ホストはつらいよ

2004/8/21

営業開始直後、まだ客がきていない時間にホスト全員が集められる。
「○○さんのお客さんで、△△ちゃんは知ってるよな。△△ちゃんといつもいっしょに来てる××ちゃんはわかるか?これから××ちゃんが○○さん指名で来店する。
けど、今日は××ちゃんの前で△△ちゃんの話は一切禁止。名前を口に出すのも禁止。(ホストの一人を指して)▲▲、お前名前が△△ちゃんと似てるから、○○さんの卓にヘルプで着くのも禁止」

うーん、夜の街にはそれぞれに複雑な事情があるようで。

***

席回りも2日目。だいぶ慣れてはきました。しかし、まだ会話に加わることは許されず。だいいち酒を作ったりテーブルの上を片付けたりするので精一杯で、しゃべる余裕などありません。
しゃべれないなりに場に首をつっこもうと相づちを打つフリ・ウケてるフリなどをしようとすればテーブル周りへの気配りがおろそかになり、それを注意されて酒を作ることに集中すると、今度はテーブルにばかり視線が集中して話は耳に入ってきません。
かつてデイブ・ムステインという人は「ギターを弾きながら歌うのは歩きながらファックするのと同じくらい難しいぜ」とか言いましたが、ホストとして気を配りつつ・酒を作りつつ・会話で客を楽しませつつ・女を口説くというのは「ギターを弾きながら歌いながら歩いてファック、しかも体位は金のしゃちほこ」くらい難しいと思います。

しかしみんなそれを事もなげにこなしている。先輩ホストの身のこなしを見ていると、席を立つという一つの動作の間にも、テーブルを拭きイスの位置を整え客に挨拶をし氷がなくなっていないか確認し・・・一瞬にして7つくらいの気配りをしている。しかもそれが、客に見せて姫扱いを感じさせる動作でありつつあざとくない、絶妙なバランスなのです。すげえ。
もちろん会話はバツグンに面白い。女の子がふと口にした腹筋の話から、なんの打ち合わせもなしにみんなで「そういや夜中の通販でこんなんあったよな」「そうそう、必ず有名スポーツ選手が出てきてこんなんして」「『無駄な力は一切使っていません』って顔面がむちゃむちゃ力入ってるっちゅーの」「『ジョニーどうだい、このアブなんとかなら仕事中も気にせず使えるよ』ってムチャクチャ気になるって!」と、会話が尽きません。
女の子は、かっこいい男に囲まれて持ち上げられて愉快な会話を聞けて、そりゃ楽しいだろうなあ。何万もする酒をホストに飲みつくされてしまうために頼んで、合計で10万とかのお会計になり、それでも満足して次にまた来るのだから、よほど楽しいのでしょう。そしてホストは彼女らをそれだけ楽しませているのです。

もちろん女の子と楽しく話をする才能だけがホストではありません。彼らはとにかく自分の容姿に気を使う。営業開始前のトイレは、さながらファッションショーの舞台裏。(見たことないけど。)ぼくなんかはけっこう「暗いしよくわからないだろうから別にいいだろう」と思ってしまうのですが、みんな10分くらいかけて髪形やエリ元などのチェックに余念がありません。見た目が自分の商品、ということなのでしょう。

またホストがキャバ嬢と違うのは、売れなければ単なる雑用係も同然、ということです。キャバクラなら雑用係として他にボーイがいたりするわけですが、売れないホストは自分で雑務をこなさなければいけません。雑用係としては使えるのでクビになることはありませんが、2年間くらい全く売れずに雑用ばかりやっている人というのもいるわけです。
売れてくれば掃除も免除になり、ホールでタバコも吸えるようになり、出勤時間がどんどん遅くなり、と待遇がよくなっていくのですが、売れなければいつまでも雑用。後から入ってきたヤツらにアゴで使われ勤務時間は長くてそれで月給15万とか。まさに「売れればこんなに楽で、売れなければこんなにキツい仕事はない」と思います。
それにキャバクラと違うのは、営業時間外にもキャッチをして自分で客をつかまえなければいけないこと。キャバクラなら時間内に店の外に立ってチラシを配ったりすることはあっても、基本的には客が向こうからやってくるはずです。ホストの場合黙っていては客は絶対にこない。キャッチをし、最初はホストという身分を隠してナンパをして女の子の心を開き、そしてころあいを見計らって「実は・・・」となるのです。ひとりの客を掴むまでの苦労たるや、いかばかりか。


