に立たなそうなホールドをきっかけに、ずいぶん上のちっちゃな手がかりを掴みにいかないといけない。
ヌメる食べかけ部分でプルプルして、力尽きてすべり落ちること数回。メロンパンの次、遠っ!

しかし、何度目かのチャレンジで。もうダメかと思って力を抜きかけ、体が下にだらりと落ちたある瞬間、ハッと気づく。
なんだこの姿勢、妙に楽だぞ?
そしてそのまま次のホールドに手を伸ばしていくと・・・届いた!
ぼくがメロンパンを「掴んだ」瞬間である。
上に行くことばかりを考えていると、どうしても肘を曲げて顔の前あたりでメロンパンを持つことになる。すると、頼りない食べかけ部分がヌメり、力尽き、落ちる。
そうではなく、左手をメロンパンにかけたあと、離れるのだ。ちょっと不安だけど、思い切って右下に重心を移してしまう。左手が伸びると、食べかけ部分に垂直に力がかかり勝手に安定する。そしてメロンパンを中心に左手を弦に、弧を描くように外側に力をかけ、回りこみ、次を掴む。
いやはやなんとも、climb is lifeではないか、ボルダリング。
予期せぬ動きから正解が生まれる。失敗したらまた挑戦すればいい。一歩下がって考えて、バランスを変えてトライアル&エラー。いつか次が掴める。
もう、例えるのもうっとうしいくらいに、climb is life。
そして、life is climbなのである。
ご存知のように、タバコを吸っていない。まだちょっと吸いたいときもあるけれど、でも一日のうちで最初にタバコのことを思い出すのが昼くらいになった。これまでは、朝起きてまずタバコのことを考えていたのだ。依存症患者がアディクションから抜け出すことをよく「クリーンになる」と表現するけれど、まさにクリーンになりつつあるのを感じる。
酒も、やめようかなと思う。いや、やめるつもりはないけれど、「持っていかれる」まで飲むのはやめようかなと。
きのうボルダリングのあと、底石さんとじゅんと3人で飲みに行った。金もないし最初は飲みなしの契約でジムに集合したのだが、いい感じに疲れたあとはやっぱり飲みたくなる。で、ちょっとだけ飲もうということで飲み始め、ちょっと飲むともっと飲みたくなり、結局持っていかれる。原付で来ていたのに。
始めは原付を置いて錦糸町から3人で電車に乗ったのだが、途中で二人の制止を振り切って電車を降り、錦糸町に戻ってしまう。いかにも、酒に持っていかれた人間の行動。
そして泥酔状態で錦糸町から家まで帰った。原付で。記憶がないというほどではないが、もし警察に捕まっていたら、呼気検査で酒気帯びと判定をされるまでもなく、歩かされて一発で飲酒認定だった。いま罰金いくらだ、30万?
でもそんなのはいい、自分の責任だからね。高校生の列に車が突っ込んだ事故があった。飲酒運転だったそうだ。原付じゃ大事故にはならないだろうけど、けど人ひとり殺すことはできる。そうしたら、どう責任を取る?
もっとありうるのは、ぼくが勝手にどっかにぶつかって死ぬこと。自業自得といえばそうだが、でもそうなったら一緒に飲んでいた底石さんやじゅんは、どんな気持ちになるだろうか。あのときぼくと飲んだことを、彼らは一生後悔しながら生きることになるだろう。
そしてぼくが死んだら、このサイトは死に、悲しむ人がいる。
それじゃあまだ、死ねないよな。
持っていかれるまで飲むのは、やめよう。
長生きするのがイヤだからタバコはやめられないとうそぶいていたぼくが、学校で健康こそが人生の最終目標と教わるたびに首をひねってきたぼくが。半年前の日記を読み返してみた。なんという変化だろう。
今でも健康には全く興味がなく、長生きなんてしたくはないのだけれど、でも、ぼくが死んだら悲しむ人がいる。ぼくが生きていることは、少しだけでも何かの役に立っている。まだ死ねないと、少しずつ思うようになってきた。そんな風に思うのは、何年ぶりか。いや、生まれて初めてかもしれない。
生きることとは何かを掴むこと、掴みたいから生きている、上のリンクの次の日にそう書いている。ボルダリングを始める半年も前にだ。
やっぱり、ぼくにはわかっていた。
だんだんと、わかってきた。
失敗してもホールド・ユア・ドリームス。バランスを変え、足場を変えて手を伸ばした。壁を登った。次の課題を目指した。届いた。届くような気がした。もう少し生きたくなってきた。
life is climbなのだ。
いっしょに登ろうぜ。
ここのところ大気の不安定な日が続き、夕立が降ったり雷が鳴ったり。で、バイトが終わってビルの外に出ると・・・真っ暗。大雨です。アスファルトに跳ね返った雨のしぶきでオフィス街は霧に包まれています。
ううんまいったなあ、これから学校だし原付だし、傘なんて持ってません。
・・・ま、学校まではたったの5分、大丈夫でしょう!
と雨の中に飛び出しました。
大丈夫なわけはなく、原付にたどりつくまでの間にライトグレーのスーツはダークグレーになりました。ヘルメットをかぶると、ヘルメットの中にたまった雨水がドボドボと顔に背中に・・・まあいいやそんなのは焼け石に水です。いや例え違うな。まあいいや!
ってなくらい、一瞬にして水浸しです。原付に乗ると、水滴で顔が痛くて息もできないほど。カバンの中だけど携帯、水没するんじゃないだろうか。
ビルの出口の軒下には、小ぶりになるのを待つ人々の群れ。道は人通りもまばらで、傘を差していない人なんてもちろんいません。そんな中、傘もささずに原付で爆走する、スーツの男。という図を想像して、自分で笑ってしまいました。
旧三越の交差点のところで二段階右折をしようと停まったときに、横断歩道を渡る男子高校生たちに「すげえ!」「がんばれよ!」と声援を浴びました。
それにガッツポーズで応える、水もしたたるいい男です。
学校に着くと、入り口に助手さんがいます。学校にくる先生たちの傘を受け取る係です。(そういう世界です。)
助手さんはダークグレーのスーツのぼくを見て、ひきつった笑いで言いました。「タオルかなんか、ありますか?」
「あります!」と答えポケットからハンカチを出しましたが・・・絞ると水がポタポタ垂れます。
なんか申し訳ないのでエレベーターには乗らず、階段で教室へ。
クラスの人は、突然の大雨でまいったまいったという話をしていましたが、ぼくの姿を見て声を失います。
幸いその日は実習だったので、ぜんぶ脱ぎました。上は素肌にコックコート。下は前掛けがあるのでパンツ一丁。前から見るとなんとなく西郷さんっぽいですが大丈夫です。
が、後ろから見るとやっぱりパンツ一丁。

靴下も靴も脱いでいるので、白衣のほかは正真正銘パンツ一丁です。そして脱いだものをハンガーにかけて乾かしているところ。まるで家です。
写真右で見切れている女の子に襲いかかる変質者のようにも見えます。
ほんとはパンイチのままでいたかったのですがさすがにそれは無理。たまたま普段着のほかに実習用のズボンを持ってきていたもっさんにズボンを借りて、無事に実習を受けました。
実習が終わって、乾かしていたスーツを着ると、少し乾いていましたとさ。
考えてみるとぼくは現代人にはあるまじきほど雨に打たれる性質があります。いつも雨でずぶぬれになった話を日記でしている気がします。あと干しっぱなしの洗濯ものを隣の家のおばちゃんに取り込んでもらったりしています。それこそ当サイトは、ブログでカテゴリを作ったら「雨」というジャンルが絶対にできるほど。
でもなんか、楽しいんだよなあ。雨の中を傘もささずに走るのは!