さて本日の営業では、ドンペリのオーダーを1本いただきました。

かの有名なドンペリコールがあり、若手ホストは全員その卓に集合となります。
飲み方は、やっぱり高い酒でも薄めてみんなで一気に飲んじゃう。懐かしのピーチネクターで割ります。それをみんな(20人くらい)で手に持って、「今日は○○ちゃんの」「イェイ、イェイ」「24回目の」「イェイ、イェイ」「ステキなステキな」「イェイ、イェイ」「ぁ誕生日」「イェイ、イェイ」「これからの○○ちゃんの」「イェイ、イェイ」「ぁ人生が」「イェイ、イェイ」「もっとステキに」「イェイ、イェイ」「なりますように」「イェイ、イェイ

とか延々とコールをして、それで最後にみんなで「イェイ、イェイ、イェーイ」と飲み干しちゃうわけです。で、「ごっつぁん、ごっつぁん、ごっつぁんごっつぁんごっつぁーん」と何事もなかったかのように帰って行く。やっぱり人の酒を勝手にみんなで飲んじゃうシステムなのでした。これでウン万?イェイ。

ホストの休日

2004/8/23

久しぶりに少しだけゆっくり寝て、夢を見ました。
テーブルで山のような洗い物を洗いながら酒を作っている(その後ろではドンペリコール)という、このうえなくベタな夢。
「新しい環境に慣れるとその夢を見る」と言いますが、もう慣れたのか。いや、短い間にとてつもなく強烈に印象に残っただけでしょう。

目が覚めて思う。これもあれもぜんぶ夢ならいいのに・・・。夢かも!?
いや、夢じゃない。他人のサイトのネタならおもしろくていいんだけどなあ、やっぱり自分のサイトの企画だなあ・・・・。



さてきのうは日曜日、ホストクラブで働き始めて最初のお休みだったのです。
ホストクラブはどこも日曜がお休みのようです。サービス業で日曜休みというのは珍しい、まるでオフィス街の店みたいですね。考えてみればホストクラブが営業している夜の街も、ある意味オフィス街ということですな。
久しぶりの休みで、たまった日記を書いたり部屋を片付けたり本を読んだりしておりました。アンテナのつながっていないテレビで女子マラソンを見て、人並みに感動したりしておりました。

しかしここでいう「日曜日」というのは、日付的には月曜日の未明の営業時間のこと。たとえば「土曜日」の営業を終えて家に帰ってくるのは日曜日の昼前ですから、ホストと世間様の間にはだいたい15時間くらいの時差があるのです。日付変更線です。「明日は月曜だから燃えるゴミを出そう」なんて思ってよく考えてみると、それはとっくに終わっているのです。
時間の感覚めちゃくちゃです。ぼくはまだ日曜気分でこの日記を書いていますが、それはみなさんにとって月曜の夜です。
そもそも「夜に仕事に出て昼に寝る」というサイクルに体が慣れていないのか、それとも慣れない仕事に緊張しているのか、休みだから好きなだけ寝ていいのにちっとも眠くありません。眠いんだけどすぐに目が覚めちゃう。そうしていつ寝ていいのかわからないうちに一日が過ぎていき、なんだか今が何曜日なのか、午前なのか午後なのか本気でわからなくなってきました。
一日休んでみると、短い間にすっかり時間の感覚が狂っていることに気づきます。


さてホストのみなさんはどのように「日曜日」を過ごしていらっしゃるのか。「土曜日」の営業終了後に、周りの人にちょっと聞いてみました。あしたは何をするんですか?

「ん?日曜?キャッチだよ
キャッチだね。西川口に出張」
キャッチ。休みでもだいたい毎日ここにいるよ

キャッチっすか・・・。ぼくはまだ研修なのでキャッチは許されていないのですが、やっぱり個人事業主たるもの休日もなく顧客獲得にいそしむもののようです。

かと思うと
「○○ちゃんとメシ食いに行く約束しちまった・・・休みてーのになー。たまにはエサやっとかねーとな。あ、このこと絶対他の客に言うんじゃねーぞ」

やっぱり時間外労働なのでした。

かと思うと
「まだマシだよ、俺なんか12時に××ちゃんとメシ食いに行く約束してんのに△△ちゃんとも2時に約束してんだぜ。食えるかっ。つーかうまいこと××ちゃんをまいて逃げれんのかっつー話」

か、過酷だぁ・・・。

集う人々、流れゆく金

2004/8/24

客に対しまだ自分から口を開くことは許されていないのですが、先輩について席回りをするうちにだんだん酒を作る・テーブルを片付けるなどの基本動作にも慣れてきて余裕が出てきました。客に「歳いくつ?」と振られたので「左から見ると24、正面だと25、右からだと26に見られるんですけど、いくつに見えます?」と切り返してみました。
が、ウケなかったのでイッキさせられました。ぐぐぐい、ぐぐぐい、ぐぐぐいぐい、と。


さて余裕が出てきて回りを見回すと、お客も本当にいろんな人がいます。

基本的に客は水商売か風俗の若い女の子です。ありがたいことに非常に巨乳率が高いです。どこかのオヤジがその乳につぎこんだ金が、こうしてうちの店に流れてきているという、夜のマネーロンダリング。ぼくのところにも少しでも流れてくればよいのですが。
客が水商売か風俗の人だと、自分の店と同じに歳も名前も偽っていることが多いので、もてなす側ももてなされる側もウソで塗り固めた複雑な関係になります。年齢についての話題になって、「52年生まれ?へー、じゃあワタシのいっこ下なんだ・・・いや、いっこ上ね!ワタシいっこ上をいっこ下っていうクセがついちゃってるの!!」など、虚々実々の会話が繰り広げられます。

客は女の子ばかりでなく、きのうは早い時間に女を連れた男の人がきました。どうやら男は別の店のホストで、出勤前の「同伴」がうちの店となった模様。そういう場合はとうぜん男を担当ホストのように丁重に扱い、うちの店のほかのホスト達はすべてヘルプ、というような位置づけになります。それなら自分の店でやればいいのに、と思うのですが、そうすると同伴出勤の手当てがつかないので、ときどきそういうことがあるのだといいます。

かと思うと男だけでなく、というか男でも女でもなく、明らかにオカマの2人組がいました。こういう場合は女の子として扱っていいものなのでしょうか?
ぼくはその席にはつかなかったので様子はよくわからなかったのですが、ホストたちはどうやら他の女の客と同じようにもてなしている模様。途中でちらっとその席を見たら、若手ホストが一人のオカマとラブラブモードになってトークしていました。男だよ、アンタ。・・・いや、男なのかなあ?


あときのうは、おそらくぼくの初日に来た客が、また来ていました。見た目は普通の若い女の子なんですけどね。週に2回もこんな時間にこんなところに来てしまう、彼女の頭の中と財布の中はどうなっているのでしょうか。
なんたって席に着くだけで1万3000円、ジンロのボトル1本で1万円という世界ですからね。

それでだいたいみんな3時間4時間と長居をしていく。ボトルはその間にホストたちによってごっつぁんごっつぁんと飲み干されておかわりされていく。キャッシャーは席から離れているので会計の様子はわからないのですが、トータルではいくらくらいになっているのでしょうか。

と思ったら、ぼくの教育係のタトゥーさんが上機嫌でニコニコしながら酔っぱらって教えてくれました。
「今帰ってった客な、15万。この前きたときに、きょうが俺の誕生日だって言ったらまた来てくれて。ドンペリ入れてくれた」
タトゥーさんは本当にうれしそうです。一部の売れっ子ホストになると誕生日が店全体をあげたイベントになって、ほっといても客がやってきて売上がガンガン上がるものらしいのですが、彼はまだ駆け出しなので、誕生日でもイベントにはなりません。でもお客さんはちゃんと来てくれて、しかも一晩でたくさん使ってくれて。
月の売上の10万円というのは大きな分かれ目になっていて、それ以上なら翌月は「キャスト」として(やや)丁重な扱いを受けるものの、それ以下なら「新人」としてまた過酷な下働きの日々なのです。タトゥーさんは今月まだ売上がなく焦っていたらしいのですが、この月末になって一発逆転の15万ゲットです。

何かを売って金を稼いだ人々がホストクラブに集い、一夜にして大金を使う。そしてその金を得た人が自らの地位を築きのしあがっていく・・・夜の街の成り立ちの、ほんの一端を垣間見た気がいたしました。

ESCAPE!