うちは専修学校制度で定められた、れっきとした専門学校。授業以外にも、試験はもちろん運動会とかオリエンテーション合宿といった学校らしいイベントもけっこうあります。
ただし基本的に夜間生はみそっ子扱い。試験以外のイベントのほとんどは、昼の生徒は強制だけど夜はなし、もしくは自由参加です。
その最たるものの一つが研修旅行。ふつうの学校でいう修学旅行にあたるものです。そのパンフレットと申込書が配られました。
日帰りの国内旅行から豪華海外旅行まで、いろんなコースがあって選べます。いちおう料理の学校なので単なる旅行ではなく、観光の合間にレストランに行ったり海外の料理学校で講習を受けたりと、まあグルメ旅行みたいな感じになっているみたいです。
先生からは、夜間生も参加できて授業は公休扱いになるという説明がありましたが・・・ぼくは興味なし。興味なしというか金がなし。検討するまでもなくパンフレットは速攻ゴミ箱行きです。
で、ほかの人もそんなもんだと思っていたのですが、それがけっこう参加者がいるらしいのですよ。
さすが夜間生、仕事さえ休めれば金は自由になる人もいるのです。
目玉は、最も高いヨーロッパ2週間の旅。フランス・イタリアの超有名レストランを食べ歩いて70万というゴージャスグルメ紀行。ふつうにヨーロッパ2週間行ったらそれくらいの値段になるし、超高級レストランで食いまくれることを考えたら安いという話もありますが、ぼくには逆立ちしても無理です。
「ヨーロッパの申し込みが多くて、抽選になるかもしれません。ぜんぶで200人くらい」と、担任の若先生がホームルームで言いました。
200人?70万が200人??
ぜんぶで・・・いくら???
つい意味もなく計算してしまうところが小市民です。しかも瞬時に計算できず、周りの人に聞いてしまいました。
Aさん「あーわたし経理部だから。そういうの強いよ。えーっと・・・4200万?」
うわー4200万!
・・・って、7×2=14だから4200万じゃないよ。経理部のくせに困るよ、計算まちがえしたら大騒ぎになるよ、やだなあ。えーっと、1400万でしょ。さすがに4200万もしないよね。ぼく簿記3級だからさ、こういう計算は得意だよ。
Bさん「・・・・いや、1億4000万」
ギャァァァァァッ
なんとかして研修旅行のお金を集める係に立候補できないだろうかということで頭がいっぱいになって、しばらく授業に集中できませんでした。
サイボーグきみまろ先生の食品学はここ数回、平均寿命についての講義。なぜ食品学で寿命、という疑問はおいといて、彼がこんな質問をしました。
「シエラレオネという国を知っている人は、手を挙げてください」
真っ先に、すっと手を挙げるベイダー。
というのもおいといて。
ぼくは知ってるよ、つかみんな知ってるでしょ。
だって同じ先生の授業で半年前、1年のときにやったんです。日本はご存知のように世界一の長寿国だけど、アフリカにはなんと平均寿命34歳の国があるって。
その原因は内戦やマラリアや、地球の反対側にはこの日本では想像もつかないような過酷な環境があり、この国では生まれても4人に1人が5歳までに死ぬっていう、なかなかに考えさせられる話。
ま、この先生の場合は、授業はいつも台本でも作って家で練習してるかのような漫談口調、綾小路きみまろ風。こういうシリアスな話もなんだかネタっぽく聞こえるのです。
しかも前回は、たまたまちょうど前の日に栄養学のおばちゃん先生もシエラレオネの話をしていて、「2人に1人は1日1ドル以下の生活費で暮らしている」とかのデータまでそっくりいっしょで、ああ元ネタかぶっちゃったのねとそっちのほうが哀れに感じていたので、シエラレオネの名はなおさら印象的です。
で、同じ話を始めようとしているのです、サイボーグきみまろ先生は。気づかずに同じネタを話しちゃうのはよくある話、とくに学校の先生ならあたりまえですけどね。
ばっちり覚えてますよ、そのネタ。シエラレオネの惨状の話の後は、待ってましたとばかりに雑談に突入するんです。