2004/8/26

24日の営業(日本時間の25日未明)はけっこうヒマでした。

ガラガラの客席に座らされ、ぼくはホスト道のさらなる奥義を伝授されることになりました。

「よーし今日で1週間、研修もひととおり終わりだ。これからは一人で、自由にいろんな席を回ってもらうことになる。客とも話すことになるから、この業界の基本用語と、あと『爆弾』についてもう少し詳しく説明する」

と、ぶ厚いマニュアルを開きながらタトゥーさん。

「まず業界の基本用語。・・・・色恋

い、色恋からですか。知ってますよ。擬似恋愛で客をおびき寄せることでしょ・・・。

「次に・・・

ま、枕ですか次は。知ってますよ。擬似恋愛で客を(文字通り)ハメることでしょ・・・・。

本とかネットで読んで意味は知っていましたが、この二つが基本用語の最初の二つに出てくるとは。ちょっと引きました。
面接のとき、うちの店ではそういうのはないって言ってたんですけど・・・。

「まあ、店が積極的に勧めるわけじゃないけど、これやってかなきゃ食っていけないからな」

勧めるわけじゃないと言いながらマニュアルの最初に書いてある、ううむ。


「あと『爆弾』な。前にもちょっと話したけど絶対にやっちゃいけないこと。これをやると罰金100万円で丸坊主、しかもこの業界から永久追放」

爆弾については別にページがあり、非常に詳しく説明されている。要は客を不快にさせずホスト間のトラブルを避けるための、べからず集。いわば夜のコンプライアンスマニュアル。

これも、基本は予習済みでした。例えば、客の容姿・年齢・性別・職業については絶対に話題にしてはいけない。客が自分からその話題を振ってくる場合は別だが、そうでない限りはこっちから「歳いくつ?」とか聞いてはいけない。
うう、難しい。普通の合コンならまず年齢とか仕事の話題からですよね。間違っても性別の話題にはならないでしょうけど。

あとこれも基本中の基本なのだが、「指名がある客を口説かない」。つまり、他のホストの客を取ってはいけない。ポーズとしての口説きだけでなく、電話番号やアドレスを聞いたり教えたりするのもダメ。もちろん本気で恋に落ちてもいけない。
ホストクラブは普通「永久指名」といって、客は一度ホストを指名すると次回以降は指名を変えてはいけない。男が客となる風俗や水商売にはないおかしなシステムだが、客を巡るホスト同士のトラブルを避けるためのルールなんだそうな。

「他の担当の客とこっそり付き合っても、結局バレるから。前にうちの店じゃないけど、他人の客を取って裏でつきあってたヤツがいたらしくて。うまくいってる間はいいよ、でも別れた後、女は絶対に前のホストの所に戻ってきて、全部しゃべるから。そいつがその後どうなったかは・・知らねえな・・・(遠い目)」

ひぇ〜。

さらに、「悪口を言ってはいけない、プライベートをばらしてはいけない、店の秘密をばらしてはいけない」。
客に対し、他の客やスタッフの悪口を言ってはいけない。スタッフの悪口を言えば店のギスギスした感じが伝わってしまうし、他の席の悪口を言えば客は「自分も後で悪口を言われるんじゃないか」と思ってしまう。
またホストは客にウソをつきまくっているので、他のホストのプライベートの話をするとそのウソがばれ客を失うきっかけになりかねない。例えば「きのう一緒に飲んだ」というようなことでも。ホストは女の子に「体調が悪くて」と言ってきのうの約束を断っているかもしれないのだ。
一緒に飲んだと言っちゃいけない、というわけでもない。もしかしたらホストは「仲間と飲む」というのを言い訳に約束を断っているかもしれない。その場合「飲みにいったの?」と聞かれて「行ってない」と答えると、ウソがばれる。そういう話題については「はい」と言っても「いいえ」と言ってもいけない。他のホストのプライベートに関わることは、年齢から居住地から、なにからなにまで口にしてはいけないのだ。
ううん、難しい。

ここでふと浮かぶ、素朴な疑問。
ぼくがこのサイトで店の内情とかを書くと、それって爆弾?

と、口に出して言ったわけではないのですが、タトゥーさんはまた遠い目をして言いました。

「これもうちの店じゃないけど、前に2ちゃんねるに客とかスタッフの悪口とかプライベートの情報とかガンガン書いてるヤツがいて・・・そいつはヤクザに腕を折られたらしいな・・・・」

ひ、ひぇ〜。
ぼくの背中を、冷たい風が通り過ぎました。警報!警報!


次に、スタッフルームの現場監督さんのところに呼ばれました。

「これで研修が終わるから、明日から正式に社員として契約することになる。明日ハンコ持ってこい。明日から、新人はキャッチがあるから10時半集合な。で、木曜はミーティングだから10時集合

パードゥン?毎日12時集合じゃなかったの?

「明日からよろしく!ハンコ持ってこいよ!」

ぼくは、迷わず言いました。

自分には、できません

だって、10月から調理師の学校が始まるのに、毎日10時半集合なんて・・・学校通えない!

ホスト潜入マニフェスト第5条「ヤバいと思ったらすぐ逃げる」、発動!!


現場監督さんはあっさりと言いました。

「あっそ。じゃあいいや。今日までの分は研修期間だから給料出ないけど」

別にいいです、と言ってぼくは席を立ち、そのまま荷物を取って営業中の店を出ました。現場監督さんも誰も、止めはしませんでした。
なんともあっけない幕切れ。ヤバくなったらすぐ逃げる。そして去るものは追わず。それが夜の街のルールである。


外に出ると時間は4時半。始発まであと30分か・・・まんが喫茶で時間をつぶそうにも、ちっと時間が中途半端。
いいや、歩いて帰ろう。

面接で来たときと同じく、夜の街は宴の最中。しかしほんの1週間のうちに、外の空気はだいぶ涼しくなっていました。


歩きながら考えた。

これで、よかったんだよな。自分にはやっぱりできない。

学生時代に居酒屋でバイトしたことがあり、酔っぱらった人間の醜態はいろいろと見た。酔いつぶれてウンコをもらしちゃった男や、王様ゲームで命じられるがままに乳首にケチャップを塗って隣の席の男に舐めさせている女がいた。もちろんぼく自身も、酔っぱらってさかんに醜態をさらすクチだ。
でも、ホストクラブには、酔っぱらったうえでのそういった醜態の上に、金とか欲とかウソとか、世の中のあらゆる汚いものがないまぜになった「醜さ」そのものが塗り固められていた。ぼくの見たことがあった醜態より、何倍も濃縮された、まじりっけなしの醜さだ。醜さの中の醜さ、決めようや。その答えの一つは、ホストクラブにあった。

こんなことを思い出した。大学1年のころかな?当時「友だち以上恋人未満」的なポジションの女の子がいて、あるときその子と二人で飲んでちょっといい感じになり、首尾よくラブホテルにしけこんだことがあった。
ちょうど、いまぼくが歩いている夜の街の、すぐそこのホテルだ。
酒も入ってベッドの上でいちゃいちゃして、さあ!というときに、ふとその子が「その前に、私の目を見て言うことを、何か忘れてない?」と言った。
そう言われても、ぼくは何も言えなかった。そして結局なにもせずに寝て、起きて、帰ってきて、その子とはそれっきりになった。
「愛がなくちゃSEXできない」なんて青くさいことは言わないが、酔っていても飢えていても、「愛がないと『好き』とは言えない」というのは、ぼくの中の最低限の、欲望と誠意の、線引きだったんだ。
あのころと、何も変わっちゃいない。金のために「好きだ」とウソをつくことはできない。金のためにウソをついてまで、あんなきつい仕事をすることはできない。

これで、よかったんだよな。自分にはやっぱりできない。
40分ほど歩いていたら電車がきたから、電車に乗って家に帰って寝た。


***


というわけで、「突撃!潜入ホスト編」は唐突に終焉を迎えました。
やろうとしていたことがなんであれ、何事も途中で挫折するというのは気分をブルーにさせるもので。
「あ〜何をやっても長続きしね〜な」「けっきょく無収入だったし今月大赤字、貯金なくなってきたな」「明日から何やろう」「なんだか、会社辞めてもやろうと思ったこと一つも実現できてないな」「このサイトも、名前は『マワリミチ』だな」「いや『クダリザカ』だな」と、どんどん鬱になっていったのでした。