故・安倍晋太郎が外相時代にアフリカ視察に行って、飢餓にあえぐ子どもたちをTVカメラの前で抱いて、撮影が終わるやいなや慌てて手を洗いに行って、そしたらまだカメラが回っていてばっちり映されてて、単なるパフォーマンスじゃないかと叩かれたんだって。そういえばサイボーグきみまろ先生も若いころに当時人気絶頂の山本リンダを見て、みんなで握手してもらって感激したんだけど、後でおしぼりでむちゃむちゃ手を拭いているのを見てショックを受けたんだって。
と、雑談のコンボで話し始めると長くなるのです。身振り手振りを交え、30分くらいは持っていかれます。シエラレオネは知っているとみんなで手を挙げて、このネタ前にやったなと気づかせて別の漫談を聞きくことにしましょう。
・・・ところが、手を挙げた人の数は、わずか15人ほど。
「ほう、さすが夜間部、けっこう多いですねえ」ときみまろ先生は言い、「では知らない人、手を挙げてください」と聞きました。10人ほどが手を挙げました。先生は満足げにシエラレオネの平均寿命「34歳」と黒板に書き、同じ話を始めました。4人に1人が5歳までに死に、2人に1人が1日1ドル以下で生きている・・・。
そして「安倍晋三の父親は安倍晋太郎という人でして」と始まり、果てしない雑談に突入していくのでした。
意外でした。もっとみんな、ちゃんと授業聞いていると思ってた。少なくとも授業中はちゃんと聞いているように見える。でもけっこう、右から左なのかもしれませんね。
そんなことだと、ほらこうやって同じ雑談を何度も聞かないといけない。30分が無駄になるのです。高い金を払っている30分が。高い金払ってるんだから、もっとみんな、集中していこうぜ。貴重な時間を使ってるんだから、効率よく学んでいこうぜ。
「ウラッラ〜ウラッラ〜」と、きみまろ先生の山本リンダのものまねを聞きながら、そんなふうに思いました。
そして放課後。金曜なのでいつものように復習をしにいこう(飲みに行こう)ということになりました。
飲みながらも、ぼくは胸に期すものがありました。そう、ぼくは学んだのです。「飲みすぎない」「飲んだら乗らない」。学んだことを実践する機会が、早くも到来です。成長を見せつけるときです。
「もう飲酒運転とかしないから、電車で帰るから」と宣言して飲みました。「終電までに帰らないといけないから、意外と忙しいねえ」と言いながら飲みました。
意外と忙しいので、ついつい急いでしまいました。
電車で帰るからいいやと思い、ついいつもより多めに飲んでしまったのかもしれません。
計画どおりに無事に電車で帰ったので、確かに学んだ、成長したと言えるでしょう。
しかしカギが、家のカギが見つからないのです。
秘密の隠し場所に予備があるので家には入れましたが、果たしてカギはどこに行ったのでしょう。なくしてはいないと思うのですが・・・。二日酔いなので探す気もおきませんが。
人生には、次から次へと勉強しないといけないことばかりです。
「芸能人でいうと誰が好き?」
というのは日常生活の、はしばしでよく聞かれる質問です。好きなアイドルやタレントとかがいる人は普通に答えられるのでしょう。でもテレビを見ないぼくにとってはそう言われるとけっこう困ってしまう質問でもあります。
なんかね、知らないうえに考えすぎてしまうんですよ。芸能人って良くも悪くも、その後ろに背負っているイメージというのがある。その芸能人に対して「好き」を表明するということは、その人が背負うイメージを自分が背負うことでもある。自分の生き方を、嗜好を、進むべき方向をコミットすることである。
というのは考えすぎなわけですが、まあぼくはそういう性格なわけで、むやみに芸能人で誰が好きなんて答えられやしないわけですよ。小学校のころに小泉今日子の「生徒諸君」の下じきを学校に持っていってからかわれて以来の性質なのかもしれません。
とはいえ「芸能人で誰が好き」というのに答えられないと、別に死にはしませんが、半年に1回くらいは確実に困る。