しかし長年の(?)鬱経験から、沈むときは沈みに沈んで、あとはなにもせずに眠る眠る、というのが一番いいとわかっていたので、きのうは一日寝ていました。
一日寝ていたというのは言葉のアヤでもなんでもなくて、本当に一日寝ていた。
もちろん起きてトイレに行ったりパソコンをつけたり、腹が減るのでうどんをゆでて食ったりはした。しかし用が終わるとまた眠る。実に36時間も、断続的に眠り続けました。
考えてみるとこの一週間、神経が高ぶっていたのか、休みの日でも少ししか眠ることができなかった。

というわけで久しぶりにたっぷり寝て、久しぶりに起きて、日記を書いた。
いま振り返っても、まるで夢だったみたい、だ。この一週間。
実に勉強になった。刺激的で、楽しかった。でも自分にはできません。あそこでやっていけている人は、お世辞抜きで本当にすごいと思いました。汚くても醜くても、あそこで生きられるのは強さです。ぼくには、その強さはありません。
あと「爆弾」にあたるような暴露話や悪口を始める前で、本当によかった。店や個人が特定できる情報を盛り込んでおかないでよかった。生きて帰れてよかった。


なんだか腰くだけに終わっちゃいましたが、みなさん、少しは楽しんでいただけましたか?
さて、明日から何をしようかね。


■店長試練の7番勝負・ラウンド2「突撃!潜入ホスト」

× 店長 (2分26秒 パワーボムを切り返してのウラカン・ラナ) ホストクラブ ○

(試合後のコメント)
店長 「日本人相手だと、顔は殴れない」

めざせ真人間

2004/8/27

さあて次は何をしたものか。ホストを上回るようなインパクト・・・なかなか難しいなあ。
探偵でもやろうか。うーん弱い。じゃあAV男優とか。それかいっそのこと、銀行強盗をしてみるとか!成功すれば一発あがり、失敗しても「牢屋でやせるダイエット」とかの本が書けるぞ!(やりません。)

と悩んでいてもしょうがないので、何かの指針になるかしらと占いに行ってみました。
すごくよく当たる占い師がいると友だちから聞いたのはけっこう前のこと。それがなんと家から徒歩3分くらいのところで占いをやっており、値段もわりとお手ごろ(15分3000円)。そこでそのときは具体的な案件もなく気軽に予約していたのですが、大人気につき予約がとれたのは1ヶ月先。その予約がちょうど今日だったのです。
次に何をやろうか困っているときに予約が回ってくる、これはなかなかに運命的だわいと思いながら出かけました。ぼくは信じないわりに占いの類は大好きで、こんなステキな体験をしに行っちゃったこともあるくらいなのです。

「よく当たる」と紹介された占い師は、ネットで調べたらけっこう有名な人。どんな魔法使いかと思いながらその場所に行ってみると、そこは普通のマンションの一室。出てきた占い師も拍子抜けするくらいの普通の、きれいなおばさんでした。
まず生年月日・氏名などを渡された用紙に記入すると、ぶ厚い辞書のようなものを開いてちょっと調べて、なにやら紙にメモする占い師。
「今日はどんなご相談ですか?」と言われたので、素直に「お店をやりたくて会社を辞めたんですが、その後どうも思ったようにいかなくて、これからどうしたものかと」と答えました。
「手相を見せてください」と占い師。しばらくぼくの両手を眺めて、彼女は言いました。

「とてもいい運勢の持ち主ですね・・・周りの人の協力も得られるし、才能もあるし、行動力もあるし・・・人に使われるタイプじゃなくて、自分で何かやって成功する星の生まれなのよ」
むふ、なんかうれしいコメントですね。当たってる風です。まあ「お店をやりたくて会社を辞めた」なんて言ってくる人には、誰に対してもそう言っとけば間違いない気もしますけど。
以下、ぼくがいかなる強運と才能の持ち主か、女にもてる相かについての説明がしばらく。おもしろくないでしょうから省略。

「ただね・・・」とそこで占い師の顔が曇ります。「今はせっかくのそのエネルギーが・・・散っちゃってるのよね・・・・」
「引きが早すぎるというか・・・あなたやりかけたことをすぐ途中でやめちゃうところがあるのよ。よくも悪くも暴れん坊」「お店も、成功するんだけど、今じゃないのよ。今はフリーターなんかやってちゃいけないの。もっと腰を落ち着けて一つのことに集中してないと」

アイタタタタ耳が痛いです。これもまあ「どうも思ったようにいかなくて、これからどうしたものかと」とか言ってくる人に対しては誰にでも当てはまりそうなコメントですが。

そこでぼくは、10月から学校に通い勉強し、並行して(今度はまじめに)バイトをして資金を貯めようかと思っているということを述べました。

「でも・・・」と、さらに占い師の顔が曇ります。しばし沈黙。
なに?1分200円なんだから早くしゃべれ!気になる!!

「・・あなた・・・生命力がものすごく下がってるのよ。まだ若いから気づかないかもしれないけど、この先きっと体がキツくなる。事故に遭うかもしれない」
ひええ!
「わたしも何百人もの人を見てるけど、あなたくらい生命力が低くなってる人も珍しい。まだ若いから正直に言うけど、もうちょっと歳をとってる人だったら怖くて言えません」
あっちゃー。夜に学校があるから、昼に働いて、あと土日とかは別のバイトでもしようかと思ってたんですが・・・無理ですかね?
「ダメダメ!絶対に耐えられません。体がキツいから集中できなくなって、集中できないから楽しくなくなって体がキツくなって、それでまたすぐにやめちゃうという悪循環です」

まるで5ヶ月間このサイトを見てきた人のような、的確なアドバイスでした。

そして、学校に行くのはもう決めたことだしよいことだけれど、バイトは無理しないようにときつく言われました。できればふらふらフリーターじゃなくて、学校との両立に理解のあるところにきちんと腰を据えて。

「そうしないと・・・」最後に占い師は真顔で言いました。「死神きちゃうよ


占いで「死神がくる」と言われたことがある人はいますか?
なかなかにレアな体験をしました。

そう言われたから、というわけでもないのですが、2バイト編で張り切りすぎて心と体のバランスを崩し、ホスト編で濡れ手に粟の過酷さを味わいましたので、それらをふまえて次は「腰を据えて」マジメにやろうと思います。体に気をつけつつ。

というわけで本日よりスタートの新章は、「めざせ真人間編」に決定!早く人間になりた〜い!!

つかめ真人間

2004/8/29

真人間への第一歩、それはもちろんきちんとした職につくこと。もちろん占いの結果もふまえて、学校と両立できる仕事を体に無理なくね!

そこでフロムエーを買ってパラパラとめくり、ひと目で「これだ」と選んで面接を受けて、速攻で決めてまいりました。
その新しいお仕事は、某大手事務受託会社の契約社員で、みんな知ってる某大手通信会社のコールセンターで法人営業をやります。
時給がなんと1500円!勤務地となる某大手通信会社は、家からも近く通勤は楽チン。さらに10月から通う調理師学校からもほど近く、勤務時間は8:50〜17:35で18:30からの授業にもバッチリ間に合います。もちろん土日祝はお休み。
なによりも仕事内容が「電話での法人営業」。ワタクシはサラリーマン時代に法人営業をやっていたのです。売るものこそ違えど手法はいっしょ。当時も架電による営業はかなりやりました。

待遇的にも条件的にもキャリア的にもパーフェクトな職場。時給の高さに惹かれて、面接を兼ねた説明会にはけっこうな数の人が集まっておりましたが、ぼくは「ここで働く」と決めていたので当然採用されました。
それどころか、採用を伝える電話で担当者に「店長さんには、ぜひSV(スーパーバイザー、オペレーターの元締め)をやってほしいんですよ」と口説かれる始末。「学校があるんで、残業ないならいいですけど」と言っておきました。

コールセンターはストレスがたまるというイメージがあり、時給が高いのもそれ相応なんだろうけど、今度の仕事はサポセンと違って受電はないしクレーム対応はないし、こっちから営業の電話をするだけなので気楽っちゃあ気楽です。1日座ってるだけなので体も楽。もう死神は寄せ付けません!

勤務は週明け火曜から。初日の持ち物は筆記用具のほか、ハンコと年金手帳・雇用保険受給者資格証・健康保険証。これまでの職場が「長靴」とか「源氏名」とかだったのと比べると、持ち物からして格段に真人間です。
契約社員バンザイ、社会保険完備バンザイ!めざせ真人間!