昔から、そう聞かれたら「YOUにしよう」「YOUにしよう」とは思っていたのです。あのキレ味。枯れない毒気。素敵じゃないですか。でもなぜか、素直にそう答えることができない自分がいました。その答えは、あまりにそれっぽすぎないか。「デビューのきっかけは?」「姉がオーディションに応募しまして」みたいな、そう答えとけば臭みはないだろ的な無難すぎる回答のような気がしました。
今日珍しくテレビを見ていて、YOUが出ていました。
「前にインタビューで『好きなマンガはドカベン』と答えていましたが、ドカベンの中で一番好きなキャラクターは?」と聞かれていました。彼女は「あたしそれ、たぶんウソついてたんだと思います」と答えました。すげえ、と思ってぼくは笑いました。
そして彼女はいくつか後の質問で、「いちばん最近ついたウソは?」と聞かれ、「ドカベンが好きだってのはウソだったって言ったことです。ドカベン大好き」と言いました。
それを聞いてぼくはもう、「好きな芸能人は?」と聞かれて乙葉か小池栄子か酒井若菜かとか悩むんじゃなくて、これからは胸を張ってYOUだと言おう、言ってみよう、ぼくももうすぐ30なんだし、そう思いました。
だとかなんだかんだ言ったところで今日の結論は、YOU、バンド出身のくせに歌むちゃくちゃ下手だなおい、そういうことなんです。

「恐るべき新人」ミカリン、黄1を楽々ゲットの瞬間。(チラリあり。)
ボルダリング一家は拡大中。160/160さんを家長として兄がタキさん、じゅんとぼくが双子の兄弟、弟に底石さん。じゅんが連れてきたミカリンは姪にあたる。海の向こうでは海上一族というのも隆盛しているらしい。生き残りをかけた全面対決の日も近い。か。
ただ、無理して対決する必要はなく、むしろ一度に課題に取り組むのは一人にしてください。
このまえ行って青4も青5も大丈夫な感じになってきたけど、その次の青6がまだちと苦しい。ぼちぼち右肩上がりは望めない安定成長期に突入。
青6くらいになると、何度か失敗するともう手力(ハンドパワー)が尽きて後は何度やってもダメ。じゅんも同様。あきらめて黄1のタイムトライアルなんかで遊び始める。
そこで今回は、いちばん傾斜のゆるいスラブ(80度)に戻り、課題ファイルを開く。テープ課題じゃない手足限定の課題にチャレンジ。
自分らがいまやってる青6って何級?8級くらい?じゃあ、ということで8〜9級クラスの課題を、みんなで次はあれだこれだと指差しながら登ってみる。と、これがおもしれー!ハンドパワーはさほど必要としなくても、バランスが、こう、大事、だあね・・・くっ・・・・登れたっ!!
青4・5・6ばかりやってると飽きてもくるしわからなくなってくるのだけれど、同レベルの別の切り口の課題をやってみると、確かに自分が成長しているのを実感できるのである。
なんでもそうだけど、そういう実感があるとすごく楽しい。寝ても醒めてもボルダリング。ゆうべはついに夢に見ちゃった。
***
いま明け方。まだまだ雨。
きのう朝起きて、慌てて洗濯ものを取り込んだけど、そのときからいやな天気だった。小さくて数の多い雨粒で、雨のわりに空はなんとなく明るくて、まるで映画のセットの雨みたい。
その後24時間降り続け、ざあざあ降りで降り続け。いいかげん在庫切れろよ雨。
もう少ししたら、雨の中を傘をさして出かけてバイトに行くのです。
仕事。なんつーか飽きた。がんばって営業していたのが今は昔。完全に燃え尽き症候群です。下手にこの前まで成績がよかったので注意もできず、社員からも持て余されています。
周りの人たちが大嫌いです。揃いもそろって馬鹿ぞろいです。敬語がヘンです。共有のファイルサーバの自分のフォルダを、「パッキャ山ただすぅぃいいい〜」と改名して喜ぶセンスが理解できません。そいつの眉毛がむかつきます。そいつの眉毛にむかついている自分にむかつきます。自分が成長せずに腐っていくのを感じます。
おもしろくてもつまらなくても、やっぱり夢に見るのは不思議。
| 店長日記 |
| おすすめ過去ログ |
| 全過去ログ |
| 「麺こて」おすすめ日記 |