はしれ真人間

2004/8/30

明日から仕事に行くわけですが、ここ5ヶ月のあいだというもの乗る電車は始発とか終電とかばっかりだったので、久しぶりの朝の通勤ラッシュというやつに耐えられるかどうか非常に心配です。
それに10月から学校が始まると、毎日が家→会社→学校→家という移動となり、それぞれは近いもののいちいち動き回るのはなんかめんどう。
そこで、原付を買って縦横無尽に駆け巡ることにしました!

きのうのうちに家の近くの中古バイク屋を見て回りました。そこでキュートな緑のカブに一目ぼれ!72000円と値段もまあお手ごろ、走行距離は18000キロとけっこういってるものの状態はよさそうだし、カブならまだまだ大丈夫でしょう。久しぶりに大きな買物で、ドキドキの即決です。
そしてきょう役所に行ってナンバープレートを取り、ドンキで2000円のヘルメットを買って、ワクワクしながら電車に乗って愛車を引き取りにいきました。なんかこう、ヘルメット(頭)とナンバー(おしり)を持ってバイクを取りにいくというのは、真ん中の大事な要素を埋めに行くようでステキな旅です。きのうもらったカブの取扱説明書を見てイメージトレーニングしながら、ニヤニヤと電車で向かいました。

そして愛車とご対面!1日のうちにカブはさらに磨きがかけられメンテナンスされ、まるで新品のようにピカピカと輝いていたのでした。深い緑色のボディーにインスパイアされ、愛車は「にがうり号」と命名。ゴーヤの「GO!」とかけています。まあいいや。
バイク屋に整備などの注意事項を聞いて(<私的メモ>現在の走行距離は17951キロ、3000キロでオイル交換、5000キロでプラグ交換</私的メモ>)、簡単に運転のしかたを習って、いよいよ出発です!

おおっ。がっくんがっくん。マニュアル車は運転が難しいですね。でもおもしろい!
原付は過去にもふつうのスクーターとべスパに乗っていたことがあったのですが、やっぱりマニュアルのほうがおもしろいです。カブはべスパと違って足でシフトチェンジをするのでまだ慣れませんが、べスパほど理不尽な動きをするわけので運転しやすいし、足でカチャカチャやるのはいかにも二輪っぽくてカコイイのです。

運転に慣れるために、わざわざ家から職場まで走って時間を計ってみました。すると、たったの15分!すばらしい。
軽すぎるほどのフットワークが売りのワタクシに、またひとつ強力な武器が加わりました!

What time is it now?

2004/8/31

さあ今日から仕事なのである。サラリーマンをやめ、魚屋で働いてみたり、ホストをやってみたり、何もしないでいてみたりしたけれど、今日からはひさびさの「前にやっていたような」仕事なのである。
とはいっても今日は契約社員としての手続きだったり、コンプライアンスの研修だったり、「ビジネスマナー」とか「PC基礎操作」とかのイニシャルトレーニングで、これからやる業務には足をつっこみもしなかったんですけどね。

でも久しぶりに着る(昼モードの)スーツは、やっぱり着心地がよかったです。ホストのときも思ったけれど、ぼくはスーツが大好き。会社での仕事は大嫌いだったけど、自分の体に合うスーツを着たりぴしっとアイロンをかけたシャツのボタンをしめたりシャツの色に合ったネクタイを選んだりするのは、そもそも大好きだったのだ。

時計もしましたよ。スーツ姿で、時間を見るのに携帯を取り出してばっかりいては様になりませんからね。
時計は相変わらず10日10時19分2秒で止まっていたので、きのうのうちにねじを巻いて動かしておきました。
早起きをしてスーツを着て時計をして、まるで普通の人みたいに普通の時間に家を出るのは、なんだか気張って7月のうちから夏休みの宿題に手をつけているみたいで、少し気恥ずかしいのです。
けどそれも今日は、いやな感じじゃなかったな。本当に久しぶり。時計が止まっていた「10日」というのは、考えてみれば4月の10日なのです。5ヶ月近くも時計は止まっていたのです。

でも、今また時計は動いている。

いま何時?
31日、22時49分35秒!

そう、また時計は動いているのです。

ホームテキスト全過去ログ>2004年8月B

  
ワカレミチ ホーム

ホーム コンセプト テキスト 自己紹介 掲示板
テキスト
店長日記
おすすめ過去ログ
全過去ログ
「麺こて」おすすめ日記